2005年下半期

2005/12/31 今年の科学の画期的進歩

 アメリカ科学誌サイエンスは、今年の科学の画期的進歩として「進化研究」を選んだ。進化研究は、国際チームによるチンパンジーのゲノム(全遺伝情報)解読や、ヒト遺伝子の個性を探る大規模共同研究の成果などから、進展著しい分野としてトップになった。

上記サイエンスの記事は下記サイトにある。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/310/5756/1878

また、次点として9つ研究成果を選んだ。その記事は下記のサイトで読める。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/310/5756/1880a



2005/12/21 少ない肥料でもイネの収量が増加

 葉がほぼ垂直に育つために、太陽のエネルギーが下の葉までまんべんなく及ぶので光合成の効率が良くなるため、肥料を増やさなくても収量が増加するイネの仕組みが解明されたと報告された。

 葉が垂直のため、間隔を狭めて植えるのにも適していることから、田植えの必要のない直播(じかまき)による省力化で、生産者の高齢化対策としても期待できる成果である。

 イネ(日本晴)の突然変異体の中から、葉が直立するイネの遺伝子を解析した結果、葉が直立したイネでは、植物ホルモンの一種であるブラシノステロイドを作る酵素のうち、同じ働きをする二つの酵素の一方が機能しなくなっていることを突き止めた。

 通常の2倍の密度で栽培したところ、普通の日本晴は1ヘクタール当たりの推定収量が5.31tだったのに対し、このイネは6.19tで、植え付け間隔を狭めた栽培にも適していることを実証した。

【文献】
Sakamoto, T., et al.: Erect leaves caused by brassinosteroid deficiency increase biomass production and grain yield in rice. Nature Biotech. (online: 20 December 2005) [doi: 10.1038/nbt1173]



2005/12/19 観測史上2番目の暑さ

 国連の世界気象機関(WMO: World Meteorological Organization)は、2005年は、観測史上2番目に暑い年だったとする報告書「2005年の地球気候の現状に関する声明」を発表した。

 報告書によると、これまでのところ2005年は、陸地や海を含めた地球表面の平均気温が、観測記録の残る1861年以来2番目に高く、比較の基準としている1961~90年の平均(14度)を0.48度上回った。特に北半球は、同平均を0.65度上回る史上最高を記録した。

プレスリリースは下記のサイトで読める。
http://www.wmo.ch/news/news.html

プレスリリースのワード版は下記のサイト。
http://www.wmo.int/web/Press/Press743_E1.doc



2005/12/18 マヤ文明:最古の壁画を発見

 ナショナルジオグラフィック協会(本部・ワシントン)は、約2000年前に描かれたマヤ文明最古の壁画(王権を授けられるトウモロコシの神々)を公表した。

 中米グアテマラ・サンバルトロの密林に残された高さ25メートルのピラミッド神殿かり発掘が進められていた。見つかった壁画は、大きさ縦1メートル、幅9メートルで、現在も鮮やかな赤い色彩が残る。調査に当たったウィリアム・サターノ研究員は「宇宙の木にささげられた七面鳥の血」と解説し、マヤの世界観を示す資料の一つとして注目している。

マヤ最古の壁画が初期の王たちの存在を実証したナショナルジオグラフィックの日本語サイトは下記。
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/topics/n20051213_1.shtml



2005/12/16 卵を抱える雌イカ

 アメリカ・カリフォルニア州のモンタレー湾水族館研究所が、腕(脚)の間に2000から3000個の卵を抱えるテカギイカの雌を撮影することに成功したと発表した。イカ類は海底に卵を産み落とすと考えられており、卵を抱き続ける種類が撮影されることは極めて珍しいという。

 遠隔操作できる潜水探査機を水深1500~2500メートルに沈め、卵を抱いているテカギイカ5匹を撮影、2匹を捕獲した。撮影された雌は体長約14.5センチ。卵の塊を抱き、内部のすき間に口から海水を流し込んでいた。深海では少ない酸素を卵に与えるためと考えられるという。また、卵を抱いた雌は動きが鈍く、研究者は「子育てには貢献しているものの、クジラやアザラシの餌食になりやすいようだ」と推測している。

【文献】
Seibel, B.A., et al.: Post-spawning egg care by a squid. Nature 438: 929 (15 December 2005) [doi:10.1038/438929a]

卵を抱いたテカギイカの写真は下記のサイトで見られる。
http://www.nature.com/nature/journal/v438/n7070/fig_tab/438929a_F1.html



2005/12/15 夫婦間の不和は健康にも良くない

 夫婦間の不和によるストレスは、傷害回復に関係した血液中のタンパク質(サイトカイン)が元に戻るのが遅くなるとアメリカ・オハイオ州立大の研究チームが発表した。

 研究は、オハイオ州に住む22歳から77歳の42組の夫婦を対象に、真空ポンプを被験者の皮膚に押しつけふくれさせ、その傷害回復タンパク質サイトカインを測定した。1度目は普通に、2度目は互いの意見が合わない問題を議論して測定した。その結果、カップルが口論すると、口論していなかった時より回復が一貫して遅くなることが分かった。不和度が高いカップルは低いカップルに比べて回復度が60%であった。

 夫婦間の不和によるストレスは、傷害回復タンパク質であるサイトカインレベルを下げること、また、サイトカインは、心血管疾患、骨粗しょう症、関節炎など様々な病気と関係していることから、夫婦間の不和は健康に良くないと結論づけている。

【文献】
Janice, K., et al.: Hostile Marital Interactions, Proinflammatory Cytokine Production, and Wound Healing. Arch Gen Psychiatry. 62: 1377-1384. (2005)



2005/12/12 イヌのゲノム解読

 アメリカ・国立ヒトゲノム研究所などは、雌のボクサー犬のゲノム(遺伝情報全体)の高精度の解読が完了したと発表した。

 イヌのゲノム配列、比較解析などは、イヌの進化に関する重要な情報をもたらすとともに、現存の系統が形態的、生理的、行動的形質の表現型に非常に大きな多様性を示すため、非常に興味深い研究対象である。

 Lindblad-Tohらは、イヌゲノムの高品質概要配列と、系統間のいくつかの遺伝的差異を明らかにするとともに、イヌゲノムとヒトやげっ歯類のそれとの比較解析を行い、遺伝子やゲノムの進化についての全体的な展望を明らかにした。

 さらに、今回のイヌのゲノムを構成する塩基24億個の解読によって、がんや心臓病、糖尿病など様々な病気に関連する遺伝子の解明が進むと期待される。また、イヌのゲノム情報とヒトのゲノム情報を組み合わせることで、人間の病気の遺伝的原因の解明にもつながると期待されているという。

 ゲノム解読に選ばれたのは、「ターシャ」という名前の雌のボクサー犬、そのため、Y染色体の解析は行われていない。犬種ごとの違いについては、ビーグルなど9犬種と違いを比べたところ、塩基約24億個の中で違いは塩基約800~900個につき1個で、ヒトの個人差と同程度の違いだった。

【文献】
Lindblad-Toh, K. et al.: Genome sequence, comparative analysis and haplotype structure of the domestic dog. Nature 438: 803-819 (2005) [doi:10.1038/nature04338]

全文は下記のサイトで読める。
http://www.nature.com/nature/journal/v438/n7069/full/nature04338.html



2005/12/07 未知の肉食動物、インドネシアで発見

 世界自然保護基金(WWF)は、インドネシア・カリマンタン(ボルネオ)島の熱帯雨林で、ネコほどの大きさの「未知の肉食動物」を発見したと発表した。この未知の肉食動物は、全くの新種か、これまで知られていなかったテンかオオジャコウネコの仲間ではないかとしている。

 この未知の動物は、カヤン・メンタラン国立公園にWWFが設置したカメラが撮影した。体毛の濃い赤茶色で、ふさふさした細長い尾が特徴的。耳は小さく、後足が発達している。

 インドネシア政府は、この動物が発見された地域を含むカリマンタン島中心部の熱帯雨林に、世界最大のアブラヤシ栽培林を作ると発表したが、WWFはこの栽培計画によってカリマンタン島の生態系が損なわれ、この動物の正体も不明なままで終わってしまうと警告し、今回の発表に踏み切ったと説明している。またWWFは、アブラヤシの大規模栽培はカリマンタン島中心部の土壌にも地形にも適していないと警告している。

下記のWWFのサイトで未知の肉食動物の写真を見ることができる。
http://panda.org/news_facts/newsroom/index.cfm?uNewsID=52960



2005/12/03 始祖鳥は鳥類ではなく恐竜?

 長く最古の鳥とされてきた始祖鳥(Archaeopteryx)が、鳥ではなく恐竜だった可能性があることをドイツと米国のチームが発表した。保存状態のよい化石を調べたところ、脚の親指が恐竜と同じ前向きだった。従来は、現代の鳥類と同じように、枝にとまりやすいように後ろ向きになっていたと考えられており、鳥類に分類する最大の根拠とされていた。

 この化石はドイツの約1億5000万年前(ジュラ紀後期)の地層から見つかった10体目の始祖鳥で、羽毛や尾羽の痕跡や骨格の大部分が残っており、従来の化石では不明確だった脚の構造が確認できた。

 脚の親指はドロマエオサウルス類などの羽毛を持つ獣脚類恐竜と同様に前向きに伸びていた。さらに人さし指も獣脚類恐竜同様、上下に大きく動かせる構造と分かった。いずれも鳥類とは異なっている。

 始祖鳥は、最初の化石が見つかった19世紀以来の研究で、現在の鳥類の直系の祖先ではないものの、最も原始的な鳥類と位置付けられてきた。その最大の根拠の一つが脚の構造だったが、今回の研究でその根拠が崩れたことになる。

 始祖鳥が鳥類と認められなくなると、鳥類の起源は、中国で羽毛恐竜や原始的な鳥「孔子鳥」が見つかっている白亜紀前期(約1億3000万年前)まで約2000万年新しくなる可能性も出てきた。

 今回発表された始祖鳥の化石は科学雑誌サイエンスの下記のサイトで見られる。写真右下にあるスケールは5cm。右の写真は紫外線を照射して撮影した写真。
http://www.sciencemag.org/content/vol310/issue5753/images/large/310_1483_F1.jpeg

【文献】
Mayr, G., et al.: A Well-Preserved Archaeopteryx Specimen with Theropod Features. Science 310: 1483-1486. [DOI: 10.1126/science.1120331]



2005/12/02 世界最大の水族館がオープン

 アメリカ・米ジョージア州アトランタに屋内では世界最大とされる水族館「ジョージア・アクエリアム・イン・アトランタ」がオープンしたとCNNが伝えている(05/11/30)。今後1年間で240万人の来館が見込まれているとのこと。

 事務局長のジェフ・スワナガン氏はオープンに先立つ会見で、「世界一魅力的な水族館にしたい」と抱負を語った。総量3万トンに上る水の中で飼育される生物は12万5000匹。これまで最大とされてきたシカゴ・シェッド水族館の2万匹をはるかにしのぐ規模だ。

 総工費2億ドルで波間から姿を現す船舶をかたどったダイナミックな外観が特徴。館内は5つの展示エリアと、最新型の立体画像シアターに分かれている。水槽には曲面が多用され、見学者は魚の世界に飛び込んで一緒に泳いでいるような感覚を味わうことができるという。

水族館のサイトは下記
http://www.georgiaaquarium.org/



2005/12/01 ロマンチックな愛はちょうど1年?

 イタリアのパヴィア大学の研究チームは、人の恋する感情は神経成長因子(NGF)という分子の働きが影響しているとする研究結果を発表した。
 恋におちた人は血中の神経成長因子(NGF: nerve growth factor)濃度が有意に高まるという。ところが、その状態は長くは続かず、一年以内に元に戻ってしまう。これは、恋愛が最初の興奮期を脱して安定期に入るためではないかと研究者らは考察している。

 最近、恋に落ちた58人(18~31歳)の血液中に含まれている神経と関係する58種類のタンパク質を検査したところ、NGFの血中濃度は、交際相手のいない人のグループや長期間交際をしている人のグループに比べ、統計的に有意に高かったが、他のたんぱく質では有意な差はなかった。また、NGFはロマンチックな愛の強度とも正の相関を示した。しかし、同じ恋人との交際期間が1年を超えると、NGFの血中濃度は他のグループと同程度まで低下した。

【文献】
Emanuele, E., et al.: Raised plasma nerve growth factor levels associated with early-stage romantic love. online 10 Nov. 2005 [doi:10.1016/j.psyneuen.2005.09.002]





2005/11/29 探査機はやぶさ、イトカワから岩石採取

 探査機はやぶさが、小惑星イトカワから岩石採取に成功した。11月26日午前8時40分ごろ、「岩石採取のためのプログラムが正常に終了」と表示した。すると、スタッフやメーカーの担当者ら約50人から「やった」と声が上がり笑顔が広がったとのことである。おめでとう。

 もっともっと報道されてよい日本らしい科学的ニュースだと思う。そしてもっと、開発を担当した研究者の声を私たちに知らせてほしい。

 ただ、今までと少し違うのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)がホームページでその成果と興奮を伝えていることである。例えば的川対外協力室長の下記のページからは成功の興奮が伝わってくる。
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2005/1128.shtml (「はやぶさ」のいちばん長い日)

 探査機はやぶさ運用室からのブログの中の栄養ドリンクが写った写真もいい。できれば人をもっと入れて撮影してほしいが。
http://www.isas.jaxa.jp/home/hayabusa-live/

 そして、小惑星イトカワの素顔に迫る-「はやぶさ」科学的観測の成果-で全容を知ることができる。
http://www.jaxa.jp/news_topics/column/special-4/index_j.html


 科学の進歩は、人を抜きにしては語れない。にもかかわらず、科学的原理だけを示すような「客観的」、「冷静」なニュースが多い。もっと熱いニュースにならないものだろうか。

 探索機はやぶさの着陸前のスタッフの腕組みをしたり歩き回るなど落ち着かない様子や、成功後のピースサインを絵として伝えてほしい。こうした絵は、子供たちに科学のおもしろさを伝える最良の情報である。大人たちが真剣に研究、技術開発を行い、その成果に喜ぶ姿は子供たちに強い印象を残すだろう。



2005/11/22 朝の光で体内時計を調整

 朝の光で全身の体内時計が調整される仕組みを、神戸大大学院のグループがマウスの実験で突き止めた。目で光を受けると、副腎に情報が伝わり、細胞を活性化するステロイドホルモンが分泌されるという。

 人やマウスの体には24時間周期の活動のリズムがあり、ホルモン量や体温などが変化する。このリズムをつくる体内時計が狂うと、睡眠障害や活動意欲の低下などの症状が表れ、ひどくなるとうつになる。通常は朝に光を浴び、体内時計と実際の時間のずれを修正しているが、全身に“朝”という情報がどのように伝わるかは不明だった。

 研究者らは、ステロイドホルモンの一種の副腎皮質ホルモンが24時間周期で増減することに着目し、マウスに30分間光を当てたところ、このホルモンの量が約3倍に増えた。一方、体内時計の本体とされる脳の一部と副腎を結ぶ神経を切ると、光を当てても量は変わらず、光を受けると副腎皮質ホルモンが出て、全身の体内時計が修正されると結論づけた。

【文献】

Ishida A, et al.:Light activates the adrenal gland: Timing of gene expression and glucocorticoid release. Cell Metab. 2: 297-307. (2005)





2005/11/12 古代ワニの化石発見

 肉食恐竜を思わせるずんぐり型の頭と大きな歯を持つ珍しい古代ワニの一種が、ほぼ完全な頭骨と下あごの化石が、アルゼンチンの約1億4000万年前の地層で見つかったと科学雑誌サイエンスが伝えている。はるか昔に多様な形態のワニ類が栄えたことを示す証拠という。

 ダコサウルス・アンジニエンシス(Dakosaurus andiniensis )と呼ばれる絶滅した水生のワニの一種で、これまではわずかな化石しか見つかっていなかった。

 頭骨は長さ約80cm、歯は大きいもので約10cmもあり、全身は4m近くあったと推定される。現在のワニの頭部は、長い口に歯がぎっしりと生え、小魚を捕まえるのに適した構造をしているという。


頭部の化石は下記のサイトで見られる。
http://www.sciencemag.org/sciencexpress/recent.shtml

【文献】

Gasparini, Z. et al.: An Unusual Marine Crocodyliform from the Jurassic-Cretaceous Boundary of Patagonia. Science, online November [doi: 10 2005; 10.1126/science.1120803]





2005/11/09 マウスのオスの求愛行動

 オスのマウスは、メスに反応してラブソングを歌っているとアメリカ・ワシントン大の研究チームが発表した。人間の耳では聞き取れない高周波の音声を低くして再生したところ、一定のパターンがあることが分かった。

 これまでの研究で、オスのマウスが高周波の音を出すことは広く知られてたが、その詳細は明らかになっていなかった。そこで、この音声を分析したところ、小鳥によく似た「歌声」になっているとの結論に達した。

 研究チームは、メスが放出する化学物質にオスの脳がどう反応するかを研究していた。最初、オスが発する音声をコンピューター上で画像に変換したがよく分からなかった。そこで、この音声をテープに録音し、4オクターブ下げて再生してみたところ、単なる音の羅列ではなく、(1)音節がはっきり分かれている(2)同じパターンが繰り返し現れるなど、歌としての要件を満たしていることが明らかになった。

 この発見は、研究者にとっても予想外の結果で、「驚き、喜んでいる」とのこと。

【文献】

Holy TE, Guo Z (2005) Ultrasonic Songs of Male Mice. PLoS Biol 3(12): e386 [DOI: 10.1371/journal.pbio.0030386]



2005/11/05 女性ホルモンのレベルが高いと魅力的?

 イギリス・アンドリュース大学の研究チームは、女性ホルモンの高い女性はより魅力的に感じられるとイギリス王立協会誌に発表した。研究者らは、59人の女性について18歳と25歳のときに写真をとるとともに女性ホルモン(oestrone-3-glucuronide(E1G), pregnanediol-3-glucuronide(P3G))の量を分析した。30人のボランティア(15人の男性の女性と15女性)より魅力的な方の写真を選択する方法により評価した。その結果、女性ホルモンの量は女らしさや魅力、健康的などの項目と正の相関が認められた。しかし、お化粧をすると女性ホルモンの量と女らしさや魅力などとの相関は認められなくなった。

下記で両者の写真を見ることができる。上の写真が女性ホルモンが多いとき。
http://www.pubs.royalsoc.ac.uk/proceedingsb.shtml

【文献】

Smith., M.J.L., et al.: Facial appearance is a cue to oestrogen levels in women. Proc. R. Soc. Lond. B. Biol. Sci. [DOI: 10.1098/rspb.2005.3296] (2005)





2005/10/31 褐変しないリンゴの新種

 切っても、すり下ろしても茶色にならない新種のリンゴが青森県りんご試験場で誕生したと毎日新聞が伝えている(05/10/30)。カットフルーツで売りやすく、「むくのが面倒」「1個は多い」と、敬遠していた人にも食べてもらえると期待されている。

 このリンゴは「青り27号」で甘くて香りの良い。リンゴは果肉が空気に触れると、果肉中のポリフェノール類が酸化酵素のポリフェノールオキシターゼ(PPO)によって変色するが、「青り27号」は(PPO)の働きが弱い。



2005/10/30 ツタンカーメン王が飲んだワインは「赤」

 黄金のマスクで知られる古代エジプトのツタンカーメン王が飲んでいたワインの色は「赤」だったと、スペイン・バルセロナ大学のGuasch-Janeらの研究グループが突き止めた。大英博物館とカイロのエジプト博物館が保管するつぼに付着していた残留物を調査した結果、白ワインには含まれないアントシアニンの一種であるマルビン由来のシリンガ酸(syringic acid)を検出した。

 ツタンカーメンは、約3300年前の古代エジプト第18王朝の王で、発掘された墓からはこれまでに、ワインが入っていたと見られるつぼが見つかっていた。つぼには銘柄名のほか、収穫年や場所、醸造者について書かれていたが、中に入っていたワインの色は分かっていなかった。

【文献】

Guasch-Jane MR, et al.: Liquid chromatography with mass spectrometry in tandem mode applied for the identification of wine markers in residues from ancient Egyptian vessels. Anal. Chem. 76:1672-1677. (2004)



2005/10/21 離婚は環境に悪い

 ネーチャー・バイオニュース(03/1/23)に離婚は環境に悪いとの報告が掲載されている。サイトは下記。
http://www.natureasia.com/japan/sciencenews/bionews/

 離婚すると世帯数が増加するが、世帯数が増えることは人口増よりも環境に与える影響が深刻と述べている。居住者が1人から3人までの住居が多くなると、エネルギー、土地、建築資材、水の使用が急激に増える。たとえば、2人の世帯も6人の世帯も、使う冷蔵庫はふつう1つだからだ。そのため、世帯数が増えると環境が悪化すると生態学者の研究結果から分かった。

参考文献

Liu, J., Dally, G. C., Ehrlich, P. R., & Luck, G. W. Effects of household dynamics on resource consumption and biodiversity. Nature. Published online. d.o.i.: 10.1038 /nature01359.



2005/10/20 受精卵を壊さずにES細胞を作成

 1個の受精卵から、正常な赤ちゃんと、どんな細胞にも成長できる万能性を持ったES細胞(胚性幹細胞)の両方を得ることに、マウスの実験で初めて成功したとイギリス科学雑誌ネイチャーに報告された。

 ES細胞を作成する場合、受精卵を丸ごと犠牲にする必要があった。そのため、倫理的な批判があったが、今回の方法が人でも再現できれば、受精卵を壊すことなくES細胞を作成できる。また、将来のけがや病気の治療に備え、本人専用のES細胞を保存しておくことも可能となる技術でもある。

 マウスの受精卵が八つの細胞に分裂した段階で、うち一つの細胞を取り出し、別のES細胞と一緒に数日間培養すると、細胞は未熟な性質を保ったまま分裂を続け、筋肉や神経、内臓など多様な細胞に成長しうるES細胞になった。

 一方、1細胞を取り出した後の受精卵を代理母役のマウスの子宮に入れたところ、妊娠して正常な赤ちゃんマウスが誕生した。

【文献】

Chung, Y., et al.: Embryonic and extraembryonic stem cell lines derived from single mouse blastomeres. Nature (online 16 October 2005) [doi: 10.1038/nature04277]



2005/10/18 マウスに育たないクローン胚

 動物に育つことができないクローン胚をつくる技術が開発された。クローン胚は再生医療への応用が期待される一方で、子宮に移植すればクローン人間の誕生にもつながることから、研究を進めることに慎重な意見もある。

 研究グループはマウスの細胞を取り出し、子宮への着床にかかわる遺伝子Cdx2が働かないようにして、卵子に移した。できた胚は仮親の子宮に戻しても着床しなかった。
一方、この胚からES細胞を作ることができ、普通のES細胞と同様の能力を持っていた。従って、この方法を用いれば、クローン人間が生まれる可能性はなくなる。

【文献】

Meissner, A. and Jaenisch, R.: Generation of nuclear transfer-derived pluripotent ES cells from cloned Cdx2-deficient blastocysts. Nature, (online 16 October 2005) [doi: 10.1038/nature04257]



2005/10/17 謎の微生物ハテナ:砂浜で発見

 べん毛虫の一種の海洋微生物で、細胞分裂すると、一方は緑色にもう一方は無色の性質の異なる細胞になる。同じ生物なのに、半数は藻を食べて動物のように暮らし、残り半数は植物のように光合成で生きる海洋微生物を、筑波大の研究グループが発見した。このような生物の発見報告はなく、研究グループは「謎の」という意味で「ハテナ」と呼んでいる。海洋微生物から植物への進化を解き明かす可能性がありる。

 この微生物は長径約30μmで、単細胞のべん毛虫の一種。和歌山県の砂浜で偶然、見つかった。この微生物は体内に藻を持ちもともとは緑色だが、細胞分裂して二つに分かれると、一方は藻を受け継ぎ緑色になるが、もう一方は受け継がず無色の細胞になるという特異な性質を持つことが分かった。

 無色の細胞は口のような器官が発達して藻を与えると食べることも確認した。研究グループは、これらのことから微生物の半数は親から受け継いだ藻で光合成しエネルギーを生み出す「植物型」、半数は捕食した藻をエネルギー源として生きていく「動物型」であると結論付けた。

 海洋微生物が植物に進化する過程では、べん毛虫のような微生物が藻を取り込み、藻の葉緑体だけが発達し、藻のその他の器官は退化し、葉緑体のみが残ったと考えられている。この発見は、海中の単細胞生物が植物へ進化していくステップの一端を示している可能性がある。

【文献】

Okamoto, N.& Inouye, I. (2005) A Secondary Symbiosis in Progress? Science, 310: 287 [DOI: 10.1126/science.1116125]

ハテナの写真は下記のサイトでみることができる。
http://www.sciencemag.org/content/vol310/issue5746/images/large/310_287_F1.jpeg
写真Bの右が植物型、左が動物型



2005/10/15 スミソニアン博物館でスペース・シップ・ワン展示

 世界ではじめて民間で有人宇宙飛行に成功した飛行船「スペース・シップ・ワン」がアメリカ国立スミソニアン航空宇宙博物館で展示されることになった。同船は「宇宙飛行の商業化」を踏み出した歴史的な機体として、大西洋無着陸横断飛行に初めて成功した「スピリット・オブ・セントルイス」と、世界で初めて音速の壁を破った「ベルX─1」の間に置かれることになった。

スミソニアン博物館のサイトは下記。
http://www.nasm.si.edu/events/pressroom/releaseDetail.cfm?releaseID=138



2005/10/09 ガンマ線バーストの瞬間の撮影

 宇宙で起こる謎の大爆発「ガンマ線バースト」を日米欧の研究グループが観測し、地球から20億光年ほど離れた「つる座」の、古い星が集まっている銀河周辺で起きたことを突き止めた。爆発が瞬間的なガンマ線バーストは観測が難しく、発生場所が特定できたのは初めてとのことである。

 ガンマ線バーストは、宇宙のかなたで突然、高エネルギーのガンマ線が爆発的に放射される現象。日・米・仏が共同開発した天文探査衛星「HETE2」が7月9日、わずか0.07秒間ほどで終わった瞬間的な爆発をとらえ、発生の方角を特定した。

 インターネットで速報されたHETE2の情報を基に、日本のすばる望遠鏡、米国のチャンドラX線観測衛星やハッブル宇宙望遠鏡などが、X線や可視光の「残光」を探した。

 瞬間的なガンマ線バーストは、星の進化の最終形態の一つである中性子星同士か中性子星とブラックホールが衝突、合体して起こるとの学説が有力視されているが、この理論を裏付ける結果であるとしている。

γ-光線バーストの図は下記のサイトで読める。
http://www.nature.com/nature/journal/v437/n7060/fig_tab/437822a_F1.html

【文献】

1) N. Gehrels, N., (2005) A short -ray burst apparently associated with an elliptical galaxy at redshift z = 0.225. Nature 437, 851-854. [doi: 10.1038/nature04142]

2) Villasenor, J. S., (2005) Discovery of the short -ray burst GRB 050709. Nature 437, 855-858. [doi: 10.1038/nature04213]

3) Hjorth, J., (2005) The optical afterglow of the short -ray burst GRB 050709. Nature 437, 859-861. [doi: 10.1038/nature04174]



2005/10/07 中晩柑「すずっこ」(品種名:天草)に注目

 宮崎県のJA尾鈴は、中晩柑「すずっこ」(品種名:天草)のブランド化に力を入れている。露地ミカンよりひと回り大きく、濃いオレンジ色が特徴で皮もむきやすい。12月から翌年1月に出荷でき、贈答用として引き合いが強いと日本農業新聞が伝えている(05.9.29)。

 12~1月の贈答期は露地ミカン、ポンカン、デコポンなど競合品目が多いが、「すずっこ」の評価は高い。贈答期に出荷される商材として、人気が年々高まっている。食べると甘くて果汁が多いため、若者向きの果実である。



2005/10/06 ノーベル化学賞発表される

 10月5日11時45分、2005年のノーベル化学賞が発表された。受賞者はフランスのショーバン名誉研究部長(Yves Chauvin、74歳)、アメリカのカリフォルニア工科大学のグラッブス教授(Robert H. Grubbs、63歳)、マサチューセッツ工科大学のシュロック教授(Richard R.
Schrock、60歳)。

 メタセシス反応とは、二種類のオレフィンの間で二重結合同士の結合の組換えが起こる触媒反応のことである。ダンスでパートナーを替えて新ペアができるように、新しい有機物ができる。

受賞理由は下記。
"for the development of the metathesis method in organic synthesis"
「有機合成におけるメタセシス反応の開発」

ノーベル化学賞の発表サイトは下記。
http://nobelprize.org/chemistry/laureates/2005/index.html

ノーベル化学賞の選考過程は下記のサイトで読める。
http://nobelprize.org/chemistry/nomination/index.html



2005/10/05 ノーベル物理学賞発表される

 スウェーデンの王立科学アカデミーは、2005年のノーベル物理学賞を、米ハーバード大のロイ・グラウバー教授(80)、米国立標準技術研究所のジョン・ホール上級研究員(71)、独マックスプランク研究所のテオドール・ヘンシュ教授(63)の3人に授与すると発表した。

 光は波と粒子の二つの性質をもつことがアインシュタインによって提唱されていたが、グラウバー教授は、光の性質を研究、電灯などの普通の光とレーザー光との違いを説明し、光粒子のふるまいの基礎理論を確立し、「量子光学」と呼ばれる分野を開拓した。この成果は、その後のレーザーや通信技術の発展につながった。

受賞理由は下記
"for his contribution to the quantum theory of optical coherence"

 ホール、ヘンシュの両氏は特殊なレーザー光を作りだし、レーザー光の周波数を誤差1000兆分の1で測定する精密な技術を確立した。これにより、極めて正確な時計を作ることが可能になり、GPS(全地球測位システム)などに活用されている。

受賞理由は下記
"for their contributions to the development of laser-based precision spectroscopy, including the optical frequency comb technique"

ノーベル物理学賞の発表サイトは下記。
http://nobelprize.org/physics/laureates/2005/index.html



2005/10/04 ノーベル生理・医学賞発表される

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は2005年のノーベル生理・医学賞をオーストラリアのバリー・マーシャル教授(54)とロビン・ウォーレン名誉教授(68)に授与すると発表した。両氏は1982年、細菌の一種のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を発見し、ピロリ菌の感染が胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因になることを突き止めた。

 消化器の潰瘍は、ストレスや生活習慣が原因だと考えられていた。病理医だったウォーレン氏は1070年代末、胃の一部の組織を切り取る検査を受けた患者の半数で、胃の下部にらせん状の細菌が集まり、その周辺で胃粘膜が炎症を起こしていることを発見した。

 マーシャル氏は1982年、この細菌の分離と培養に成功し、ヘリコバクター・ピロリと名づけた。胃や十二指腸に潰瘍を持つ患者のほとんどが持っていることから、ピロリ菌が潰瘍の原因だと提唱した。ピロリ菌の除去で潰瘍が治ることも示した。

 強い酸性の胃液が出る胃の中に細菌がすめるはずはないとされ、ピロリ菌の存在を否定する専門家も多かった。このため、マーシャル氏は自らピロリ菌を飲み、急性胃炎になることと抗生物質で菌を殺すと胃炎が治ることを示し、自説を証明した。

受賞理由
"for their discovery of the bacterium Helicobacter pylori and its role in gastritis and peptic ulcer disease"

ノーベル生理・医学賞の発表サイトは下記。
http://nobelprize.org/medicine/laureates/2005/index.html

▽ 「強い酸性の胃液が出る胃の中に細菌がすめるはずはない」とする多数派の中で孤軍奮闘する姿がエピソードからもよく分かります。こうした研究経過も論文・成果主義が誤っていることを示しています。





2005/09/29 世界で最初の発見:直流と交流を変換有機化合物

 直流電流を交流に変換するインバーターのような働きを持つ有機化合物を早稲田大などの研究チームが発見したと科学雑誌ネーチャーに発表した。単体でインバーター機能を持つ物質が見つかったのは世界最初で、次世代の電子部品として期待されている有機エレクトロニクス素子に応用できる可能性がある。

 BEDT-TTFと呼ばれる研究用の試薬に、セシウムやコバルトが結合した有機化合物サイリスタである。マイナス269℃に冷却した結晶に電流を流して特性を調べたところ、わずかな電流の変化で1000倍も電気抵抗が変わることが分かった。

【文献】

Sawano, F., et al. (2005) An organic thyristor. Nature 437: 522-524 (doi: 10.1038/nature04087)



2005/09/19 2018年、月に基地

 2018年に4人の宇宙飛行士を月に送る計画を米航空宇宙局(NASA)が固め、週明けにも詳細を発表すると「スペースドットコム(space.com)」が報じた。計画通り実現すれば1972年の「アポロ17号」以来である。

 将来、火星などの有人探査を行う拠点として月を活用する狙いとのこと。最初は飛行士らが月に1週間滞在する。

スペースドットコムのニュースは下記のサイトで読める。
http://www.space.com/news/050914_nasa_cev_update.html



2005/09/15 ネアンデルタール人と現生人類は欧州で共存

 約3万年前に死滅したとされるネアンデルタール人と、初期の現生人類は一時期、同じ場所で共存していたと科学雑誌ネーチャーに発表された。

 英ケンブリッジ大のGravinaらは、仏中部シャテルペロンにある洞くつから出土した石器などを分析した結果、初期の現生人類のものとされるオーリニャック文化の石器の層の上下それぞれネアンデルタール人の道具類の層があったことが分かった。さらに、周辺から出土した人骨の年代を放射性炭素で測定したところ、約3万8000年前に、両者がこの場所で共存していたとの裏付けが得られた。

【文献】

Brad Gravina, B., et al.: Radiocarbon dating of interstratified Neanderthal and early modern human occupations at the Chatelperronian type-site. Nature, 31 Aug. 2005 [doi: 10.1038/nature04006]

▽   ネアンデルタール人は当初、人類の祖先とみられていたが、その後の研究で、現生人類とは別系統の人類だったと判明した。考古学、人類学の研究者らの間ではこれまでに「ネアンデルタール人が死滅した後で現生人類が現れた」「時期は重なっていたが場所が離れていたため、接触はなかった」などの説もだされている。今回の発見は時期も場所も同じところで共存していたことになる。



2005/09/10 染色なしで細胞を観察可能な新顕微鏡

 細胞内のたんぱく質やDNAなどの分子の動きや構造を、生きたままの自然な姿でカラー画像化できる顕微鏡ができたと大阪大のベンチャー企業「ナノフォトン」(本社・大阪市北区)が発表した。

 今までは、化学物質による染色を行った後に顕微鏡で観察していたが、今回開発されたレーザーラマン顕微鏡では「染色」することなく生体反応を観察できるという。

 開発された新顕微鏡は、観察対象にレーザーを当て、はね返ってきた光を検出する。この光には、分子の種類や構造の違いに応じて色が変化した微弱な光もわずかに混じっており、これをとらえて画像化する技術を確立した。ネズミの心筋細胞を観察すると、細胞内の小さな器官がさまざまな色に光って区別できた。 一台3300万円で市販している。

レーザーラマン顕微鏡RAMAN-11については下記のサイトで読める。
http://www.nanophoton.jp/



2005/09/03 オゾン層の減少にストップ

 皮膚がんなどの原因になる紫外線から生物を守る成層圏のオゾン層の減少に、96年ごろから歯止めがかかったことを示す分析結果を、米海洋大気局(NOAA)とウィスコンシン大、シカゴ大などのチームがまとめ、地球物理学誌に発表した。

 チームは、オゾン層を監視する二つの人工衛星(TOMS、SBUV) と地上での1978-2002年の観測データについて、複数の統計分析手法を当てはめてオゾン層の減少に変化があるかどうかを分析した結果、南北半球とも40度以上の中~高緯度地域で1996年ごろを境に減少に歯止めがかかり、安定化する傾向があることが分かった。

 すでに、上部成層圏(高度35-45km)に限定して同様の傾向が発見されていたが、今回は成層圏全体を対象にした結果で、安定化の傾向は、緯度が比較的高い地域でより強く出ていた。

【文献】

Reinsel, G. C., A. J. Miller, E. C. Weatherhead, L. E. Flynn, R. M. Nagatani, G. C. Tiao, and D. J. Wuebbles (2005), Trend analysis of total ozone data for turnaround and dynamical contributions, J. Geophys. Res., 110, D16306, doi:10.1029/2004JD004662.

▽  科学者らは、変化が出て以降の分析期間が約6年と短いため、決定的な証拠とまでは言い切れないとしているがオゾン層を破壊するフロン類の規制など、国際社会の努力が奏功した結果とみられると評価している。

 フロン規制などでオゾン層の破壊を阻止できたのなら人類の輝かしい勝利といえるのではないか。地球温暖化も二酸化炭素などの排出量の規制で防げるのではないかと期待できる。





2005/08/31 国際純正・応用化学連合:新副会長に松本和子氏

 世界65カ国が加盟する化学者の国際団体「国際純正・応用化学連合」(IUPAC)は、北京(8月20-21日)で開かれた代表者会議で、副会長に3人の候補者の中から選挙で松本和子・早稲田大理工学術院教授(55)を選出した。松本氏は副会長をを務めたあと、2008年から会長に就任することが決まっている。1919年にIUPACが設立されて以来、会長に女性が選ばれるのは初めてとのこと。

 松本教授は東京大理学部化学科卒。同大助手を経て1989年から現職。研究分野は無機化学・分析化学で専門は錯体化学。

IUPAC副会長選挙における候補者履歴は下記のサイト。
http://www.iupac.org/news/archives/2005/43rd_council/bios/matsumoto.html

IUPACの選挙公示などは下記のサイト。
http://www.iupac.org/news/archives/2005/43rd_council/index.html



2005/08/24 アメリカ科学雑誌サイエンスの予告

 受精卵使わないES細胞づくりに成功したとアメリカ科学雑誌サイエンスが論文発表を予告した。予告によると、アメリカハーバード大の研究チームは成人の皮膚細胞とES細胞を融合させたところ、DNA量は通常細胞の2倍で、かつES細胞と同じ万能性の特徴をもつ細胞の形成に成功したとのことである。この技術を発展させれば理論的には、人の受精卵から取り出した胚や核を取り出した卵子から作ったクローン胚など、倫理上の問題が指摘される方法を使わずに、再生医療用の細胞や組織を作れるようになるかもしれないという。

 上記実験の論文は26日発行の米科学誌サイエンスに掲載されるとのことである。追って詳細を報告したい。

サイエンスの予告サイトは下記。
http://sciencenow.sciencemag.org/



2005/08/22 チンパンジーにも利き手が存在

 アフリカに暮らす野生のチンパンジーにも人類と同じような利き手が存在し、左利きが多数派であるとアメリカアカデミー紀要(PNAS)に報告された。

 現代人の約9割は右利きで、このような偏りを生じたのは、脳の発達や道具の使用と密接な関係があると考えられ、類人猿にも同じ傾向があるか否かが論争になっていた。

 今回の成果は、人類とチンパンジーが、500万年以上前に進化の道筋を枝分かれする前から、利き手の偏りや脳の左右の機能区分が存在していたことを示唆するという。

 研究チームは、1998年から2001年にかけて、タンザニア・ゴンベ国立公園で、チンパンジーが大好物のシロアリを細い木の枝や草の茎を使って、アリ塚(アリの巣)から取り出す時、どちらの手を使っているか調べたところ、17頭中12頭が左利きと判明、明らかな偏りが見られた。

 研究チームは、木の枝でシロアリを釣り上げるという繊細さが必要な行動のため、利き手の傾向が出やすいと考えられる。人類に比べると未熟なものではないかと推定している。

【文献】

Elizabeth, V., et al.: Wild chimpanzees show population-level handedness for tool use. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, [doi: 10.1073/pnas.0505806102]



2005/08/20 地球にない鉱物を作成

 東京工業大、海洋研究開発機構などのグループは、300万気圧、2000℃という超高圧・高温の状態をつくり、地球には存在しない新鉱物を生成することに成功したと科学雑誌サイエンスに発表した。この新鉱物は天王星や海王星の中心部にある鉱物と同じと考えられる。

 天王星や海王星の中心部(核)の主成分である二酸化ケイ素を、ダイヤモンドで挟んで高い圧力を加え、レーザーで1000~2000℃まで熱した。ふだんは水晶のように六角柱の結晶構造をとる二酸化ケイ素が、約270万気圧以上で立方体の結晶構造に変わった。

【文献】

Kuwayama, Y., et al. (2005) The Pyrite-Type High-Pressure Form of Silica. Science 309: 923-925. [DOI: 10.1126/science.1114879]



2005/08/17 宇宙滞在748日/世界最長記録

 国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中のロシアの宇宙飛行士セルゲイ・クリカレフ(Sergei
Krikalev )氏(46)は8カ月16日に宇宙滞在日数が全部で748日(2年以上)となり、世界最長記録を更新したと米航空宇宙局(NASA)が発表した。

 これまでの記録は同じロシアの宇宙飛行士セルゲイ・アブデーエフ氏の747日14時間だった。クリカレフ氏は今回は4月にISSへ行き、10月まで滞在する予定とのことである。

 記録を伝えているNASAのニュースサイトは下記(Krikalev Sets Time-in-Space Record)。
http://www.nasa.gov/mission_pages/station/expeditions/expedition11/krikalev_record.html



2005/08/10 ディスカバリー無事帰還

 スペースシャトル「ディスカバリー」は、米太平洋時間9日午前5時11分(日本時間同午後9時11分)、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地に帰還した。コロンビア事故(2003年2月1日)以降、2年半にわたり中断していたシャトル飛行は成功した。

今回のミッションのNASAのホームページ
http://www.nasa.gov/returntoflight/main/index.html?skipIntro=1

スペースシャトル「ディスカバリー」の着陸風景(放映時間約1分)
http://www-pao.ksc.nasa.gov/kscpao/videos/metafiles/ksc_080905_landing.ram



2005/08/09 パンダ赤ちゃん、It's a Boy!

 米ワシントン国立動物園は、7月9日に生まれたパンダの赤ちゃんの性別は「オス」と発表した。生後初めてとなる健康診断の結果で判明したもので、約1カ月で体長30cm、体重825.7gまで成長した。

 同動物園の獣医らが、母パンダのメイシアン(美香、6歳)が食事のため赤ちゃんパンダから離れた間を狙って、体長などを測定した。心音と呼吸などから、健康に育っていると確認できたという。

 ワシントン国立動物園では、パンダ親子の様子をインターネットで公開している。ライブカメラも設置されている。
http://nationalzoo.si.edu/Animals/GiantPandas/



2005/08/01 インスタントラーメン宇宙用

 インスタントラーメンの宇宙用「スペース・ラム」を日清食品(本社・大阪市)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同開発し、スペースシャトル「ディスカバリー」に搭載された。日清食品創業者会長の安藤百福さん(95)は、「夢のような話を実現できて大変うれしい。私も宇宙にぜひ行きたい」と話している。

 通常のラーメンだと、めんと汁が無重力空間では飛び散ってしまうため、透明パックの容器に塊状となっためんと、乾燥させた具材やスープを封入。シャトル内で使用可能な70度のお湯を注いで5分で戻り、フォークにとろみのついたスープにからめて食べる。味付けは、宇宙で好まれるやや濃いめにしたという。

宇宙用ラーメン「スペース・ラム」の記者発表要旨と写真は、下記のサイトで読める。
http://www.nissinfoods.co.jp/news/news_release050727.html





2005/07/28 Return to space 再び宇宙へ

 米東部時間26日午前10時39分(日本時間同日午後11時39分)、スペースシャトル・ディスカバリーを打ち上げた。約40分後には予定された地球周回軌道に入り、打ち上げは成功した。シャトルの飛行は、2003年2月のコロンビア空中分解事故から約2年半ぶり。アイリーン・コリンズ船長や野口聡一飛行士ら乗組員7人が、シャトルの補修試験や国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送にあたる。

 ディスカバリーが予定の軌道に乗ると、NASAのマイケル・グリフィン長官は会見し、「(コロンビアの事故の後)2年半にわたる多くの関係者の努力が実を結んだ」と述べた。

NASA Returns to flight のホームページは下記。
http://www.nasa.gov/returntoflight/main/index.html?skipIntro=1



野口さんのプロフィールは下記。
http://www.nasa.gov/vision/space/preparingtravel/soichi_noguchi_profile.html

2005年野口さんのインタビュー記事は下記で読める。
http://www.nasa.gov/vision/space/preparingtravel/rtf_interview_noguchi.html

スペースシャトルの打ち上げ風景はNASAの下記のサイトで。
http://www-pao.ksc.nasa.gov/kscpao/videos/metafiles/ksc_072605_rtf_launch.ram



2005/07/18 アンドロイド「安藤さん」人気

 大阪で開かれているロボカップ2005の会場で人気を集める女子アナロボットの「安藤さん」が人気を集めていると朝日新聞が伝えている(05/7/16)。大阪大が企業と共同開発した女子アナ「安藤さん」は、人が近づくとマイクを向けてインタビューし、「将来はニュースキャスターとしても活躍したい」と夢を語る。

 まばたきや身のこなしは、人間そっくり。大阪大の実験では、初対面の2秒間では7割の人がアンドロイドと気づかなかったという。

 「アンドロイドだから」という理由で、愛称が「アンドー」に。身長は150センチ。軟らかい皮膚を持ち、しなやかな動作と細かな表情が特徴だ。

 また、地球博会場いる「安藤さん」(リプリーQ1 expo)の動画は、下記のサイトで見られます。
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0613/nedo0153.mov



2005/07/13 宇宙で植物を栽培

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の矢野幸子研究員は、重力を人工的に作り、湿度、光、風流、ガス交換などの環境を整える「植物実験ユニット」を開発した。設備は大きく複雑だが、実際に植物を育てるのは6センチ四方の箱の中のため、限られた空間で短時間に育つシロイヌナズナを使って実験中である。スペースシャトルで2007年に打ち上げる日本の実験棟「きぼう」に搭載される予定とのこと。将来は宇宙でコメの栽培を目指している。

 毛利さんが館長を務める未来館のインタビューページは下記。シロイズナズナの写真も見られる。
http://www.miraikan.jst.go.jp/miniearth/interview/index3.html



2005/07/12 アメリカでパンダの赤ちゃん誕生

 アメリカ・スミソニアン国立動物園(ワシントンDC)で9日午前3時41分、パンダの赤ちゃんが誕生した。同動物園でパンダの赤ちゃんが生まれるのは、16年ぶりだそうである。母親のメイシアン(美香、6歳)にとっては初めての出産だったが、赤ちゃんの面倒をよく見ているという。

 メイシアンは今年、つがい相手のティエンティエン(添添、7歳)との自然交配に失敗したため、3月11日に人工授精を受けていた。今月9日の午前1時ごろから落ち着かない様子が見られ、繰り返しほえたり鳴いたりと、出産前の兆候を見せていたという。

 誕生した赤ちゃんの性別はまだ判断できていない。名前はこれまでの慣例から、誕生100日後に中国が決定するそうである。赤ちゃんが生まれた場合、2歳になった時点で中国に返還される約束となっているとのこと。

下記のサイトでパンダの様子が分かります。実況中継中。
http://nationalzoo.si.edu/Animals/GiantPandas/

Smithsonian's National Zooのホームページは下記です。
http://nationalzoo.si.edu/default.cfm



2005/07/11 「アストロE2」打ち上げ成功

 X線天文衛星「アストロE2」を載せた国産ロケットM5の6号機が鹿児島県肝付町の宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ、衛星の分離に成功した。衛星は「すざく」と命名された。X線天文衛星の打ち上げは5年ぶりとのこと。

 6号機は10日午後0時30分予定通りに打ち上げられた。「アストロE2」は地上約570kmで地球を1日15周する円軌道を目指して約21分後に分離され、5日後には衛星の観測機器を展開する予定だ。

 X線天文衛星は地上では観測できない宇宙からのX線をとらえて、ブラックホールの構造や銀河団の形成過程の解明を目指す。1979年から4代の衛星で観測が続けられてきたが、2000年2月に後継衛星を搭載した4号機の打ち上げが失敗。4代目「あすか」の寿命が尽きた2000年7月以降は空白が続いていた。それだけに、日本が誇ってきたX線天文学の再開に期待がかかる。

JAXAのカウントダウンのページは下記。
http://www.jaxa.tv/

Astro-E2衛星の詳しい内容は下記サイトで読めます。
http://www.astro.isas.jaxa.jp/~takahasi/Detectors/Astro-E2.html



2005/07/06 イネの粒数を支配する遺伝子

 コメの粒数は、花芽の成長などに関係する植物ホルモン「サイトカイニン」の量に左右される。サイトカイニンの蓄積量が多いと穂の枝分かれが増えるため、穂につく粒数も増える。イネ品種「ハバタキ」は、サイトカイニン分解酵素をつくる遺伝子の働きが弱いので、サイトカイニンが分解されず蓄積するため、結果的に粒数が増えるため、このサイトカイニン分解酵素遺伝子が量的形質である増収を支配する遺伝子であることを名古屋大学の研究グループが見いだした。

【文献】 Ashikari, M., et al.: Cytokinin Oxidase Regulates Rice Grain Production. Science, online June 23 2005 [doi: 10.1126/science.1113373]

 研究グループは、「コシヒカリ」と「ハバタキ」の交配を繰り返し、増収遺伝子(サイトカイニン分解酵素遺伝子)の部分だけが「ハバタキ」のものに入れ替わった増収型「コシヒカリ」をつくった。また、粒数が多くなると稲穂が重くなり、風雨で倒れやすくなるため、以前に発見したイネの草丈を低く保つ遺伝子も交配で増収型「コシヒカリ」に導入した。その結果、従来の「コシヒカリ」に比べ草丈が約18%低く、粒数は約20%多い増収型「コシヒカリ」もでき、味も変わらないという。



2005/07/05 ニュートンの錬金術覚書の再発見

 アイザック・ニュートンの錬金術に関する自筆の覚書が、イギリス王立協会で再発見された。この覚書はもともと、ニュートンが亡くなった1727年に発見されたが、1936年に競売で落札(15ポンド)されて以降、行方が分からなくなっていた。今回、研究者が同協会で文献を整理中に発見した。

 ニュートンの存命当時、錬金術には亜鉛などの卑金属から金や銀を精製することができると信じる科学者がいた。そのため、ニュートン研究の専門家は今回の発見は、ニュートンが錬金術に関してどんな著作を読み、どんな理論を研究していたかについての重要な証拠となるとしている。

 この文書は7月4日から始まるイギリス王立協会のSummer Science Exhibitionで展示されるそうである。

イギリス王立協会のニュースサイト
http://www.royalsoc.ac.uk/news.asp?id=3252



2005/07/04 彗星探査機ディープインパクトの子機、彗星に激突

 米東部夏時間4日午前2時前(日本時間同日午後3時前)に、彗星探査機ディープインパクトの子機がテンペル第1彗星の核に激突したと米航空宇宙局(NASA)と発表した。

 激突直後に彗星の核に500kmまで接近した親機が、子機が激突した瞬間を撮影した。親機の観測で、太陽系の成り立ちや生命誕生の謎に迫る観測データが得られると期待されている。

NASAのホームページは下記。衝突時の写真も見ることができる。
http://www.nasa.gov/mission_pages/deepimpact/main/index.html

▽ 1776年7月4日は、アメリカ独立宣言に署名がなされた日です。正式にイギリスから独立を認められたのは7年後の1783年でした。