2006/10/25 ハリー・ポッターのマント、それともスタートレック遮蔽装置
不可視な遮蔽、言い換えると物質の透明化が原理から一歩踏みだした。ハリー・ポッターの透明マントやスタートレックの不可視な遮蔽装置(cloaking
device)のメカニズム仮説は、すでにイギリスの研究者が発表していた。その原理とは、光波(あるいは電磁放射)を物体の周囲に導き、あたかもその物体によって散乱していないように進ませることである。
アメリカ・デューク大などの研究グループが、特殊な微細構造の金属素材で物体を囲うことにより、物体に当てた電磁波を反射させずに裏側へ迂回(うかい)させる実験に成功した。
この研究は、電磁放射線から物体を隠す原理を立証する初の遮蔽装置で、磁放射線が排除、回避され、あたかも存在していないような空間を作り出した。しかしまだ、不完全で二次元レベルの実験に過ぎないが、それでも後方散乱(反射)および前方散乱(影)双方を減少させることができる(ビデオ参照)。
デューク大学のプレスリルースプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://dukenews.duke.edu/2006/10/cloakdemo.html
ビデオ:研究チームによる説明と装置、透明化の実験経過などを下記のサイトで見ることが出来る(ビデオを見るためにはReal
Playerが必要)。
http://realmedia.oit.duke.edu/ramgen/news/invisibility.rm
リアル・プレーヤー(Real Player)がない場合は下記のYoutubeでも見ることが出来る(ただし、画質が悪い)。
http://www.youtube.com/watch?v=Ja_fuZyHDuk
【原著】
Schurig, D. et al.: Metamaterial Electromagnetic Cloak at Microwave Frequencies. Science. Online Oct. 19, (2006) [doi: 10.1126/science.1133628] (Science Express Reports)
2006/10/22 チャールズ・ダーウィンの資料電子化・公開
進化論で知られるイギリス科学者チャールズ・ダーウィン(Charles Darwin )の文献や資料などを電子化し、ネットで公開された。「ビーグル号航海記」や「種の起源」を読むことができる。
2009年は、ダーウィンの生誕200年と、進化論のきっかけとなった「種の起源」の出版150周年にあたる。そこで、この年までに2年をかけ、ほぼすべての資料を電子化して公開する予定とのことである。
ダーウィンの文献・資料を公開しているサイトは下記である。
http://www.darwin-online.org.uk/
2006/10/16 最小ゲノムを持つ共生細菌の発見
生物が生きるために最低限必要なゲノムはいったいどのくらいなのか?
理研中央研究所などの研究グループは、半翅目昆虫「キジラミ」に共生する細菌「カルソネラ」のゲノムがたった16万塩基対であることを発見した。これは、これまで知られている生物界のゲノムのなかで最小である。
カルソネラは、キジラミの特殊な細胞(菌細胞)の細胞質内で生きており、この細胞の外では生存していけない。そのため、現在のカルソネラは2億年前に菌細胞内に侵入し、キジラミの親から子へと垂直感染することだけで生き続け、受け継がれてきたと考えられている。
発見したゲノムは、単に遺伝子の数が少ないだけではなく、遺伝子の長さが短く、さらに遺伝子同士がオーバーラップしているという、これまでに知られていなかった極限まで切り詰められた特殊な構造をしていた。ゲノムからは生命活動を維持するのに必須と思われる遺伝子の多くが失われているが、失った分を昆虫の遺伝子や代謝産物に依存していると考えられる。
今回の発見によって、かつては共生細胞だったと考えられているミトコンドリアや葉緑体はどのように細胞小器官になったのかについての疑問の回答にもなると期待されている。
【文献】
Nakabachi, A. et al.: The 160-Kilobase Genome of the Bacterial Endosymbiont Carsonella. Science 314: 267. (2006) [doi: 10.1126/science.1134196]
2006/10/15 南アメリカ・コロンビアで新種の鳥を発見
南アメリカ・コロンビアの密林地帯で、頭のてっぺんがオレンジ色、目の回りは黒色で、のど元から腹部にかけて黄色というカラフルな新種の鳥が見つかった。ヤブシトド(Brush-Finch)の仲間で、手のひらににすっぽり収まる大きさの鳥で、コロンビア北東部のサンタンデル州の密林地帯で見つかった。名前は、かつてこの地域で暮らしていた先住民族の名をとり、ヤリギエスヤブシトド(Yariguies Brush-finch)と名付けられた。
【文献】
Donegan, T. M. & Huertas, B.: A new brush-finch in the Atlapetes latinuchus complex from the Yariguies Mountains and adjacent Eastern Andes of Colombia. Bulletin of the British Ornithologists' Club 126: 94-116. (2006)
http://www.proaves.org/IMG/pdf/Donegan_Huertas_Atlapetes_latinuchus_yariguierum.pdf
2006/10/13 国際稲研究所が研究目標を転換:貧困の解消を目指す
国際稲研究所(IRRI:本部フィリピン)は、かんがい地帯での稲作改善を目標としてきた方針を見直し、かんがい設備にない地域での稲作改善を重点目標とする「希望を呼び込み、豊かな暮らしを」と題した戦略計画(2007~2015年)を発表した。こうした地域は貧困が深刻なため、干ばつや水害、塩害に耐える品種の育成により生産安定を図り、貧困の解消を目指す。
国際稲研究所の新しい研究戦略は下記のサイトで読める。
http://www.irri.org/BringingHope/ImprovingLives.pdf?id=138
2006/10/05 簡単に渋皮むけるクリ品種「ぽろたん」の育成
渋皮がぽろっとむける新品種「ぽろたん」が農研機構果樹研究所で育成された。甘栗のように渋皮がむきやすいニホングリの新品種の育成は画期的な成果である。クリの実を加熱したあと、渋皮がポロンと簡単にむけることから、「ぽろたん」と名付けられた。
ただし、これからな苗木として販売され、実がなるまでに時間がかかるので、くりご飯や菓子の具など秋の味覚を手軽に楽しめるヨウになるまでは、早くて7,8年後となる。
渋皮が簡単にむける画期的なニホングリ新品種「ぽろたん」のプレスリリースは下記にある。
http://www.fruit.affrc.go.jp/announcements/kisya/h18-10-04/porotan.pdf
2006/10/04 ノーベル物理学賞:ビックバン理論の証明に
今年度のノーベル物理学賞は、アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのジョン・マザー博士(John C. Mather: 60)とカリフォルニア大のジョージ・スムート教授(George F. Smoot: 61)が受賞した。
受賞理由は「宇宙背景放射の不均一性の発見("for their discovery of the blackbody form and anisotropy of the cosmic microwave background radiation")」である。1989年に打ち上げられた観測衛星COBE(コービー)で、宇宙全体から届くマイクロ波(宇宙背景放射)を観測し、宇宙が爆発的に膨張して生まれたとするビッグバン理論を観測で裏付けたことと、放射が全天から均一に来るのではなく、10万分の1レベルの温度の違い(ゆらぎ)があることを発見した。
ノーベル財団のサイトは下記にある。
http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2006/
2006/10/03 「RNA干渉」の発見にノーベル医学生理学賞
スウェーデンのカロリンスカ研究所は、2006年のノーベル医学生理学賞をアンドルー・ファイアー(Andrew
Z. Fire)・スタンフォード大医学部教授(47)と、クレイグ・メロー(Craig C.
Mello)・マサチューセッツ大教授(45)の2氏に授与すると発表した。
生物の遺伝情報を伝える役のRNA(リボ核酸)が対になった「二重鎖RNA」で、遺伝子の発現が阻害される「RNA干渉」という現象を線虫で発見し、1998年に発表した。この現象は人間にも共通しており、二重鎖RNAを人工的に作ることで新薬開発などに道を開いたことが評価された。
当初、この研究は特殊な現象と考えられ、生体内では働かないと思われ、マユツバな研究とされた。ところが、最近では、網膜の加齢黄斑変性症やC型肝炎、エイズ、ガン、ホルモン異常などの治療薬の研究へと発展している。
今回のノーベル賞受賞対象の研究も当初の評価は低かった。このことは、研究を1年単位で評価することが誤りであることを示している。
ノーベル財団のプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/2006/
2006/10/01 火星探査車オポチュニティーはまだ元気に活躍
火星の地表を調査しているアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査車オポチュニティー(Opportunity)が、9月27日から28日にかけてビクトリア・クレーターの端に到着した。火星に着陸(2004年1月)してから火星時間で952日(約31ヶ月)かけて移動した。このクレーターは幅800m、深さ70mで、砂丘で覆われているが一部、岩石が露出しており、ででこぼこしている壁が見える。
ビクトリア・クレーターの写真は下記のサイトで見られる。
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA08783
「地質学者の夢が実現するかも知れない。壁にある地層を調べられるなら、火星の環境に関する新しい発見があるのではないか」と、コーネル大学のSteve Squyres 博士は述べている。
同時期に着陸したスピリット(Spirit)は、火星の砂とほこりに苦戦しているようである。2006年4月4日の様子が下記のサイトで読める。
http://www.nasa.gov/mission_pages/mer/mer-20060404.html
探査機の寿命3カ月と考えられていたが、2年半以上も探査を続けている。当初、太陽電池パネルに砂ぼこりが積もって動かなくなると見られていたが、強風で砂ぼこりが払われるなどして寿命が延びているらしいとのことである。
2006/09/17 ネアンデルタール人と現生人は長く共存
約3万年前までに地上から姿を消したと考えられていたネアンデルタール人が2万8000~2万4000年前まで生存していたことを示す証拠がイベリア半島で発見された(文献1)。
このことは、現生人(現代型ホモ・サピエンス)の進出で滅んだとする従来の考え方を覆し、現生人との共存が数千年にわたって続いていたことを示す結果である。
国際研究チームは、イベリア半島南部ジブラルタル沿岸の洞窟(どうくつ)から、ネアンデルタール人の文化を示す石器類103個と火の使用跡を発見、地層中の放射性炭素などの分析で年代を特定した。
この科学的発見は、色々な想像を喚起する。ネアンデルタール人と現生人の交流はあったのか。コミュニケーションは可能だったのか。ネアンデルタール人は環境不適合などで自滅したのか、それとも、現生人に滅ばされたのか。食料を取り合ったのか。などなど。共存していた時代のそれぞれの文化程度の差も知りたいと思う。
南カリフォルニア大学のPlagnolらの研究では、ヨーロッパ人はネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいるのでないかと示唆している(文献2)。科学的に大変面白い状況になっている。
【文献】
1) Finlayson, C. et al.: Late survival of Neanderthals at the southernmost extreme of Europe. Nature Online Sep. 13 (2006) [doi: 10.1038/nature05195]
2) Plagnol, V. etal.: Possible Ancestral Structure in Human Populations. PLoS Genetics 2: e105. (2006) [DOI: 10.1371/journal.pgen.0020105]
2006/09/08 世界一高い木見つかる
先月、アメリカ・カリフォルニア州北部にあるレッドウッド国立公園内で、世界一高い木が、Chris AtkinsとMichael Taylorにより 発見された。高さは378.1フィート(115.2m)で、ギリシャ神話の神の名を取って「ヒュペリオン(Hyperion)」と命名された。
ギネスブックに記載されている最長の木は「ストラトスフィア・ジャイアンツ(Stratosphere Giant)」(112.5m)である。また、自由の女神像は93mである。
参照サイト
1)http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2006/09/07/MNGQRL0TDV1.DTL&hw=redwood&sn=001&sc=1000
2)http://www.nativetreesociety.org/bigtree/new_worlds_tallest.htm
2006/08/28 育児で父親の前頭葉の神経回路に変化
霊長類マーモセット(キツネザル)を用いた研究で育児を始めた雄は、神経細胞の構造が変わっていくことをアメリカ・プリンストン大学の研究グループが発見し発表した。
マーモセットは、雄が育児をすることで知られている。赤ちゃんを背負うなど積極的に育児をし、特に生後1カ月は、雄が生活の7割以上の時間を赤ちゃんと過ごす。
研究グループは、育児中の雄と、そうではない雄の脳の領域を比べた結果、子育て中の雄は、バソプレシンという物質の受容体タンパク質が増えていた。
バソプレシンは、「きずな」「情愛」などとかかわりが深い信号を伝える働きがあり、例えばネズミの脳でこのタンパク質を増やすと、1匹の雌を好み、他の雄を攻撃するようになったという報告がある。マーモセットの観察では、タンパク質は、子の月数が少ない雄ほど多かった。
さらに、神経細胞の細胞同士がつながる構造も、密度が高くなる変化が生じることがわかった。父と子のきずなが強まると、子育てにふさわしいきめ細かな神経回路ができていく可能性があることを示していると研究者らは述べている。
【文献】
Kozorovitskiy, Y. et al.: Fatherhood affects dendritic spines and vasopressin V1a receptors in the primate prefrontal cortex. Nature Neurosci. Online 20 Aug. (2006) [doi: 10.1038/nn1753]
2006/08/26 人工塩基を挿入したDNAを複製
DNA(デオキシリボ核酸)の遺伝情報を担う塩基配列に、自然界には存在しない人工塩基を組み込み、このDNAを大量複製すること成功したと、理化学研究所の平尾一郎チームリーダーらの研究グループが発表した。これまで、人工塩基対に関する研究は行われていたが、人工塩基対を組み込んだDNAの複製技術の開発は世界で初である。
DNAは、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の塩基からできており、二重らせん構造に形成している。この4種類の塩基の並び方の中に遺伝情報が書き込まれている。
DNAに書き込まれた遺伝情報からタンパク質ができる過程の最初の段階はDNAの「複製」である。次いで、「転写」、「翻訳」という過程を経て生体内でタンパク質が合成される。
今回、人工塩基「Ds」と「Pa」の2種類を化学合成して、「Ds」と「Pa」が対になるようにDNAに組み込み、人工塩基対を組み込んだDNAをPCRという装置を使って増幅したところ、この人工DNAが「複製」された。
この技術は画期的である。この技術を使えば、従来の遺伝子組み換え技術では不可能な、人工アミノ酸を組み込んだタンパク質を作り出すことができる。そのため、この技術は新薬の開発など病気の治療に役立つ可能性がある。
しかし、今までにない新しい遺伝子を持った新生物につながる技術でもある。例えば、人工DNAが複製できることから、L型アミノ酸からできているタンパク質が生命の源であるが、タンパク質がD型アミノ酸で構成されている新しい生命体を作り出せる可能性もある。
画期的な技術なので倫理的問題を考慮して慎重に実験、研究を続けてほしい。従来の遺伝子組み換え技術開発に求められている実験・倫理規定よりさらに厳しい実験・倫理規定を作って研究を行わないと研究を進められなくなることも考えられる。特に、大腸菌などの生命体を用いた実験は慎重に進めてほしいと思う。
【文献】
Hirao, I. et al.: An unnatural hydrophobic base pair system: site-specific incorporation of nucleotide analogs into DNA and RNA. Nature Methods 3: 729-735 (2006) [doi: 10.1038/nmeth915]
2004/08/25 太陽系惑星は8個、冥王星をはずす
国際天文学連合(IAU: International Astronomical Union)は、8月24日の総会で「惑星の定義」と「冥王星クラスの定義」を賛成多数で採択した。1930年の発見以来76年間、第9惑星の座にあった冥王星を惑星からはずすした。教科書を書き換える歴史的な出来事である。
太陽系惑星の定義は、太陽を周回し、自らの重力で球状となり、軌道周辺で、圧倒的に支配的な天体とした。
国際天文学連合のプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.iau2006.org/mirror/www.iau.org/iau0603/index.html
国立天文台による太陽系の惑星の定義確定のニュースは下記のサイトで読める。
http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000233.html
「教科書を書き換える」のは、科学者の夢の一つであるが、今回はいつもと少し様子が違った。普通であれば、科学者が通説に対し研究結果を基に新説を発表し、その説が受け入れられると専門書で学説の変更が行われる。その後時間がたち専門家の間で定説になるとそれを受けて教科書が変更される。
従って、教科書が変更される場合に議論がおきることは少ない。今回は、学説の変更とは異なり、定義の変更であったので混乱が起きたのかも知れない。
2006/08/23 数学の国際賞受賞者の発表
国際数学連合(IMU: International Mathematical Union)は、8月22日スペイン・マドリードで、数学のノーベル賞と言われる「フィールズ賞」、理論計算機科学分野での優れた研究に贈る「ネバリンナ賞」、数学の応用に関する最高の貢献者をたたえる「ガウス賞」の三つの国際賞を発表した。
第1回のガウス賞の受賞者は、確率論の伊藤清・京都大名誉教授(90)である。伊藤氏は「ともに数学の研究にいそしんできた仲間はもちろん、私の想像を超えた領域にまで成果を応用された方々とも、喜びを分かち合いたい」とコメントしている。
また、フィールズ賞には、100年来の数学の超難問の一つ「ポアンカレ予想」を解決したとされるロシアの数学者グレゴリー・ペレルマン氏(40)とアメリカ・プリンストン大のアンドレイ・オクニコフ教授(37)、カリフォルニア大ロサンゼルス校のテレンス・タオ教授(31)、フランス・パリ南大のウェンデリン・ウェルナー教授(37)の4人が選ばれたが、ペレルマン氏は受賞を辞退した。
ネバンリンナ賞はアメリカ・コーネル大のジョン・クレインバーグ教授(35)が受賞した。ガウス賞には年齢制限はないが、フィールズ賞とネバンリンナ賞の対象者は40歳以下と定められている。
IMU国際賞のサイトは下記にある。
http://www.mathunion.org/medals/
ペレルマン氏は、「有名でなかった頃は(数学者の職業について)何を言っても大丈夫だったが、有名になると何も言えなくなってしまう。だから数学を離れざるをえなかった」と受賞辞退の理由を述べたと朝日新聞が報じている(06/8/22)。
ペレルマン氏の生き方は、科学者の理想の一つではないか。ただ、「ペレルマン氏は現在無職で、サンクトペテルブルクの郊外で母親と生活している。わずかな貯金と元数学教師の母親の年金だけが生活の糧で、『(授賞式が開かれる)マドリードに行く費用もない』という。」との記事が掲載されていた。ペレルマン氏の望みをかなえるだけの生活費はあるのだろうか。もし不足しているなら何とかならないのだろうか。
2006/08/21 インターネットの怖さ
科学的な記事の検討を行うためには一次資料(文献)に当ることは必須である。しかし、「病気にならない生き方」の著者、新谷弘実氏はそれを怠ったのであろう。文献に当たっていれば、「米国人7万8000人を12年間追跡し牛乳を飲むほど骨粗鬆(こつそしょう)症になる関係を明らかにしたハーバード大の研究がある」とはしないだろう。文献の要約を読むだけでもそのことは分かる。
この論文の都合の良い誤訳は、初めてではなくトンデモ本の世界では有名なようだ。「だれもが100%スリム!常識破りの超健康革命」(松田麻美子 著)などにも引用されている。誰かが誤報と知りつつインターネットに流したのではないか。
インターネットの怖いところは、コピー&ペーストで広がると誤訳でもそのまま記事として通用してしまうところにある。そのため、文献に当たるという原則を忘れ、インターネットの検索だけで判断すると、誤った結論に達してしまう。「自分で確かめること」の大切さを改めて思った。
2006/08/20 牛乳は人に大切な食材である
毎日新聞が、牛乳を有害とする「病気にならない生き方」(新谷弘実著:サンマーク出版)を取り上げた。このことに対して、その非科学性について仁木良哉北大名誉教授の批判が下記の毎日新聞のサイトに掲載されている。当然の反論であり、牛乳は人に大切な食材である。
毎日新聞のサイト
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/hokkaido/shoku/
gyunyu/news/20060801hog00m100003000c.html
・牛乳は子牛が飲むもの。人間が飲むのは自然の摂理に反する
仁木 子牛のための牛乳と食品としての牛乳の意義を混同している。人類は牛を紀元前数千年前から家畜化し、牛乳を食べ物として利用してきた。牛乳は気候条件や土壌に恵まれない国や地域の人々の命を支えてきた。この優れた食品である牛乳の利用がなぜ自然の摂理に反するのか。
仁木氏の反論は当然だろう。非科学の典型的な言い回しで、科学的根拠など全くない。自然の摂理を明らかにするのが科学ではないのか。
・米国人7万8000人を12年間追跡し牛乳を飲むほど骨粗鬆(こつそしょう)症になる関係を明らかにしたハーバード大の研究がある
仁木 その論文には「牛乳を飲むほど骨粗鬆症になる」とは書かれていない。牛乳の摂取によって骨折のリスクが減る証拠はないと結論づけているが、日本人の1日所要量に相当するカルシウム(600ミリグラム)を摂取したグループと、それ以上摂取したグループとを比較しており、カルシウム摂取量が所要量まで平均していっていない我々日本人には意味のないデータだ。自分の主張に都合良く訳している。
上記の論文は、Feskanich, D. et al.: Milk, dietary calcium, and bone fractures in women: a 12-year prospective study. Am. J. Public. Health. 87: 992-997. (1997)であり、仁木氏の指摘の通りである。記者は、記事にする前にこの点を自身で確認しているのだろうか。
さらに付け加えるなら、同じグループが骨粗しょう症の発症リスクの制限因子はビタミンDであるとする論文を2003年に発表しており、そこにも「牛乳を飲むほど骨粗しょう症になる」とはどこにも記載されていない。この論文はFeskanich, D. et. al.: Calcium, vitamin D, milk consumption, and hip fractures: a prospective study among postmenopausal women. Am. J. Clin. Nutr. 77: 504-511. (2003)である。
2006/08/17 学習に使われた神経細胞は生き残る
大人になっても神経細胞は新たに生まれ、学習や記憶に使われた神経細胞だけが生き残って神経回路に組み込まれる可能性が高いとアメリカ・ソーク研究所の研究グループが発表した。
マウスを用いて学習や記憶にかかわる脳の領域で、遺伝子操作技術により新たに生まれる神経細胞見分けられるようにした。同時にこの神経細胞で特定の神経伝達物質の受容体(NMDA-receptor)が働かず、情報を受け取れないようにしたマウスもつくった。
両方のマウスを比べると、情報を受け取れなくしたマウスでは、新たに生まれた神経細胞の生存率が4分の1に低下していた。このことから、情報を受け取れない細胞は死に、情報を受け取った細胞が生き残り神経回路に組み込まれることが分かった。
以上のことから、大人になっても新たにできる神経回路には、学習した特定の情報が刻みこまれていると考えられた。
【文献】
Tashiro, A. et al.: NMDA-receptor-mediated, cell-specific integration of new neurons in adult dentate gyrus. Nature online 13 Aug. (2006) [doi: 10.1038/nature05028]
2006/08/15 マイナス20℃で15年凍結のマウスの精子から子ども
マウスの体をまるごとマイナス20℃の冷凍庫で15年間凍結し、解凍後に取り出した精子を使って子どもを誕生させることに、理化学研究所などの研究チームが成功したと発表した。この技術を使えば、マンモスなど絶滅動物でも永久凍土などに体が残っていれば、精子を近縁種の卵子に入れ、子どもを作れるのではないかと期待されている。
従来の精子の保存は、精巣から精子を取り出して保存液に浸し、液体窒素を使ってマイナス196℃で凍結していた。研究チームは1991年から15年間、マイナス20℃に保存されていたマウスの精巣を取り出して解凍、その中の精子を顕微鏡下で新鮮な卵子に注入(顕微授精)して214個の受精卵を作った。これを雌マウスに移植した結果、29匹の子どもが生まれ、うち27匹が無事に育ち、その子どもも正常に誕生した。
また、マイナス80℃で1年間凍結した別のマウスでも解凍して取り出した精子を使って子どもを誕生させることに成功した。
【文献】
Ogonuki, N. et al.: Spermatozoa and spermatids retrieved from frozen reproductive organs or frozen whole bodies of male mice can produce normal offspring. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (in press)
2006/08/11 卵子を使わない万能幹細胞のマウスから作成
卵子や受精卵(胚)を使わず体細胞だけから、さまざまな組織の細胞に分化する能力を持つ万能幹細胞を作り出すことに、京都大再生医科学研究所の山中伸弥教授らがマウスで成功したと科学研究雑誌に発表した。
将来、ヒトの体細胞で実現すれば、拒絶反応のない臓器移植や再生医療、新薬開発など幅広い応用につながることが期待されている。卵子や胚を使うES細胞には倫理的な問題があるが、この細胞を使ってもクローン動物作成にはつながらないという。
皮膚や臓器などに分化した細胞を胚の状態に若返らせ、分化能力を呼び戻すことを「初期化」というが、研究グループは、ES細胞と体細胞を融合すると体細胞で初期化が起こることから、ES細胞の中で初期化に必要な遺伝子が働いていると考えた。
そこで、マウスのES細胞で特異な働きをする24の遺伝子を調べ、初期化に不可欠な四つ(Oct3/4, Sox2, c-Myc, Klf4)遺伝子を突き止めた。マウスの皮膚細胞にこれら遺伝子を導入すると、ES細胞とよく似た細胞ができ、iPS細胞(誘導多能性幹細胞)と名付けた。
この細胞をマウスの皮下に注入すると、神経、筋肉、軟骨などさまざまな種類の細胞や組織を含むこぶができた。容器内でも心筋、皮膚、肝臓の各細胞に分化し、万能性を持つことが確認された。
【文献】
Takahashi, K. & Yamanaka, S.: Induction of Pluripotent Stem Cells from Mouse Embryonic and Adult Fibroblast Cultures by Defined Factors. Cell online Aug. 10. (2006)
2006/08/06 脳内の食事の時間を記憶する遺伝子
マウスを使って脳内の遺伝子が餌を取る時間を記憶し、餌を食べるよう指令を出す体内時計遺伝子を見つけたとアメリカ・テキサス大学の研究チームが公表した。この時計遺伝子と食欲の関係を解明すれば、肥満予防対策に役立つという。
マウスは夜行性で、夜に動き回って餌を食べるが、昼にだけ餌を与えると昼と夜が逆転する。この時のマウスの脳を分析した結果、食欲に関係するとされる脳の背内側核(はいないそくかく)で、時計遺伝子が餌の時間に合わせて24時間周期で動いていることを突き止めた。
肥満の人は1日のカロリーの半分以上を夜間に食べる「夜型」が、正常人の40倍多いことから、夜型から昼型の違いについて解明できれば肥満の予防策につながるとテキサス大学の研究チームの柳沢教授は述べている。
【文献】
Mieda, M. et al.: The dorsomedial hypothalamic nucleus as a putative food-entrainable circadian pacemaker. Pro. Nat. Acad. Sci. USA Online Jul. 31 (2006) [doi: 10.1073/pnas.0604189103 (Neuroscience)]
2006/08/03 スイカを室温で保存するとリコピンなどが増加
スイカに含まれるリコピンやβ-カロテンは、冷蔵庫で冷やさず室温で保存すると、収穫後も次第に増加すると、アメリカ・農務省の研究チームが発表した。
完全に熟したと判断したスイカを、収穫後14日間、21℃、13℃、5℃に保存した結果、室温に近い21℃で保存したスイカは、収穫したばかりのスイカと比べ、β-カロテンが50-139%、リコピンが最大40%増えていることが分かった。
一方、低温で保存したスイカでは増加率が低かった。
【文献】
Perkins-Veazie, P. & Collins, J.K. : Carotenoid Changes of Intact Watermelons after Storage. J. Agric. Food Chem. 54: 5868 -5874. (2006) [doi: 10.1021/jf0532664]
2006/07/26 史上最高の熱安定性を持つタンパク質
超好熱菌Pyrococcus horikoshii由来のCutA1(銅イオンと関わるタンパク質)の中性付近での熱変性温度は148.5℃であると理化学研究所などの研究グループが発表した。このタンパク質の熱安定性は、今まで知られていた最も熱安定性の高いタンパク質よりも30℃近くも高い。CutA1タンパク質が約150℃という史上最高の熱安定性を示す理由はタンパク質分子表面のイオン結合にあることが明らかになった。
タンパク質は、熱やpHの変化など、わずかな環境変化で変性するが、温泉の源泉付近など、水の沸騰点近くで生育する微生物が生産するタンパク質は、熱安定性が高いことが知られている。超好熱菌から見つけられたCutA1タンパク質は、イオン結合の数が他タンパク質よりも非常に多く、イオン結合のネットワークを形成している。このイオン結合のネットワークが分子表面で層を形成していてタンパク質分子の断熱材として働くために、150℃近くまで安定して構造を保つことができるとしている。
【文献】
Tanaka, T. et al.: Hyper-thermostability of CutA1 protein, with a denaturation temperature of nearly 150℃, FEBS letters 580: 4224-4230. (2006)
2006/07/22 日本近海に2種類のマンボウが生息
広島大学の研究から日本近海にマンゴウが2種類いる可能性があることが分かったと毎日新聞が伝えている(06/7/14)。
ミトコンドリアDNAの解析から2種類のうち1種類は豪州近海に生息するマンボウに似ていることから、断定はできないが、約7500キロ離れたオーストラリアと日本を回遊している可能性があるとしている。
国内で捕獲された標本など約70体のマンボウのミトコンドリアDNAを解析し、太平洋側に生息する全長約3mの大型(A群)のマンボウと、太平洋・日本海の両側に生息の約1.3mの小型(B群)の2群の存在が分かった。
【文献】
吉田有貴子ら.日本周辺海域に出現するマンボウMola molaのミトコンドリアDNAを用いた個体群解析.DNA多型.13: 171-174. (2005)
相良恒太郎ら.日本周辺海域に出現するマンボウMola molaにみとめられた2つの集団.魚類学雑誌 52: 35-39. (2005)
2006/07/15 世界初:ES細胞からマウス誕生
万能細胞とも呼ばれる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)からつくった精子を卵子と受精させ、マウスの子を誕生させることにドイツ・ゲッティンゲン大の研究チームが成功した。
ES細胞から精子や卵子ができたとの報告はこれまでにもあったが、子どもに育つ能力を証明したのは世界で初めてである。理論的には人間でも実現可能なことを示した。だが、生まれたマウスには早死になどの異常がみられた。
研究チームは、マウスのES細胞の中から特定のたんぱく質をマーカーとして精子のもとになる細胞を単離し、試験管内で精子へと成熟させた。それを微細なガラス棒で卵子に注入受精し、雌マウスへの移植で計7匹のマウスが生まれ、うち6匹はおとなに成長した。
しかし、6匹とも体が大き過ぎたり小さ過ぎたりしたほか、通常は数年とされる寿命より短い5カ月以内に死んだことから、研究チームは技術的には未完成としている。
【文献】
Nayernia, K. et al.: In Vitro-Differentiated Embryonic Stem Cells Give Rise to Male Gametes that Can Generate Offspring Mice. Dev Cell. 11: 125-132. (2006)
2006/07/14 肉食恐竜ティラノサウルスの生命表
最大級の肉食恐竜ティラノサウルスは、寿命の半分ほどのいわば「中年期」から、命を落とす個体が急増していたとアメリカ・フロリダ州立大などの研究チームが発表した。
カナダ・アルバータ州で発掘された22個体のティラノサウルスの骨の成長線を調べた結果、2~28歳とさまざまな成長段階の個体が含まれていることが分かった。
年齢ごとの生存率を推定した結果、生まれて間もない時期に60%は死ぬが、2歳(体長約2m)まで生き延びるとその後13歳まで生存率はあまり減らない。ところが、繁殖可能になるとみられる14歳から生存率が急激に落ち、28歳程度まで生きて、体長約10mに達するのは全体の2%しかいないことが分かった。
2メートルの体長は他の捕食者から身を守るのに十分な大きさだが、繁殖期には雌の取り合いなどの争いが増え、傷を受けるなどが原因で死亡個体が増えた研究者らは推測している。
文献】
Gregory M. Erickson, G. M. et al.: Tyrannosaur Life Tables: An Example of Nonavian Dinosaur Population Biology. Science 313: 213 - 217. (2006) [DOI: 10.1126/science.1125721]
2006/07/11 OECD-FAO:世界農業見通し2006
経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は、2015年までの世界農業見通しOECD-FAO Agricultural Outlook2006-2015を発表した。OECDは世界の農産物需要の伸びが主要15品目のうち14品目で世界人口の年平均増加率見通しである1.1%以上に達すると述べている。特に最貧国で輸入への依存が高まり、食糧の調達が国際商品相場の変動による影響を受けやすくなると予測している。
将来の農畜産物の貿易ではブラジル、インド、中国の重要性が増すとした。また、中国の輸出動向が世界の食糧需給のカギを握ると指摘している。
エネルギー関連では、化石燃料の代替えとしてバイオ燃料の需要が増すと予測している。
OECD-FAOのプレスリリース下記のサイトで読める。
http://www.fao.org/newsroom/en/news/2006/1000349/index.html
2006/07/03 ノルウェーが種子バンク「ノアの箱舟」
ノルウェー政府は北極圏の島に設けた貯蔵庫に、世界各地の農作物300万種類の種子を集め、絶滅の危機に備えて保管する計画であるとBBCなどが伝えている。種子バンクは、自然災害や戦争、病害、気候変動などによってその土地の農作物が絶滅し、多様性が失われる事態を防ぐためノルウェーが建設する。
建設地は北極点から約1000kmのノルウェー領スバルバル諸島で、永久凍土の中にコンクリート製の貯蔵庫を作り種子を保管する。庫内の気温は温度維持システムで低温に保たれるが、万一システムが故障しても、気温が0℃を超えることはなく、種子は数百年または数千年先まで保管できるという。
植物の絶滅に備える種子バンクは、世界各地にすでに約1400カ所設けられているが、その大半は自国の植物のみを対象としている。災害や戦争、財源不足などによって貯蔵施設を維持できない可能性があることから、20年以上前から世界規模のバンク設立が検討されていたものの、種子の遺伝子の所有権などをめぐる問題が解決せず、実現が遅れていた。
スバルバル諸島の構想では、種子を提供する国が所有権を保持し、銀行の貸金庫を使うような形でノルウェー所有のバンク施設を利用する。種子の受け入れは、07年9月に開始される予定である。
ノルウェー農業食料省のプレスリリースは下記のサイトで読める。
http://odin.dep.no/lmd/english/news/news/049051-070027/dok-bn.html
2006/07/02 アリは体内の「歩数計」で距離を把握
アリは、歩数を数えることで、移動距離を正確に把握している可能性の高いことをドイツのウルム大などの研究チームが発表した。
研究チームは、距離測定は歩数で行うとの仮説を立て、アフリカのサハラ砂漠に生息するアリの脚の長さを変えて実験した。
巣穴から10m離れた場所でエサを与えたアリを、1)ブタの毛を竹馬のように履かせて脚を長くする、2)一部を切断して脚を短くする、3)何もしない、の3群に分け、巣穴に戻れるか調べた。ところ、足を長くしたアリは10mを越え、足の短いアリは10mより短い位置で巣を探す行動をした。
次に、巣穴からエサの位置まで歩かせて、戻る距離を測ったところ、3つの群ともに正確に10mの位置の巣穴に戻った。
以上の結果から、研究者らはアリは巣までの距離を把握するのに体内の「歩数計」を利用していると結論づけた。
【文献】
Wittlinger, M. et al.: The Ant Odometer: Stepping on Stilts and Stumps. Science 312: 1965-1967. (2006)
この研究の特徴的な点は、アリの足の長さを長くするテクニック、巣穴を探す行動などアリの生態の理解、統計的な手法である。理科自由研究の延長のような研究であるが興味深い。
2006/07/01 雷雨の中での携帯電話は危険
雷雨の中で携帯電話を使うのは危険であるとイギリスの医師たちが医学雑誌で警告している。携帯電話の金属が雷を誘導し、そのためショックを受けて死亡する可能性があると述べている。15歳の少女はロンドンの公園で電話中、落雷に打たれて心臓停止になった。この場合は、その後の蘇生により回復したが、注意が必要としている。
【文献】
Esprit, S. et al.: Injury from lightning strike while using mobile phone. BMJ. 332: 1513 (2006) [doi: 10.1136/bmj.332.7556.1513-b]
2006年上半期
2006/06/28 体色変える新種のヘビをボルネオで発見
世界自然保護基金(WWF)は、インドネシア・ボルネオ島のカプアス川の湿地帯でカメレオンのように体の色を変える新種のヘビを発見したと発表した。体の色を変えるヘビは世界的に珍しいという。
体長50cmほどの毒蛇で、通常は赤褐色だが、白色に変化するが、どうして色が変わるかは分からないとしている。このヘビは新種と確認され、カプアス・マッド・スネーク(Kapuas Mud Snake)と名付けられ、科学研究雑誌に掲載された。
WWFによる記者発表は下記のサイトで読める。
http://www.wwf.or.jp/news/press/2006/p06062701.htm
【文献】
Murphy, J. C. et al.: A New Species Of Enhydris (Serpentes: Colubridae: Homalopsinae) From The Kapuas River System, West Kalimantan, Indonesia. Raff. Bull. Zoo. 53: 271-275. (2005)
2006/06/26 ロボットのW杯でチームオオサカが3連覇
ドイツ・ブレーメンで開かれていたロボットによるサッカーの世界大会「ロボカップ」(6月14-18日)で、大阪大学と関西の中小企業でつくる「チームオオサカ」が制作したヴィジオン・トライズがヒューマノイドリーグで優勝し、2004年のリスボン大会、2005年の大阪大会での優勝に続く3連覇を達成した。2位はドイツのTeam NimbRoであった。
チームオオサカの優勝のプレスリリースは下記サイト。
http://www.robo-labo.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=114
2006年のW杯の試合結果は下記サイト。
http://www.humanoidsoccer.org/results_all.html
第2位になったドイツのNimbRoチームのサイト。ここではチームオオサカとの決勝戦の様子などがビデオで見られる。
http://www.nimbro.net/
2006/06/18 水陸両生鳥類の祖先の化石見つかる
中国北西部の白亜紀前期(1億1500万年~1億500万年前)の地層から、現代の水陸両生鳥類の祖先にあたる真鳥類の化石(Gansus yumenensis)が見つかったと中国とアメリカの国際研究チームが科学研究雑誌Scienceに発表した。
見つかったのは5羽の化石で、頭部を除くほぼ全身の骨格が確認された。体長は約30cm、胸骨の特徴から現代の鳥類の直接の祖先である真鳥類の仲間とみられ、真鳥類の化石の中でも最も古い時代のものと考えられている。水かきや飛ぶのに適した風切り羽を持っていた。
鳥類は、陸上で生活する恐竜から進化したと考えられているが、現代の鳥につながる真鳥類は、ごく初期の段階から水辺の生活に適応する進化をしていたと推測されている。
【文献】
You, H. et al.: A Nearly Modern Amphibious Bird from the Early Cretaceous of Northwestern China. Science 312: 1640-1643. (2006) [DOI: 10.1126/science.1126377]
2006/06/14 W杯使用の新サッカーボールは試合結果を変える!?
ワールドカップで初めて使用される新しいサッカーボールは試合結果に影響を与えるかも知れないとイギリス・Bath大学の研究者が述べている。
従来のサッカーボールは五角形と六角形の32枚のパーツを糸で縫い合わせていたが、新サッカーボールはパーツを14枚に減らし接着剤を熱で溶かして張り合わせる独特の製造法を採用したため、継ぎ目の凹凸が最小限になり、従来より球形に近く、野球のボールのようになった。
そのため、ゆっくりした回転でキックされるとホールは不安定となり予測できない軌道を描きゴールキーパーがボールをとらえにくくなると予想されている。例えば野球のナックルのような動きになる。ワールドカップのゴール前のフリーキックで、従来とは異なるサッカーボールの軌道を見ることができるかも知れないと研究者は述べている。
イギリスのゴールキーパー、ロビンソン選手やドイツのレーマン選手もこうしたサッカーボールの今までと違った動きについて発言しているとのこと。
2006/06/11 科学技術振興機構のサイエンスポータル
科学技術振興機構(JST)が、科学に関する400以上のサイトにつながる「サイエンスポータル」を開設した。サイエンスポータルは、毎日更新する「ニュース」、週1回更新する「特集」、随時更新する「情報」から構成されている。一般向けと研究者や理工系学生向けとがあり、我が国の科学技術の今が分かる。
サイエンスポータルのサイトは下記。
http://scienceportal.jp/
2006/06/06 冬眠ホルモンの発見
三菱化学生命科学研究所の近藤宣昭氏らの研究グループは、シマリスの血液中に存在する冬眠特異的タンパク質(HP)複合体が、冬眠をコントロールするホルモン候補因子であることを世界で初めて発見した。この冬眠特異的タンパク質複合体は、脳で冬眠を制御すると考えられている。
冬眠は、体温が低下しても死なないように心臓などを強化し、病原体の感染や発がん物質への抵抗力が高まることが知られていた。この冬眠特異的タンパク質(HP)複合体は、人間にはないが、研究が進めば、体温を下げ脳へのダメージを減らす脳低温療法や、長期の宇宙旅行への応用などが期待されている。
【文献】
Kondo, N., et al.: Circannual Control of Hibernation by HP Complex in the Brain. Cell 125: 161-172. (2006)
SFの世界の話が身近に感じられる研究成果である。今後の研究が楽しみである。
2006/06/05 5500万年前の北極海は亜熱帯レベル
約5500万年前の北極の海面温度は23℃で亜熱帯レベルの暖かさだったが、約4500万年前から氷におおわれ始めたと国際共同チームが発表した。
国際共同チームに参加している国は20カ国で、北極海のロモノソフ海嶺(かいれい)と呼ばれる海底山脈を地下430メートルまで掘削し、堆積(たいせき)物を採取した。
堆積物を解析しした結果、当時の海面温度は23℃で亜熱帯レベルの暖かさで、約4900万年前には淡水で生きる浮草が北極海をおおっていたこともわかった。
その後、気温が下がり、氷で被われるようになったのは、氷が運んだと思われる石が見つかった約4500万年前と推定された。
約5500万年前は大気中の二酸化炭素濃度が上がり、温暖だったと推定されていたが、今回の堆積物の解析で、直接的な証明がなされた。
【文献】
Moran, K. et al.: The Cenozoic palaeoenvironment of the Arctic Ocean. Nature 441: 601-605. (2006) [doi:10.1038/nature04800]
2006/06/04 世界最古の作物はイチジク
約1万1000年前のヨルダンの遺跡から見つかったイチジクが、小麦などよりも約1000年古く、人類最古の作物である可能性が高いとハーバード大などの研究チームが発表した。
これまで、イチジクの栽培は約6500年前とされていたが、新石器時代初期の遺跡で出土した9つのイチジクの実を調べたところ、野生種と異なり、虫を媒介とした受粉がなくても実を付ける変種で、実も甘くて落ちにくいものだったことが分かった。
この変種は種を作らないため、自然のままでは繁殖できず、人間が枝を切り取って植えるなどの方法で増やす必要があるため、当時の人々がこうした変種の性質を理解し、作物として栽培していたと結論付けた。
【文献】
Kislev, M. et al.: Early Domesticated Fig in the Jordan Valley. Science 312: 1372-1374. (2006)
果物と人との関係はかなり昔から密接であったことが分かる。
2006/05/27 科学ジャーナリスト大賞に毎日新聞の元村記者
優れた科学ジャーナリスト活動を顕彰する「第1回科学ジャーナリスト賞」の受賞者5人が発表された。5人の中から「大賞」に、毎日新聞科学環境部の元村有希子記者が選ばれた。受賞理由は「ブログを含む『理系白書』の報道」である。
また、毎日新聞大阪本社社会部の大島秀利記者の「アスベスト(石綿)被害と救済に関する報道」、フリーカメラマン、中村梧郎氏の「ベトナム戦争の枯葉剤被害を追及する報道姿勢」、青山学院大教授、福岡伸一氏の「分子生物学者として斬新な視点からBSEを分析し、一般向け科学書にまとめ」、朝日放送アスベスト取材班代表、石高健次氏の「アスベスト問題に取り組み、住民被害の実態と救済を訴えた報道」が受賞した。
同賞は「日本科学技術ジャーナリスト会議」が、創立10周年を記念して新設。過去1年間の報道や著作、博物館での活動など、科学技術を社会に伝える仕事に対して贈られる。
新聞、テレビなどの報道で、科学ニュースの枠が少ないように思う。こうした賞を通して正確な科学技術が広く社会に伝わったらと思う。
2006/05/26 HIVの起源はカメルーンのチンパンジー
エイズウイルス1型(HIV1)は、アフリカ・カメルーンに生息している野生のチンパンジー(Pan troglodytes troglodytes)が起源となっていることを、アメリカ・アラバマ大などの研究チームが科学研究雑誌Scienceに発表した。
HIV1の起源をめぐっては、遺伝子のよく似たサルエイズウイルス(SIV)がこの地域のチンパンジーから見つかっていることから、これまでもチンパンジー説は有力だった。ただ、生息地域が隔絶されていることや、チンパンジーが絶滅の危機にあるなどから研究は進んでいなかった。
カメルーン南部の森林10カ所で採取した446匹分のチンパンジーのふんを分析した結果、これまでに見つかっているSIVのなかで、最もHIV1に近いウイルスを見つけた。
飼育チンパンジーの感染率は低く、野生のチンパンジーの感染実態はよく分かっていなかった。しかし、今回調べたチンパンジーの感染率は30-35%と高率だった。
この研究のユニークな点は、捕獲の難しいチンパンジーのふんの遺伝子を分析したところである。森林でふんを探す作業は大変だったのではないか。
【文献】
Keele, B. F. et al.: Chimpanzee Reservoirs of Pandemic and Nonpandemic HIV-1. Science Online May 25 (2006) [doi: 10.1126/science.1126531]
2006/05/15 バンドウイルカの口笛は名前
バンドウイルカ(Tursiops truncatus)は、お互いに「名前」を告げて意思を伝え合っていることを、動物コミュニケーションの研究をしているチームが実験観察で確かめた。人間以外の動物で、名前のような「身元情報」を伝え合っている動物はほかにいない。
バンドウイルカは、自分に特有の「口笛」のようなかん高い声を発し合い、仲間であることを確認している。相手の口笛をまねしたり、飼育下で物体を指し示す新しい口笛を覚えたりするため、口笛は名前として使われているのではないかと考えられていた。
そこで、研究チームは、単に仲間の声に反応するのか、声が伝える内容に反応するのかを見極めるため、口笛から声の特徴を電気的に取り去り、海中のスピーカーから流した。
その結果、14頭のうち9頭は、なじみの口笛から作った音に極めて敏感に反応し、スピーカーの方をたびたび振り向いた。このことから声ではなく内容に反応していることがわかり、どのイルカが発しようと口笛は「名前」として使われていると判断できた。
【文献】
Janik, V.M. et al.: Signature whistle shape conveys identity information to bottlenose dolphins. Proc. Natl. Acad. Sci. USA online May 12 (2006) [doi: 10.1073/pnas.0509918103]
2006/05/14 プラナリアの研究で国際学生科学賞受賞
アメリカ・インディアナ州で開かれた国際学生科学フェア(ISEF)で、埼玉県立浦和第一女子高3年の下山せいらさん(17)が動物学部門のベストカテゴリー賞に次いで1等賞に選ばれた。テーマは「Glycogen Induces Extension of Pharynx During Feeding in Planarians」である。
下記のサイトに表彰者のリストが掲載されている。
http://www.sciserv.org/isef/results/grnd2006.pdf
2006/05/09 栽培小麦の歴史はゆっくりと
シリア、トルコ国境のユーフラテス川沿いで約1万年前に一気に進んだとされる農耕の開始が、10,200年前ごろから3500年以上かけてゆっくりと進んでいたのではないかと報告された。
小麦栽培発祥の地とされるシリア北部からトルコ南部にかけての4つの遺跡(10,200~6500年前)で出土した小麦を調べた今回の結果と過去に調べられた2つの遺跡(9,300~7,500年前)とから明らかになった。
小麦を栽培し、収穫後に脱穀すると小穂に人為的な傷跡が残ることに着目して野生種と栽培種を区別して分析した。小穂9844点のうち、傷跡の有無が判別できた804点を分析し、遺跡ごとに比較した。
新石器革命の時期に当たる10,200年前に食べていた小麦はすべて野生種であった。9250年前になると栽培種が11%になり、7500年前になると36%に増加し、6500年前では65%となった。
農耕は1万年ほど前、氷河期が終わった後に、再度一時的に寒くなった気候変動によって一気に始まったとされてきた。しかし、今回の結果から小麦の栽培は、時間をかけてゆっくりと浸透していったと考えられる。
【文献】
Tanno, K. and Willcox, G.: How Fast Was Wild Wheat Domesticated? Science 311: 1886. (2006)
2006/05/01 次世代高温耐性新合金
従来より約100℃高い1200℃前後でも強度を維持する新合金の開発に、東北大の研究グループが成功したと科学研究雑誌Scienceに発表した。
従来のニッケルベース超合金のものより高温に対する強度が高いコバルトベース超合金を開発した。開発した新合金は、コバルトにアルミニウムとタングステンで、鋳造後に一定温度で再加熱する方法でできた。この結晶は原子同士の結合が特に強く、加熱しても軟らかくならない特性を持ち、合金全体の硬さを維持できる。 そのため、次世代高温耐性合金として期待されている。
【文献】
Sato, J. et al.: Cobalt-Base High-Temperature Alloys. Science 312: 90-91. (2006)
2006/04/26 有機農法のリンゴ園は環境に優しい
有機農法は、従来の農業より環境に優しいと考えられているが、今回この考えからを支持する研究結果が報告された。
アメリカ・スタンフォード大学の研究チームは、リンゴ園を使って化学肥料(硝酸カルシウム)と有機肥料(鶏糞)、アルファルファについて調べた結果、環境へ与える影響が異なることが分かった。
ワシントン州ヤキマバレーのリンゴ園の地下水の中の硝酸塩レベルを測定したところ、有機肥料とアルファルファを使った場合と比較して化学肥料を施肥した地区では硝酸塩の濃度が4.4~4.6倍高いことが分かった。
また、窒素ガスの排出について測定したところ、有機肥料とアルファルファの区では無害な窒素ガスが多く排出することが分かった。
【文献】
Kramer, S.B., et al.: Reduced nitrate leaching and enhanced denitrifier activity and efficiency in organically fertilized soils. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 103: 4522-4527. (2006) [doi: 10.1073/pnas.0600359103]
2006/04/17 一家に1枚ヒトゲノムマップ
人間の全遺伝情報であるヒトゲノムを、一般向けに解説した「一家に1枚ヒトゲノムマップ」を文部科学省が作成した。4月17日から始まる科学技術週間にあわせて全国の主要科学館等を通じて希望者に配布する(先着順で約5万枚)。また、全国の小、中、高校に計4万枚を配る。その他、ホームページ上からダウンロードできるPDF版も用意されている(用紙サイズA3,A2)。
ヒトゲノムは約2万6800個の遺伝子を含む。マップにはその約1%を記載し、「コラーゲンをつくる遺伝子」や「お酒への強さを決める遺伝子」など身近なものをイラスト入りで解説してある。
PDF版のダウンロードは下記のサイトからできる。
http://stw.mext.go.jp/20060414/index.html
2006/04/14 植物内部の水分を調節する遺伝子の発見
植物内部の水分を調節するホルモンの量を変える遺伝子を見つけと理化学研究所のグループが発表した。
植物は、葉の裏にある「気孔」が開閉し、水分の量を調節している。この気孔の開閉を調節しているのがアブシジン酸という植物ホルモンである。周囲が乾燥すると、アブシジン酸が合成されて量が増え、気孔が閉じて植物体内の水分が保たれる。この植物ホルモンがつくられる仕組みはわかっていたが、量の調節機構は分からなかった。
そこで、シロイヌナズナの遺伝子CYP707A3を改変し、アブシジン酸の量を通常の3分の1から2倍まで変えたところ、シロイヌナズナはしおれたり、葉をピンと張ったりした。
この実験から、この遺伝子CYP707A3がアブシジン酸の分解に働き、水分を調整していると考えられた。
【文献】
Umezawa, T. et al.: CYP707A3, a major ABA 8'-hydroxylase involved in dehydration and rehydration response in Arabidopsis thaliana. Plant J. 46:171-182. (2006) [doi: 10.1111/j.1365-313X.2006.02683.x]
2006/04/13 可視光で水から水素を取り出す
目に見える光(可視光)をあてると、水を分解して水素を発生する新しい光触媒について東京大学、長岡工科大学などの研究グループが見つけた。水素は、燃やしても水しか出ないクリーンエネルギーである。
光触媒とは、光があたると化学反応を促進する物質のことで、水を水素と酸素に分解できる物質も知られていたが、紫外線だけに反応するものが多かった。
水素製造に使うには、太陽光に多く含まれる可視光を有効利用することが欠かせない。そこで、研究グループは、窒化ガリウムと酸化亜鉛をまぜた黄色い粉末に助触媒を加えると、可視光にも反応する光触媒になり、可視光による水の分解効率が従来より約10倍高くなることを発見した。
太陽光と水から水素を大量に作るという化学者の長年の夢に道を開く成果である。
【文献】
Maeda, K., et al.: Photocatalyst releasing hydrogen from water. Nature 440: 295. (2006) [doi: 10.1038/440295a]
2006/04/11 硫化鉄のうろこを持つ巻き貝
よろいのような硫化鉄のうろこを持つ巻き貝「スケーリーフット」の採取と飼育実験に、新江ノ島水族館などの研究グループが成功した。この貝はインド洋深海底でしか生息が確認されていない。
研究グループは、2006年2月に有人潜水調査船「しんかい6500」により、硫化鉄の鱗を持った巻貝Crysomallon(俗名:スケーリーフット(「鱗をまとった足」の意))を深海底の熱水活動環境において観察し、さらに初めて船上に持ち帰っての水槽飼育による観察を行うことに成功した。うろこは腹足部を覆い、硬さは人間の歯の倍程度で、外敵から身を守るためと考えられている。
新江ノ島水族館では深海コーナーで展示を行っている。
巻き貝「スケーリーフット」の写真は下記のサイトで見られる。
写真1
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/0603/0330/photo1.jpg
写真2
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/0603/0330/photo2.jpg
新江ノ島水族館のホームページは下記。
http://www.enosui.com/news/detail/2006tenji_06.html
2006/04/06 35億年前にメタンつくる微生物
35億年前にメタンをつくる微生物が存在したと東京工業大の研究グループが科学雑誌ネイチャーに発表した。これまで考えられていた約28億年前という説を約7億年さかのぼった。
メタン生成菌は、最も原始的な生命体の1つであると思われるが、それが地球上に初めて現れた時期ははっきりしていない。始生代(25億年前以前)には、メタン生成菌が温室効果ガスであるメタンを十分な量供給し、その時代の低い太陽光度による極寒の条件を軽減することにより、気候を調節するうえで重要だった可能性がある。
研究グループは、オーストラリア西部の35億年前(34億6000万年以上前)の岩石中にとりこまれた泡を解析し、水や二酸化炭素のほか、微量なメタンを見つけた。メタンに含まれる炭素を分析した結果、これは生物がつくったものだとわかった。
炭素には、質量が異なる2種類があり、噴火などでもたらされたメタンと、生物の活動によってできたものでは、2種類の比が異なっているためである。
地球生命の誕生は約38億年前とされるが、初期の生物がどのような活動をしていたのかはほとんどわかってい。今回の発見は、初期の微生物が大気と気候に与える影響の解明に役立つ成果である。
【文献】
Ueno, Y., et al.: Evidence from fluid inclusions for microbial methanogenesis in the early Archaean era. Nature 440: 516-519. (2006) [doi: 10.1038/nature04584]
2006/03/18 土星の衛星「エンケラドス」に間欠泉
土星探査機「カッシーニ」が、氷で覆われた土星の衛星の一つ「エンケラドス」に、イエローストーン公園の間欠泉のようなものがあることが確認された。そのため、この衛星に生命体が存在するかもしれないという期待が高まっている。
この画像は、液体の状態の水が地球外に存在する可能性を示しているこれまでで最も確度の高い証拠であるとNASAの研究者は考えている。
生命の発生にはいくつかの要素が必要であると考えられており、その中には、液体の状態の水、安定した熱源が含まれる。しかし、地球以外の天体に液体の水が存在するというこれまでの証拠は、岩石などのデータの分析を基にした、状況的あるいは間接的なものでしかなかった。
カッシーニが撮影した高解像度画像には、エンケラドスの南極に、氷の粒子や水蒸気が間欠泉のように噴出する様子が映っていた。画像は実際に液体の水を示すものではないが、科学者は、この氷と水蒸気が地下の地表近くにある水源から出ていると考えている。
【文献】
Porco, C.C., et al.: Cassini Observes the Active South Pole of Enceladus. Science 311: 1393 - 1401. (2006) [DOI: 10.1126/science.1123013]
上記情報を記載したNASAのサイトは下記。
http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/multimedia/pia07798.html
2006/02/13 ニューギニアで鳥やカエルなど新種の発見
ニューギニア島西部で、新種のミツスイという小型の鳥やカエル20種、4種のチョウ、5種類のヤシなど新種の植物など貴重な生物がすむ「未知の生物の楽園」をインドネシアやアメリカなどの国際チームが発見したと発表した。
環境保護団体コンサベーション・インターナショナル(Conservation
International)のチームは、現地は人がほとんど足を踏み入れたことがないインドネシア・パプア州(ニューギニア島西部)のフォジャ山脈を調査した。その地は、森林が百万ヘクタール以上も広がる秘境で、ゴクラクチョウの仲間やキノボリカンガルーの一種など希少種の生息も確認された。
ニューギニア島で1939年以来の新種の鳥の発見となったミツスイは、目の周りが鮮やかなオレンジ色をしている。また、絶滅の恐れが極めて高く、これまでパプアニューギニアのたった1つの山でしか知られていなかった大型哺乳類のキノボリカンガルーの仲間も見つかった。
コンサベーション・インターナショナル日本によるプレスリリースは下記のサイトで読める。新種のミツスイの写真が見られる。
http://www.conservation.or.jp/Newsroom/Press_Release/2006_02/FojaMtn.htm
関連サイト「Mysterious Bird of Paradise: Lost and Found」は下記。
http://www.conservation.org/xp/frontlines/species/02070601.xml
ミツスイの仲間写真は下記サイト。
http://www.planktonik.com/museum/ja/birds/f_honeyeaters.html
キノボリカンガルーの写真は下記サイト
http://www.petpet.ne.jp/excite/mame/detail.asp?id=192&page=14
2006/02/06 怒りはけがを誘発
怒りは怪我のリスクを上げる。特に、男性で。救急治療室で治療を受けた2,000人以上の患者を対象に怒りとけがとの関係を調べた結果、怒りはけがのリスクを高めるが分かった。
転落してけが、車の事故、および他の事故について3つの病院で治療を受けた男女を対象に、けがをした24時間以内に怒っていたかそうでないかについて調べた。
その結果、けがの前に患者の怒りが前日より高いとけがになるリスクが高かった。特に、強い怒りと敵意を持つ男性では、けがのリスクが7倍に高まった。女性では、極端な怒りと敵意だけが、けがのリスクを高めたが男性ほどではなかった。
従って、けがのリスクを防ぐにはセルフ・コントロールが大切である。多くの人が、車のハンドルを握って腹をたてている場合の事故のリスクを知っている。怒りは健康に良くない。
【文献】
Vinson, D.C. and Arelli, V.: State Anger and the Risk of Injury: A Case-Control and Case-Crossover Study. Ann. Fam. Med. 4: 63-68. (2006)
2006/02/05 ヒトとサルの大きな違い
ヒトの染色体の第8染色体の中に、チンパンジーと比べて遺伝的な相違が大きい領域があることが科学雑誌「ネイチャー」に発表された。
ヒトとチンパンジーでは遺伝子全体で1.2%の違いがあるが、その割合は染色体ごとに異なる。そこで、研究チームは第8染色体について検討したところ、染色体の端に近い部分で、チンパンジーと大きく相違する領域を見いだした。この領域では平均で2.1%の違いがあり、部分的には3.2%も違うことが分かった。
この領域には脳の大きさに関連する遺伝子や、免疫に関連する遺伝子が含まれていると考えられ、ヒトに進化したのはこの領域の大きな変化が関与したのではないかと示唆している。
【文献】
Nusbaum, C., et al.: DNA sequence and analysis of human chromosome 8. Nature 439: 331-335. (2006) [doi: 10.1038/nature04406]
2006/01/31 耳あかのタイプは1塩基の違いで決まる
人間の耳あかにはパサパサした「乾型」と脂肪分でネットリとした「湿型」の2つのタイプがあるが、そのどちらかは1つの塩基で決まることが分かったと長崎大の研究者らが発表した。
耳あかの乾湿は遺伝によることが分かっていたが、具体的な遺伝子は不明だった。日本人は7割以上が乾型だが、白人や黒人は97~99%が湿型など、民族で違いが大きいことも知られていた。
長崎大の吉浦孝一郎助教授らは、長崎県在住の日本人126人の耳あかの型を調査した。同時に「ABCC11」と呼ばれる遺伝子の特定の部分が「アデニン」(A)という塩基でできているか、グアニン(G)でできているかを分析した。
乾型は88人おり、うち87人が、父母の両方から「A」でできた遺伝子を受け継いでいる「AA」型に分類された。湿型は38人で、全員が父母の片方または両方から「G」を受け継いだ「GA」型か「GG」型だった。
以上の結果から耳あかの乾湿を決めるのは、父母のどちらかから「G」を受け継ぐと、耳の中で脂肪分が分泌されて耳あかが湿型になると結論づけた。
1人だけ、「GAなのに乾型の人がいたが、この人の遺伝子は一部が欠けており、脂肪分を分泌する働きが失われていると考えられた。
さらに詳しく遺伝子を分析し、考古学の研究と合わせると、この遺伝子はもともと「G」型が一般的だったが、約2万年前にシベリアなど北東アジアに「A」型に突然変異した人が1人現れ、その子孫が世界に広がったと示唆している。
2006/01/25 植物がメタンを放出
陸上の植物が大量のメタンを大気中に放出していると、ドイツのマックス・プランク研究所のグループが科学雑誌Natureに発表した。この予想外の発見が確かなものだとわかれば、温室ガスの収支とメタン供給源の研究の両方に大きな影響を与える。
メタンは主要な温室効果ガスの1つであり、産業革命以前と比較して大気中濃度がほぼ3倍に上昇している。このガスは大気の酸化的化学反応で中心的な役割を果たし、成層圏のオゾン量および水蒸気量に影響を及ぼしている。
今まで、大気中のメタンは、大部分が無酸素的環境における生物学的過程から生ずると考えられていた。ところが、今回の発表では、有酸素条件下で陸上植物がメタンを放出することが示された。
今回得られた測定値が一般的な数値であると仮定し地球全体に換算すると、生きている植物は62~236 Tg yr-1、落葉落枝などは1~7 Tg yr-1もの規模のメタン源になるものと推定される(1 Tg=1012g)。
今回見いだされたメタン供給源は地球のメタン収支に重要な意味を持ち、過去の気候変化に天然のメタン供給源が果たしてきた役割の再検討が必要になると、研究者は考えている。
【文献】
Keppler, F., et al.: Methane emissions from terrestrial plants under aerobic conditions. Nature 439: 187-191. (2006) [doi: 10.1038/nature04420]
2006/01/24 「だいち」打ち上げ成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は平成18年1月24日10時33分(日本時間)に、種子島宇宙センターから陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)を搭載したH-IIAロケット8号機を打ち上げた。8号機は正常に飛行し、打上げ約16分30秒後に「だいち」を分離したことを確認したと発表した。
種子島宇宙センター総合指令棟(RCC)からの打ち上げ当日の速報は下記サイト
http://h2a.jaxa.jp/rcc/index_j.html
打ち上げの画像は下記サイト
http://h2a.jaxa.jp/live_j.html
2006/01/23 今日の火星
火星探索車「スピリット」、「オポチュニティー」から送られてきた最新画像は下記のサイトで見られる。
http://marsrovers.jpl.nasa.gov/home/index.html
「スピリット」からの360度は下記の画像では、「スピリット」の車のあとが2本真っ直ぐに続いている。
http://marsrovers.jpl.nasa.gov/gallery/press/spirit/20051205a/Summit_360_L2456atc-A586R1_br.jpg
2006/01/22 地底410kmの含水マグマの安定性
岩石がとけて液体となったマグマは、周囲に比べて密度が小さいため、上昇して、地上で噴出する。マグマだまりが存在するのは、地下数十キロ程度の深さまでと考えられてきた。ところが、地震波による解析で約410kmの深さにも液体らしい存在が明らかにされた。
これまで、水を含まないケイ酸塩マグマについては高圧下で測定が行われており、まわりの固体よりも密度が大きくなるため、深部に留まり得ることがわかっている。しかし、この深さで岩石がとけるには2000℃の高温が必要だが、実際には1700℃程度しかない。そこで、東北大の大谷栄治教授らの研究グループは、水を含むと岩石のとけ始める温度が下がることに注目し、高温高圧を岩石にかけてマグマを作り、マグマに含まれる水の量を変えて密度を測定したところ、6.7%の水を含んだ状態が、周辺の岩石と重さが釣り合い、浮上せずにその場にとどまることを見つけた。
【文献】
Sakamaki, T., et al.: Stability of hydrous melt at the base of the Earth's upper mantle. Nature 439: 192-194. (2006) [doi: 10.1038/nature04352]
▽東北大学地球惑星物性学分野 大谷研究室のホームページは下記。
http://www.ganko.tohoku.ac.jp/bussei/
2006/01/21 ダイオキシンを飲み込む細菌
ダイオキシンの分解能力を持つ細菌「RW1」に、別の細菌が持つ巨大物質を丸のみするスーパーチャンネル(体腔)を移植し、ダイオキシンを早く分解する新たな細菌の生成に、京都大学の村田幸作教授らの研究グループが世界で初めて成功した。
村田教授らは1995年、分子量が大きな物質でも細胞内に取り込める、口にあたるスーパーチャンネル(体腔)を持つ細菌「A1」を土壌から発見していた。スーパーチャンネルは細胞の膜上にあり外の物質を飲み込む口の役割をしている。そこで、スーパーチャンネルの遺伝子を同属の「RW1」に組み込むと、同じように巨大なスーパーチャンネルが開いた。体腔を移植した「RW1」と通常の「RW1」でダイオキシン類の分解速度を比較すると、移植した方が3分の1から半分の時間で分解した。
【文献】
Aso, Y., et al.: Engineered membrane superchannel improves bioremediation potential of dioxin-degrading bacteria. Nature Biotech. (online: 15 January 2006) [doi: 10.1038/nbt1181]
2006/01/19 無人探査機「スターダスト」のカプセル開封
アメリカ・航空宇宙局(NASA)は、無人探査機「スターダスト」が地球に持ち帰ったカプセル開封の模様や彗星の塵の写真を公開した。宇宙の塵は「エアロゲル」と呼ばれる物質を詰めた採取器に捕らえられていた。
「予想を上回る大成功だ。大きなものから小さなものまで、たくさんの塵が確認できる」と実験責任者のブラウンリー教授は述べている。
カプセルのなかの採取器は金属枠で2cm×4cmの130区画に分けられ、細かい穴が無数にあいたシリカ(二酸化ケイ素)素材のエアロゲルが詰められている。顕微鏡でしか見えない微小サイズも含めると、100万粒以上の塵が捕らえている可能性があるという。
下記のサイトでカプセル開封の模様や宇宙の塵を見ることができる。
http://www.nasa.gov/mission_pages/stardust/main/index.html
研究者の喜びのVサインもお見逃しなく。
2006/01/18 今日はスコットが南極点に到達した日
今夜は風もなく晴れており、星が無数に見える。1912年(大正元年)のこの日、スコット(Robert Falcon Scott)ら5人が南極点に達した。しかし、スコット隊より21日早くアムンゼン隊が南極点に達していた。
南極観測船「宗谷」が昭和基地との間を往復していた当時、小学生で夢は南極探検隊員になりたいだった。その頃、スコットの伝記に出会った。そして、アムンゼンではなくスコットに強く惹かれた。スコットが、南極点に向かう間も気象や地質の研究を行っていたとの記述と、そのためにアムンゼンに後れをとったのだとの解説が心の中に残った。漠然とではあるが科学者とは何かを考えた最初のきっかけだったかもしれない。
その後、ロンドンに行く機会があり、大英博物館で本物のスコットの日記の最後の頁を読んだ。ニュージーランドのオークランドでは、スコットらが南極に建てた小屋のレプリカを訪ねた。レプリカの元となった小屋は今も南極に建っているそうである。機会があれば行ってみたい。
スコット隊は天候に恵まれず、食料などを保存しておいた小屋まであと18kmの地点で全滅した。
スコットの日記の最後を記しておこう。
We shall stick it out to the end, but we are getting weaker, of course, and the end cannot be far. It seems a pity, but I do not think I can write more. Last entry. For God's sake look after our people.
(我々は最後までがんばるつもりだが、身体が弱りつつある。だから、最後の時も、そう遠くはないだろう。残念だが、これ以上書き続けることができない。最後に、我々の家族のことを頼みます。)
2006/01/16 ネコ科動物の進化
アメリカ国立がん研究所の研究チームは、37種の遺伝情報や化石などを詳細に分析した結果を科学研究雑誌サイエンスに発表した。ネコ科動物は約1080万年前、最初アジアでヒョウ類が分かれた後、約940万年前にアジアのボルネオヤマネコ類が分岐、約850万年前にはアフリカのカラカル類、約800万年前には中南米のオセロット類が分かれ、各大陸に定着した。
その後、南北の米大陸からユーラシア大陸に戻る動きもあり、最終的に約620万年前にアジアのベンガルヤマネコ類とペットにされるイエネコ類が分かれた。その後、イエネコは約460万年の間で8つの主要な系統に進化した可能性が高いとしている。
【文献】
Johnson, W.E., et al.: The Late Miocene Radiation of Modern Felidae: A Genetic Assessment. Science 311: 73-77. (2006) [DOI: 10.1126/science.1122277]
2006/01/15 DNAとタンパク質の基本成分が宇宙に
アメリカ航空宇宙局(NASA)の研究グループは、スピッツァー宇宙望遠鏡の観察により、375光年はなれたIRS46と呼ばれる地球型の若い星の周りにDNAとタンパク質を作る基本成分である有機ガスを発見したと報告した。
IRS46星の周りのガスを赤外線などで分析した結果、有機化合物であるアセチレンとシアン化水素、二酸化炭素が見いだされた。これらのガスは、数十億年前の原始の地球の大気と同じ成分と考えられている。
また、今までに試験管内でシアン化水素とアセチレンに水を一緒に加えて反応させるとタンパク質の構成成分であるアミノ酸やDNAを構成するアデニンと呼ばれるプリン塩基が作られることが知られている。
【文献】
Lahuis, F., et al.: Hot Organic Molecules toward a Young Low-Mass Star: A Look at Inner Disk Chemistry. Astrophysic. J. lett., 636: 145-148. (2006)
2006/01/14 火星の探検は今も続いている
火星に着陸してから2年、今も火星を2台の無人探査車は走り続ける。アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査車は、当初は3ヵ月程度でその役割を終えると予想されていた。ところが、今も走り続けており、探査車2台の移動距離は合計で12kmを超えた。保証期間をとっくに過ぎた2台の探査車は寿命を超えて持ちこたえている。
1つ目の探査車、「スピリット」は2004年1月3日(アメリカ時間)に火星に降り立った。次いで「オポチュニティー」も1月24日に着陸した。スピリットが降りたのは火星の赤道の南にある直径約145kmの窪地、グセブ・クレーターで、オポチュニティーは反対側のメリディアニ平原に着陸した。
それから2年間、スピリットは約6kmを走破し、7万点もの画像を送信した。そのなかには探査車自体を撮影したものや、赤茶けた火星の表面を収めたパノラマ写真などもある。一方、オポチュニティーの走行距離は約6.4km、撮影した画像は5万8千点以上になる。
オポチュニティーは、はるか昔に火星の表面か表面近くに水があった証拠を見つけた。これは生命が存在する可能性を示唆するものである。また、過去には気候がさらに厳しかったことを示す証拠も見つけた。そのために火星での生命誕生が妨げられた可能性もある。
オポチュニティーとスピリットの写した火星の画像は下記のサイトで見られる。写真を見ていると月とは異なり、火星は地球によく似ているように思える。そして、写真を拡大してみるとなんだか不思議な感覚になる。
火星には強風が吹いているとのことであるが、風の音がするのだろうか。一人で火星の表面にいたらどう感じるのだろうか。地球と同じ風景に孤独感を感じないのだろうかなどと想像が広がる。
水のあった証拠を発見したオポチュニティーの画像は下記で見られる。
http://athena.cornell.edu/the_mission/ins_pancam_frommars_opp.html
岩場に着陸したスピリットの画像は下記で見られる。
http://athena.cornell.edu/the_mission/ins_pancam_frommars.html
2006/01/11 冥王星の惑星カロンの物理的特性
アメリカを中心とした国際研究グループ(1)とフランスを中心とした国際研究グループ(2)が、別々に科学研究雑誌ネーチャーに冥王星の惑星カロンの物理的な特性を明らかにした。これまでの計測により、両天体の質量の値は絞り込まれてきたが、半径や密度は不確実なままであった。
アメリカのグループは、惑星カロンの平均半径は606±8km、密度は1.72±0.15g・cm-3と発表した。また、有意な大気は検出されないとしている。そして、グループは、冥王星に天体が衝突し、吹き飛ばされたちりが集まってカロンができたとする可能性が高いとしている。
フランスのグループは、惑星カロンの平均半径は 603.6±1.4km、密度は1.71±0.08g ・cm-3とアメリカのグループとほぼ同じ結果を明らかにしている。
同じデータを用いて別々にかつ同時に、そして同じ雑誌にほぼ同じ内容が発表されたのは珍しいことではないかと思う。
【文献】
1) Gulbis, A.A.S., et al.: Charon's radius and atmospheric constraints from observations of a stellar occultation. Nature 439: 48-51. (2006) [doi: 10.1038/nature04276)
2) Sicardy, B., et al.: Charon's size and an upper limit on its atmosphere from a stellar occultation. Nature 439: 52-54. (2006) [doi: 10.1038/nature04351]
世界自然保護基金(WWF)は、インドネシア・ボルネオ島のカプアス川の湿地帯でカメレオンのように体の色を変える新種のヘビを発見したと発表した。体の色を変えるヘビは世界的に珍しいという。
体長50cmほどの毒蛇で、通常は赤褐色だが、白色に変化するが、どうして色が変わるかは分からないとしている。このヘビは新種と確認され、カプアス・マッド・スネーク(Kapuas Mud Snake)と名付けられ、科学研究雑誌に掲載された。
WWFによる記者発表は下記のサイトで読める。
http://www.wwf.or.jp/news/press/2006/p06062701.htm
【文献】
Murphy, J. C. et al.: A New Species Of Enhydris (Serpentes: Colubridae: Homalopsinae) From The Kapuas River System, West Kalimantan, Indonesia. Raff. Bull. Zoo. 53: 271-275. (2005)
2006/06/26 ロボットのW杯でチームオオサカが3連覇
ドイツ・ブレーメンで開かれていたロボットによるサッカーの世界大会「ロボカップ」(6月14-18日)で、大阪大学と関西の中小企業でつくる「チームオオサカ」が制作したヴィジオン・トライズがヒューマノイドリーグで優勝し、2004年のリスボン大会、2005年の大阪大会での優勝に続く3連覇を達成した。2位はドイツのTeam NimbRoであった。
チームオオサカの優勝のプレスリリースは下記サイト。
http://www.robo-labo.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=114
2006年のW杯の試合結果は下記サイト。
http://www.humanoidsoccer.org/results_all.html
第2位になったドイツのNimbRoチームのサイト。ここではチームオオサカとの決勝戦の様子などがビデオで見られる。
http://www.nimbro.net/
2006/06/18 水陸両生鳥類の祖先の化石見つかる
中国北西部の白亜紀前期(1億1500万年~1億500万年前)の地層から、現代の水陸両生鳥類の祖先にあたる真鳥類の化石(Gansus yumenensis)が見つかったと中国とアメリカの国際研究チームが科学研究雑誌Scienceに発表した。
見つかったのは5羽の化石で、頭部を除くほぼ全身の骨格が確認された。体長は約30cm、胸骨の特徴から現代の鳥類の直接の祖先である真鳥類の仲間とみられ、真鳥類の化石の中でも最も古い時代のものと考えられている。水かきや飛ぶのに適した風切り羽を持っていた。
鳥類は、陸上で生活する恐竜から進化したと考えられているが、現代の鳥につながる真鳥類は、ごく初期の段階から水辺の生活に適応する進化をしていたと推測されている。
【文献】
You, H. et al.: A Nearly Modern Amphibious Bird from the Early Cretaceous of Northwestern China. Science 312: 1640-1643. (2006) [DOI: 10.1126/science.1126377]
2006/06/14 W杯使用の新サッカーボールは試合結果を変える!?
ワールドカップで初めて使用される新しいサッカーボールは試合結果に影響を与えるかも知れないとイギリス・Bath大学の研究者が述べている。
従来のサッカーボールは五角形と六角形の32枚のパーツを糸で縫い合わせていたが、新サッカーボールはパーツを14枚に減らし接着剤を熱で溶かして張り合わせる独特の製造法を採用したため、継ぎ目の凹凸が最小限になり、従来より球形に近く、野球のボールのようになった。
そのため、ゆっくりした回転でキックされるとホールは不安定となり予測できない軌道を描きゴールキーパーがボールをとらえにくくなると予想されている。例えば野球のナックルのような動きになる。ワールドカップのゴール前のフリーキックで、従来とは異なるサッカーボールの軌道を見ることができるかも知れないと研究者は述べている。
イギリスのゴールキーパー、ロビンソン選手やドイツのレーマン選手もこうしたサッカーボールの今までと違った動きについて発言しているとのこと。
2006/06/11 科学技術振興機構のサイエンスポータル
科学技術振興機構(JST)が、科学に関する400以上のサイトにつながる「サイエンスポータル」を開設した。サイエンスポータルは、毎日更新する「ニュース」、週1回更新する「特集」、随時更新する「情報」から構成されている。一般向けと研究者や理工系学生向けとがあり、我が国の科学技術の今が分かる。
サイエンスポータルのサイトは下記。
http://scienceportal.jp/
2006/06/06 冬眠ホルモンの発見
三菱化学生命科学研究所の近藤宣昭氏らの研究グループは、シマリスの血液中に存在する冬眠特異的タンパク質(HP)複合体が、冬眠をコントロールするホルモン候補因子であることを世界で初めて発見した。この冬眠特異的タンパク質複合体は、脳で冬眠を制御すると考えられている。
冬眠は、体温が低下しても死なないように心臓などを強化し、病原体の感染や発がん物質への抵抗力が高まることが知られていた。この冬眠特異的タンパク質(HP)複合体は、人間にはないが、研究が進めば、体温を下げ脳へのダメージを減らす脳低温療法や、長期の宇宙旅行への応用などが期待されている。
【文献】
Kondo, N., et al.: Circannual Control of Hibernation by HP Complex in the Brain. Cell 125: 161-172. (2006)
SFの世界の話が身近に感じられる研究成果である。今後の研究が楽しみである。
2006/06/05 5500万年前の北極海は亜熱帯レベル
約5500万年前の北極の海面温度は23℃で亜熱帯レベルの暖かさだったが、約4500万年前から氷におおわれ始めたと国際共同チームが発表した。
国際共同チームに参加している国は20カ国で、北極海のロモノソフ海嶺(かいれい)と呼ばれる海底山脈を地下430メートルまで掘削し、堆積(たいせき)物を採取した。
堆積物を解析しした結果、当時の海面温度は23℃で亜熱帯レベルの暖かさで、約4900万年前には淡水で生きる浮草が北極海をおおっていたこともわかった。
その後、気温が下がり、氷で被われるようになったのは、氷が運んだと思われる石が見つかった約4500万年前と推定された。
約5500万年前は大気中の二酸化炭素濃度が上がり、温暖だったと推定されていたが、今回の堆積物の解析で、直接的な証明がなされた。
【文献】
Moran, K. et al.: The Cenozoic palaeoenvironment of the Arctic Ocean. Nature 441: 601-605. (2006) [doi:10.1038/nature04800]
2006/06/04 世界最古の作物はイチジク
約1万1000年前のヨルダンの遺跡から見つかったイチジクが、小麦などよりも約1000年古く、人類最古の作物である可能性が高いとハーバード大などの研究チームが発表した。
これまで、イチジクの栽培は約6500年前とされていたが、新石器時代初期の遺跡で出土した9つのイチジクの実を調べたところ、野生種と異なり、虫を媒介とした受粉がなくても実を付ける変種で、実も甘くて落ちにくいものだったことが分かった。
この変種は種を作らないため、自然のままでは繁殖できず、人間が枝を切り取って植えるなどの方法で増やす必要があるため、当時の人々がこうした変種の性質を理解し、作物として栽培していたと結論付けた。
【文献】
Kislev, M. et al.: Early Domesticated Fig in the Jordan Valley. Science 312: 1372-1374. (2006)
果物と人との関係はかなり昔から密接であったことが分かる。
2006/05/27 科学ジャーナリスト大賞に毎日新聞の元村記者
優れた科学ジャーナリスト活動を顕彰する「第1回科学ジャーナリスト賞」の受賞者5人が発表された。5人の中から「大賞」に、毎日新聞科学環境部の元村有希子記者が選ばれた。受賞理由は「ブログを含む『理系白書』の報道」である。
また、毎日新聞大阪本社社会部の大島秀利記者の「アスベスト(石綿)被害と救済に関する報道」、フリーカメラマン、中村梧郎氏の「ベトナム戦争の枯葉剤被害を追及する報道姿勢」、青山学院大教授、福岡伸一氏の「分子生物学者として斬新な視点からBSEを分析し、一般向け科学書にまとめ」、朝日放送アスベスト取材班代表、石高健次氏の「アスベスト問題に取り組み、住民被害の実態と救済を訴えた報道」が受賞した。
同賞は「日本科学技術ジャーナリスト会議」が、創立10周年を記念して新設。過去1年間の報道や著作、博物館での活動など、科学技術を社会に伝える仕事に対して贈られる。
新聞、テレビなどの報道で、科学ニュースの枠が少ないように思う。こうした賞を通して正確な科学技術が広く社会に伝わったらと思う。
2006/05/26 HIVの起源はカメルーンのチンパンジー
エイズウイルス1型(HIV1)は、アフリカ・カメルーンに生息している野生のチンパンジー(Pan troglodytes troglodytes)が起源となっていることを、アメリカ・アラバマ大などの研究チームが科学研究雑誌Scienceに発表した。
HIV1の起源をめぐっては、遺伝子のよく似たサルエイズウイルス(SIV)がこの地域のチンパンジーから見つかっていることから、これまでもチンパンジー説は有力だった。ただ、生息地域が隔絶されていることや、チンパンジーが絶滅の危機にあるなどから研究は進んでいなかった。
カメルーン南部の森林10カ所で採取した446匹分のチンパンジーのふんを分析した結果、これまでに見つかっているSIVのなかで、最もHIV1に近いウイルスを見つけた。
飼育チンパンジーの感染率は低く、野生のチンパンジーの感染実態はよく分かっていなかった。しかし、今回調べたチンパンジーの感染率は30-35%と高率だった。
この研究のユニークな点は、捕獲の難しいチンパンジーのふんの遺伝子を分析したところである。森林でふんを探す作業は大変だったのではないか。
【文献】
Keele, B. F. et al.: Chimpanzee Reservoirs of Pandemic and Nonpandemic HIV-1. Science Online May 25 (2006) [doi: 10.1126/science.1126531]
2006/05/15 バンドウイルカの口笛は名前
バンドウイルカ(Tursiops truncatus)は、お互いに「名前」を告げて意思を伝え合っていることを、動物コミュニケーションの研究をしているチームが実験観察で確かめた。人間以外の動物で、名前のような「身元情報」を伝え合っている動物はほかにいない。
バンドウイルカは、自分に特有の「口笛」のようなかん高い声を発し合い、仲間であることを確認している。相手の口笛をまねしたり、飼育下で物体を指し示す新しい口笛を覚えたりするため、口笛は名前として使われているのではないかと考えられていた。
そこで、研究チームは、単に仲間の声に反応するのか、声が伝える内容に反応するのかを見極めるため、口笛から声の特徴を電気的に取り去り、海中のスピーカーから流した。
その結果、14頭のうち9頭は、なじみの口笛から作った音に極めて敏感に反応し、スピーカーの方をたびたび振り向いた。このことから声ではなく内容に反応していることがわかり、どのイルカが発しようと口笛は「名前」として使われていると判断できた。
【文献】
Janik, V.M. et al.: Signature whistle shape conveys identity information to bottlenose dolphins. Proc. Natl. Acad. Sci. USA online May 12 (2006) [doi: 10.1073/pnas.0509918103]
2006/05/14 プラナリアの研究で国際学生科学賞受賞
アメリカ・インディアナ州で開かれた国際学生科学フェア(ISEF)で、埼玉県立浦和第一女子高3年の下山せいらさん(17)が動物学部門のベストカテゴリー賞に次いで1等賞に選ばれた。テーマは「Glycogen Induces Extension of Pharynx During Feeding in Planarians」である。
下記のサイトに表彰者のリストが掲載されている。
http://www.sciserv.org/isef/results/grnd2006.pdf
2006/05/09 栽培小麦の歴史はゆっくりと
シリア、トルコ国境のユーフラテス川沿いで約1万年前に一気に進んだとされる農耕の開始が、10,200年前ごろから3500年以上かけてゆっくりと進んでいたのではないかと報告された。
小麦栽培発祥の地とされるシリア北部からトルコ南部にかけての4つの遺跡(10,200~6500年前)で出土した小麦を調べた今回の結果と過去に調べられた2つの遺跡(9,300~7,500年前)とから明らかになった。
小麦を栽培し、収穫後に脱穀すると小穂に人為的な傷跡が残ることに着目して野生種と栽培種を区別して分析した。小穂9844点のうち、傷跡の有無が判別できた804点を分析し、遺跡ごとに比較した。
新石器革命の時期に当たる10,200年前に食べていた小麦はすべて野生種であった。9250年前になると栽培種が11%になり、7500年前になると36%に増加し、6500年前では65%となった。
農耕は1万年ほど前、氷河期が終わった後に、再度一時的に寒くなった気候変動によって一気に始まったとされてきた。しかし、今回の結果から小麦の栽培は、時間をかけてゆっくりと浸透していったと考えられる。
【文献】
Tanno, K. and Willcox, G.: How Fast Was Wild Wheat Domesticated? Science 311: 1886. (2006)
2006/05/01 次世代高温耐性新合金
従来より約100℃高い1200℃前後でも強度を維持する新合金の開発に、東北大の研究グループが成功したと科学研究雑誌Scienceに発表した。
従来のニッケルベース超合金のものより高温に対する強度が高いコバルトベース超合金を開発した。開発した新合金は、コバルトにアルミニウムとタングステンで、鋳造後に一定温度で再加熱する方法でできた。この結晶は原子同士の結合が特に強く、加熱しても軟らかくならない特性を持ち、合金全体の硬さを維持できる。 そのため、次世代高温耐性合金として期待されている。
【文献】
Sato, J. et al.: Cobalt-Base High-Temperature Alloys. Science 312: 90-91. (2006)
2006/04/26 有機農法のリンゴ園は環境に優しい
有機農法は、従来の農業より環境に優しいと考えられているが、今回この考えからを支持する研究結果が報告された。
アメリカ・スタンフォード大学の研究チームは、リンゴ園を使って化学肥料(硝酸カルシウム)と有機肥料(鶏糞)、アルファルファについて調べた結果、環境へ与える影響が異なることが分かった。
ワシントン州ヤキマバレーのリンゴ園の地下水の中の硝酸塩レベルを測定したところ、有機肥料とアルファルファを使った場合と比較して化学肥料を施肥した地区では硝酸塩の濃度が4.4~4.6倍高いことが分かった。
また、窒素ガスの排出について測定したところ、有機肥料とアルファルファの区では無害な窒素ガスが多く排出することが分かった。
【文献】
Kramer, S.B., et al.: Reduced nitrate leaching and enhanced denitrifier activity and efficiency in organically fertilized soils. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 103: 4522-4527. (2006) [doi: 10.1073/pnas.0600359103]
2006/04/17 一家に1枚ヒトゲノムマップ
人間の全遺伝情報であるヒトゲノムを、一般向けに解説した「一家に1枚ヒトゲノムマップ」を文部科学省が作成した。4月17日から始まる科学技術週間にあわせて全国の主要科学館等を通じて希望者に配布する(先着順で約5万枚)。また、全国の小、中、高校に計4万枚を配る。その他、ホームページ上からダウンロードできるPDF版も用意されている(用紙サイズA3,A2)。
ヒトゲノムは約2万6800個の遺伝子を含む。マップにはその約1%を記載し、「コラーゲンをつくる遺伝子」や「お酒への強さを決める遺伝子」など身近なものをイラスト入りで解説してある。
PDF版のダウンロードは下記のサイトからできる。
http://stw.mext.go.jp/20060414/index.html
2006/04/14 植物内部の水分を調節する遺伝子の発見
植物内部の水分を調節するホルモンの量を変える遺伝子を見つけと理化学研究所のグループが発表した。
植物は、葉の裏にある「気孔」が開閉し、水分の量を調節している。この気孔の開閉を調節しているのがアブシジン酸という植物ホルモンである。周囲が乾燥すると、アブシジン酸が合成されて量が増え、気孔が閉じて植物体内の水分が保たれる。この植物ホルモンがつくられる仕組みはわかっていたが、量の調節機構は分からなかった。
そこで、シロイヌナズナの遺伝子CYP707A3を改変し、アブシジン酸の量を通常の3分の1から2倍まで変えたところ、シロイヌナズナはしおれたり、葉をピンと張ったりした。
この実験から、この遺伝子CYP707A3がアブシジン酸の分解に働き、水分を調整していると考えられた。
【文献】
Umezawa, T. et al.: CYP707A3, a major ABA 8'-hydroxylase involved in dehydration and rehydration response in Arabidopsis thaliana. Plant J. 46:171-182. (2006) [doi: 10.1111/j.1365-313X.2006.02683.x]
2006/04/13 可視光で水から水素を取り出す
目に見える光(可視光)をあてると、水を分解して水素を発生する新しい光触媒について東京大学、長岡工科大学などの研究グループが見つけた。水素は、燃やしても水しか出ないクリーンエネルギーである。
光触媒とは、光があたると化学反応を促進する物質のことで、水を水素と酸素に分解できる物質も知られていたが、紫外線だけに反応するものが多かった。
水素製造に使うには、太陽光に多く含まれる可視光を有効利用することが欠かせない。そこで、研究グループは、窒化ガリウムと酸化亜鉛をまぜた黄色い粉末に助触媒を加えると、可視光にも反応する光触媒になり、可視光による水の分解効率が従来より約10倍高くなることを発見した。
太陽光と水から水素を大量に作るという化学者の長年の夢に道を開く成果である。
【文献】
Maeda, K., et al.: Photocatalyst releasing hydrogen from water. Nature 440: 295. (2006) [doi: 10.1038/440295a]
2006/04/11 硫化鉄のうろこを持つ巻き貝
よろいのような硫化鉄のうろこを持つ巻き貝「スケーリーフット」の採取と飼育実験に、新江ノ島水族館などの研究グループが成功した。この貝はインド洋深海底でしか生息が確認されていない。
研究グループは、2006年2月に有人潜水調査船「しんかい6500」により、硫化鉄の鱗を持った巻貝Crysomallon(俗名:スケーリーフット(「鱗をまとった足」の意))を深海底の熱水活動環境において観察し、さらに初めて船上に持ち帰っての水槽飼育による観察を行うことに成功した。うろこは腹足部を覆い、硬さは人間の歯の倍程度で、外敵から身を守るためと考えられている。
新江ノ島水族館では深海コーナーで展示を行っている。
巻き貝「スケーリーフット」の写真は下記のサイトで見られる。
写真1
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/0603/0330/photo1.jpg
写真2
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/0603/0330/photo2.jpg
新江ノ島水族館のホームページは下記。
http://www.enosui.com/news/detail/2006tenji_06.html
2006/04/06 35億年前にメタンつくる微生物
35億年前にメタンをつくる微生物が存在したと東京工業大の研究グループが科学雑誌ネイチャーに発表した。これまで考えられていた約28億年前という説を約7億年さかのぼった。
メタン生成菌は、最も原始的な生命体の1つであると思われるが、それが地球上に初めて現れた時期ははっきりしていない。始生代(25億年前以前)には、メタン生成菌が温室効果ガスであるメタンを十分な量供給し、その時代の低い太陽光度による極寒の条件を軽減することにより、気候を調節するうえで重要だった可能性がある。
研究グループは、オーストラリア西部の35億年前(34億6000万年以上前)の岩石中にとりこまれた泡を解析し、水や二酸化炭素のほか、微量なメタンを見つけた。メタンに含まれる炭素を分析した結果、これは生物がつくったものだとわかった。
炭素には、質量が異なる2種類があり、噴火などでもたらされたメタンと、生物の活動によってできたものでは、2種類の比が異なっているためである。
地球生命の誕生は約38億年前とされるが、初期の生物がどのような活動をしていたのかはほとんどわかってい。今回の発見は、初期の微生物が大気と気候に与える影響の解明に役立つ成果である。
【文献】
Ueno, Y., et al.: Evidence from fluid inclusions for microbial methanogenesis in the early Archaean era. Nature 440: 516-519. (2006) [doi: 10.1038/nature04584]
2006/03/18 土星の衛星「エンケラドス」に間欠泉
土星探査機「カッシーニ」が、氷で覆われた土星の衛星の一つ「エンケラドス」に、イエローストーン公園の間欠泉のようなものがあることが確認された。そのため、この衛星に生命体が存在するかもしれないという期待が高まっている。
この画像は、液体の状態の水が地球外に存在する可能性を示しているこれまでで最も確度の高い証拠であるとNASAの研究者は考えている。
生命の発生にはいくつかの要素が必要であると考えられており、その中には、液体の状態の水、安定した熱源が含まれる。しかし、地球以外の天体に液体の水が存在するというこれまでの証拠は、岩石などのデータの分析を基にした、状況的あるいは間接的なものでしかなかった。
カッシーニが撮影した高解像度画像には、エンケラドスの南極に、氷の粒子や水蒸気が間欠泉のように噴出する様子が映っていた。画像は実際に液体の水を示すものではないが、科学者は、この氷と水蒸気が地下の地表近くにある水源から出ていると考えている。
【文献】
Porco, C.C., et al.: Cassini Observes the Active South Pole of Enceladus. Science 311: 1393 - 1401. (2006) [DOI: 10.1126/science.1123013]
上記情報を記載したNASAのサイトは下記。
http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/multimedia/pia07798.html
2006/02/13 ニューギニアで鳥やカエルなど新種の発見
ニューギニア島西部で、新種のミツスイという小型の鳥やカエル20種、4種のチョウ、5種類のヤシなど新種の植物など貴重な生物がすむ「未知の生物の楽園」をインドネシアやアメリカなどの国際チームが発見したと発表した。
環境保護団体コンサベーション・インターナショナル(Conservation
International)のチームは、現地は人がほとんど足を踏み入れたことがないインドネシア・パプア州(ニューギニア島西部)のフォジャ山脈を調査した。その地は、森林が百万ヘクタール以上も広がる秘境で、ゴクラクチョウの仲間やキノボリカンガルーの一種など希少種の生息も確認された。
ニューギニア島で1939年以来の新種の鳥の発見となったミツスイは、目の周りが鮮やかなオレンジ色をしている。また、絶滅の恐れが極めて高く、これまでパプアニューギニアのたった1つの山でしか知られていなかった大型哺乳類のキノボリカンガルーの仲間も見つかった。
コンサベーション・インターナショナル日本によるプレスリリースは下記のサイトで読める。新種のミツスイの写真が見られる。
http://www.conservation.or.jp/Newsroom/Press_Release/2006_02/FojaMtn.htm
関連サイト「Mysterious Bird of Paradise: Lost and Found」は下記。
http://www.conservation.org/xp/frontlines/species/02070601.xml
ミツスイの仲間写真は下記サイト。
http://www.planktonik.com/museum/ja/birds/f_honeyeaters.html
キノボリカンガルーの写真は下記サイト
http://www.petpet.ne.jp/excite/mame/detail.asp?id=192&page=14
2006/02/06 怒りはけがを誘発
怒りは怪我のリスクを上げる。特に、男性で。救急治療室で治療を受けた2,000人以上の患者を対象に怒りとけがとの関係を調べた結果、怒りはけがのリスクを高めるが分かった。
転落してけが、車の事故、および他の事故について3つの病院で治療を受けた男女を対象に、けがをした24時間以内に怒っていたかそうでないかについて調べた。
その結果、けがの前に患者の怒りが前日より高いとけがになるリスクが高かった。特に、強い怒りと敵意を持つ男性では、けがのリスクが7倍に高まった。女性では、極端な怒りと敵意だけが、けがのリスクを高めたが男性ほどではなかった。
従って、けがのリスクを防ぐにはセルフ・コントロールが大切である。多くの人が、車のハンドルを握って腹をたてている場合の事故のリスクを知っている。怒りは健康に良くない。
【文献】
Vinson, D.C. and Arelli, V.: State Anger and the Risk of Injury: A Case-Control and Case-Crossover Study. Ann. Fam. Med. 4: 63-68. (2006)
2006/02/05 ヒトとサルの大きな違い
ヒトの染色体の第8染色体の中に、チンパンジーと比べて遺伝的な相違が大きい領域があることが科学雑誌「ネイチャー」に発表された。
ヒトとチンパンジーでは遺伝子全体で1.2%の違いがあるが、その割合は染色体ごとに異なる。そこで、研究チームは第8染色体について検討したところ、染色体の端に近い部分で、チンパンジーと大きく相違する領域を見いだした。この領域では平均で2.1%の違いがあり、部分的には3.2%も違うことが分かった。
この領域には脳の大きさに関連する遺伝子や、免疫に関連する遺伝子が含まれていると考えられ、ヒトに進化したのはこの領域の大きな変化が関与したのではないかと示唆している。
【文献】
Nusbaum, C., et al.: DNA sequence and analysis of human chromosome 8. Nature 439: 331-335. (2006) [doi: 10.1038/nature04406]
2006/01/31 耳あかのタイプは1塩基の違いで決まる
人間の耳あかにはパサパサした「乾型」と脂肪分でネットリとした「湿型」の2つのタイプがあるが、そのどちらかは1つの塩基で決まることが分かったと長崎大の研究者らが発表した。
耳あかの乾湿は遺伝によることが分かっていたが、具体的な遺伝子は不明だった。日本人は7割以上が乾型だが、白人や黒人は97~99%が湿型など、民族で違いが大きいことも知られていた。
長崎大の吉浦孝一郎助教授らは、長崎県在住の日本人126人の耳あかの型を調査した。同時に「ABCC11」と呼ばれる遺伝子の特定の部分が「アデニン」(A)という塩基でできているか、グアニン(G)でできているかを分析した。
乾型は88人おり、うち87人が、父母の両方から「A」でできた遺伝子を受け継いでいる「AA」型に分類された。湿型は38人で、全員が父母の片方または両方から「G」を受け継いだ「GA」型か「GG」型だった。
以上の結果から耳あかの乾湿を決めるのは、父母のどちらかから「G」を受け継ぐと、耳の中で脂肪分が分泌されて耳あかが湿型になると結論づけた。
1人だけ、「GAなのに乾型の人がいたが、この人の遺伝子は一部が欠けており、脂肪分を分泌する働きが失われていると考えられた。
さらに詳しく遺伝子を分析し、考古学の研究と合わせると、この遺伝子はもともと「G」型が一般的だったが、約2万年前にシベリアなど北東アジアに「A」型に突然変異した人が1人現れ、その子孫が世界に広がったと示唆している。
2006/01/25 植物がメタンを放出
陸上の植物が大量のメタンを大気中に放出していると、ドイツのマックス・プランク研究所のグループが科学雑誌Natureに発表した。この予想外の発見が確かなものだとわかれば、温室ガスの収支とメタン供給源の研究の両方に大きな影響を与える。
メタンは主要な温室効果ガスの1つであり、産業革命以前と比較して大気中濃度がほぼ3倍に上昇している。このガスは大気の酸化的化学反応で中心的な役割を果たし、成層圏のオゾン量および水蒸気量に影響を及ぼしている。
今まで、大気中のメタンは、大部分が無酸素的環境における生物学的過程から生ずると考えられていた。ところが、今回の発表では、有酸素条件下で陸上植物がメタンを放出することが示された。
今回得られた測定値が一般的な数値であると仮定し地球全体に換算すると、生きている植物は62~236 Tg yr-1、落葉落枝などは1~7 Tg yr-1もの規模のメタン源になるものと推定される(1 Tg=1012g)。
今回見いだされたメタン供給源は地球のメタン収支に重要な意味を持ち、過去の気候変化に天然のメタン供給源が果たしてきた役割の再検討が必要になると、研究者は考えている。
【文献】
Keppler, F., et al.: Methane emissions from terrestrial plants under aerobic conditions. Nature 439: 187-191. (2006) [doi: 10.1038/nature04420]
2006/01/24 「だいち」打ち上げ成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は平成18年1月24日10時33分(日本時間)に、種子島宇宙センターから陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)を搭載したH-IIAロケット8号機を打ち上げた。8号機は正常に飛行し、打上げ約16分30秒後に「だいち」を分離したことを確認したと発表した。
種子島宇宙センター総合指令棟(RCC)からの打ち上げ当日の速報は下記サイト
http://h2a.jaxa.jp/rcc/index_j.html
打ち上げの画像は下記サイト
http://h2a.jaxa.jp/live_j.html
2006/01/23 今日の火星
火星探索車「スピリット」、「オポチュニティー」から送られてきた最新画像は下記のサイトで見られる。
http://marsrovers.jpl.nasa.gov/home/index.html
「スピリット」からの360度は下記の画像では、「スピリット」の車のあとが2本真っ直ぐに続いている。
http://marsrovers.jpl.nasa.gov/gallery/press/spirit/20051205a/Summit_360_L2456atc-A586R1_br.jpg
2006/01/22 地底410kmの含水マグマの安定性
岩石がとけて液体となったマグマは、周囲に比べて密度が小さいため、上昇して、地上で噴出する。マグマだまりが存在するのは、地下数十キロ程度の深さまでと考えられてきた。ところが、地震波による解析で約410kmの深さにも液体らしい存在が明らかにされた。
これまで、水を含まないケイ酸塩マグマについては高圧下で測定が行われており、まわりの固体よりも密度が大きくなるため、深部に留まり得ることがわかっている。しかし、この深さで岩石がとけるには2000℃の高温が必要だが、実際には1700℃程度しかない。そこで、東北大の大谷栄治教授らの研究グループは、水を含むと岩石のとけ始める温度が下がることに注目し、高温高圧を岩石にかけてマグマを作り、マグマに含まれる水の量を変えて密度を測定したところ、6.7%の水を含んだ状態が、周辺の岩石と重さが釣り合い、浮上せずにその場にとどまることを見つけた。
【文献】
Sakamaki, T., et al.: Stability of hydrous melt at the base of the Earth's upper mantle. Nature 439: 192-194. (2006) [doi: 10.1038/nature04352]
▽東北大学地球惑星物性学分野 大谷研究室のホームページは下記。
http://www.ganko.tohoku.ac.jp/bussei/
2006/01/21 ダイオキシンを飲み込む細菌
ダイオキシンの分解能力を持つ細菌「RW1」に、別の細菌が持つ巨大物質を丸のみするスーパーチャンネル(体腔)を移植し、ダイオキシンを早く分解する新たな細菌の生成に、京都大学の村田幸作教授らの研究グループが世界で初めて成功した。
村田教授らは1995年、分子量が大きな物質でも細胞内に取り込める、口にあたるスーパーチャンネル(体腔)を持つ細菌「A1」を土壌から発見していた。スーパーチャンネルは細胞の膜上にあり外の物質を飲み込む口の役割をしている。そこで、スーパーチャンネルの遺伝子を同属の「RW1」に組み込むと、同じように巨大なスーパーチャンネルが開いた。体腔を移植した「RW1」と通常の「RW1」でダイオキシン類の分解速度を比較すると、移植した方が3分の1から半分の時間で分解した。
【文献】
Aso, Y., et al.: Engineered membrane superchannel improves bioremediation potential of dioxin-degrading bacteria. Nature Biotech. (online: 15 January 2006) [doi: 10.1038/nbt1181]
2006/01/19 無人探査機「スターダスト」のカプセル開封
アメリカ・航空宇宙局(NASA)は、無人探査機「スターダスト」が地球に持ち帰ったカプセル開封の模様や彗星の塵の写真を公開した。宇宙の塵は「エアロゲル」と呼ばれる物質を詰めた採取器に捕らえられていた。
「予想を上回る大成功だ。大きなものから小さなものまで、たくさんの塵が確認できる」と実験責任者のブラウンリー教授は述べている。
カプセルのなかの採取器は金属枠で2cm×4cmの130区画に分けられ、細かい穴が無数にあいたシリカ(二酸化ケイ素)素材のエアロゲルが詰められている。顕微鏡でしか見えない微小サイズも含めると、100万粒以上の塵が捕らえている可能性があるという。
下記のサイトでカプセル開封の模様や宇宙の塵を見ることができる。
http://www.nasa.gov/mission_pages/stardust/main/index.html
研究者の喜びのVサインもお見逃しなく。
2006/01/18 今日はスコットが南極点に到達した日
今夜は風もなく晴れており、星が無数に見える。1912年(大正元年)のこの日、スコット(Robert Falcon Scott)ら5人が南極点に達した。しかし、スコット隊より21日早くアムンゼン隊が南極点に達していた。
南極観測船「宗谷」が昭和基地との間を往復していた当時、小学生で夢は南極探検隊員になりたいだった。その頃、スコットの伝記に出会った。そして、アムンゼンではなくスコットに強く惹かれた。スコットが、南極点に向かう間も気象や地質の研究を行っていたとの記述と、そのためにアムンゼンに後れをとったのだとの解説が心の中に残った。漠然とではあるが科学者とは何かを考えた最初のきっかけだったかもしれない。
その後、ロンドンに行く機会があり、大英博物館で本物のスコットの日記の最後の頁を読んだ。ニュージーランドのオークランドでは、スコットらが南極に建てた小屋のレプリカを訪ねた。レプリカの元となった小屋は今も南極に建っているそうである。機会があれば行ってみたい。
スコット隊は天候に恵まれず、食料などを保存しておいた小屋まであと18kmの地点で全滅した。
スコットの日記の最後を記しておこう。
We shall stick it out to the end, but we are getting weaker, of course, and the end cannot be far. It seems a pity, but I do not think I can write more. Last entry. For God's sake look after our people.
(我々は最後までがんばるつもりだが、身体が弱りつつある。だから、最後の時も、そう遠くはないだろう。残念だが、これ以上書き続けることができない。最後に、我々の家族のことを頼みます。)
2006/01/16 ネコ科動物の進化
アメリカ国立がん研究所の研究チームは、37種の遺伝情報や化石などを詳細に分析した結果を科学研究雑誌サイエンスに発表した。ネコ科動物は約1080万年前、最初アジアでヒョウ類が分かれた後、約940万年前にアジアのボルネオヤマネコ類が分岐、約850万年前にはアフリカのカラカル類、約800万年前には中南米のオセロット類が分かれ、各大陸に定着した。
その後、南北の米大陸からユーラシア大陸に戻る動きもあり、最終的に約620万年前にアジアのベンガルヤマネコ類とペットにされるイエネコ類が分かれた。その後、イエネコは約460万年の間で8つの主要な系統に進化した可能性が高いとしている。
【文献】
Johnson, W.E., et al.: The Late Miocene Radiation of Modern Felidae: A Genetic Assessment. Science 311: 73-77. (2006) [DOI: 10.1126/science.1122277]
2006/01/15 DNAとタンパク質の基本成分が宇宙に
アメリカ航空宇宙局(NASA)の研究グループは、スピッツァー宇宙望遠鏡の観察により、375光年はなれたIRS46と呼ばれる地球型の若い星の周りにDNAとタンパク質を作る基本成分である有機ガスを発見したと報告した。
IRS46星の周りのガスを赤外線などで分析した結果、有機化合物であるアセチレンとシアン化水素、二酸化炭素が見いだされた。これらのガスは、数十億年前の原始の地球の大気と同じ成分と考えられている。
また、今までに試験管内でシアン化水素とアセチレンに水を一緒に加えて反応させるとタンパク質の構成成分であるアミノ酸やDNAを構成するアデニンと呼ばれるプリン塩基が作られることが知られている。
【文献】
Lahuis, F., et al.: Hot Organic Molecules toward a Young Low-Mass Star: A Look at Inner Disk Chemistry. Astrophysic. J. lett., 636: 145-148. (2006)
2006/01/14 火星の探検は今も続いている
火星に着陸してから2年、今も火星を2台の無人探査車は走り続ける。アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査車は、当初は3ヵ月程度でその役割を終えると予想されていた。ところが、今も走り続けており、探査車2台の移動距離は合計で12kmを超えた。保証期間をとっくに過ぎた2台の探査車は寿命を超えて持ちこたえている。
1つ目の探査車、「スピリット」は2004年1月3日(アメリカ時間)に火星に降り立った。次いで「オポチュニティー」も1月24日に着陸した。スピリットが降りたのは火星の赤道の南にある直径約145kmの窪地、グセブ・クレーターで、オポチュニティーは反対側のメリディアニ平原に着陸した。
それから2年間、スピリットは約6kmを走破し、7万点もの画像を送信した。そのなかには探査車自体を撮影したものや、赤茶けた火星の表面を収めたパノラマ写真などもある。一方、オポチュニティーの走行距離は約6.4km、撮影した画像は5万8千点以上になる。
オポチュニティーは、はるか昔に火星の表面か表面近くに水があった証拠を見つけた。これは生命が存在する可能性を示唆するものである。また、過去には気候がさらに厳しかったことを示す証拠も見つけた。そのために火星での生命誕生が妨げられた可能性もある。
オポチュニティーとスピリットの写した火星の画像は下記のサイトで見られる。写真を見ていると月とは異なり、火星は地球によく似ているように思える。そして、写真を拡大してみるとなんだか不思議な感覚になる。
火星には強風が吹いているとのことであるが、風の音がするのだろうか。一人で火星の表面にいたらどう感じるのだろうか。地球と同じ風景に孤独感を感じないのだろうかなどと想像が広がる。
水のあった証拠を発見したオポチュニティーの画像は下記で見られる。
http://athena.cornell.edu/the_mission/ins_pancam_frommars_opp.html
岩場に着陸したスピリットの画像は下記で見られる。
http://athena.cornell.edu/the_mission/ins_pancam_frommars.html
2006/01/11 冥王星の惑星カロンの物理的特性
アメリカを中心とした国際研究グループ(1)とフランスを中心とした国際研究グループ(2)が、別々に科学研究雑誌ネーチャーに冥王星の惑星カロンの物理的な特性を明らかにした。これまでの計測により、両天体の質量の値は絞り込まれてきたが、半径や密度は不確実なままであった。
アメリカのグループは、惑星カロンの平均半径は606±8km、密度は1.72±0.15g・cm-3と発表した。また、有意な大気は検出されないとしている。そして、グループは、冥王星に天体が衝突し、吹き飛ばされたちりが集まってカロンができたとする可能性が高いとしている。
フランスのグループは、惑星カロンの平均半径は 603.6±1.4km、密度は1.71±0.08g ・cm-3とアメリカのグループとほぼ同じ結果を明らかにしている。
同じデータを用いて別々にかつ同時に、そして同じ雑誌にほぼ同じ内容が発表されたのは珍しいことではないかと思う。
【文献】
1) Gulbis, A.A.S., et al.: Charon's radius and atmospheric constraints from observations of a stellar occultation. Nature 439: 48-51. (2006) [doi: 10.1038/nature04276)
2) Sicardy, B., et al.: Charon's size and an upper limit on its atmosphere from a stellar occultation. Nature 439: 52-54. (2006) [doi: 10.1038/nature04351]
投稿者
kudamononet