2005年上半期

2005/06/30 アイガモロボット

 毎日新聞の雑記帳(6/29東京朝刊)に、アイガモロボットを使って無農薬・無化学肥料栽培についての記事が掲載されています。

 アイガモは動きにムラがあり、田全体を完全に除草出来ないなどの弱点があるため、山形県立長井工業高校などは、除草ロボット「デジガモ」を開発し、稲の間を自由に動き回って雑草を刈り、水中をかき混ぜて水を濁らせ、雑草の生育を妨げるという計画です。

 同高によると、水田の高低差や狭い稲間の移動など技術的課題は山積しているとのこと。それでも生徒らは「自宅が農家なので除草の大変さは分かる」といっているそうです。

記事のサイト
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/zakki/

▽ 愛地球博で連日、様々なロボットが紹介されています。でも、何か足りないと感じていました。例えば、農業に役立つロボットは作られていないのではないでしょうか。ぜひ、ロボットに関心のある高校生、関係者の皆さん、楽しい農業用ロボットを作ってください。

 科学に興味のある子供たちにロボットは人気ですが、農業や自然と調和したロボットができればもっと科学的興味が深まるのではないかと思っています。



2005/06/27 哺乳類に毒牙:カナダで化石発見

 カナダ・アルバータ大の研究チームは、毒蛇のように獲物を毒牙で獲物を捕獲していたとみられる小型哺乳類の化石をカナダ西部の6000万年前の地層から発見したと英科学誌ネイチャーに発表した(文献下記)。

 犬歯に毒液を導くためとみられる細長い溝があるのが特徴である。こうした構造は毒蛇に見られるが、哺乳類では絶滅した種も含めて似たものはないという。研究チームは絶滅した哺乳類の中に毒牙を持っていた種がいたことを示す初めての証拠としている。

 カナダ・アルバータ州中央の暁新世後期の地層の岩で見つかった保存状態の良好な複数の化石標本から、絶滅哺乳類の毒分泌器官の証拠を得た。小さなハリネズミかモグラに似た哺乳類で、小型のネズミくらいの大きさで、切歯や犬歯、臼歯などがそろったあごの部分などが見つかった。

 この小型の肉食性真獣類はどうやら、ナミヘビ類と比肩するくらいに、有毒な唾液やその分泌機構を独立に何度か進化させたとみられるとのことである。

【文献】 Richard C. Fox and Craig S. Scott: First evidence of a venom delivery
apparatus in extinct mammals. Nature 435: 1091-1093. [doi: 10.1038/nature03646]



2005/06/20 地球に似た惑星発見

 全米科学財団(NSF)は、これまでで大きさが最も地球に似た小型の惑星を、地球からわずか15光年という太陽系のすぐ近くで発見したと発表した。

 回っている恒星との距離が近いため、表面は200-400℃の超高温で、地球と同じような生命が存在できる環境ではない。だが、地球に似た惑星が今後も見つかるとの期待を膨らませる発見だ。

 この惑星は質量が地球の約7.5倍と、太陽系外で見つかった惑星の中で最小である。この大きさから、発見済みの太陽系外惑星のほとんどを占める木星のようなガス惑星ではなく、岩石成分が多い地球型の惑星である可能性が高いと考えられている。

全米科学財団(NSF)のプレスリリースのサイトは下記。惑星の写真も見られる。
http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=104243



2005/06/19 東アフリカ沖のシーラカンスは同じグループ

 アフリカ南東沖の複数の海域で見つかっている「生きた化石」と呼ばれるシーラカンスは、互いの遺伝子に大きな違いはなく、元は1つのグループだったとみられるとの研究結果を、Schartlらのチームが英科学誌Natureに発表した(文献下記)。

 シーラカンス( coelacanths: Latimeria chalumnae)は1938年、アフリカ南東部のインド洋で初めて捕獲されて生存が確認された。その後、1952年にマダガスカル島の北西にあるコモロ諸島で発見されて以降、ケニア、タンザニア、モザンビーク、南アフリカなどアフリカ南東部に沿った海域で次々に見つかった。

 アフリカ沖のシーラカンス47匹についてミトコンドリアDNAの配列などを分析した結果、チトクロームbのDNA配列には全く違いが見られなかったが、制御領域には6つの違いが認められた。そのためチームは、海域が違っても、遺伝子には大きな違いないことから単一の大きな集団に属していると推定した。また、 海流の流れから東アフリカ沖のコモロ諸島に生息していたシーラカンスの子孫と考えられるとしている。

【文献】 Manfred Schartl, M., et al.: Genetics: Relatedness among east African coelacanths. Nature, 435: 901 [doi: 10.1038/435901a]



2005/06/18 NASA:月の土から酸素抽出に懸賞

 米航空宇宙局(NASA)は、月面の土から酸素を取り出す技術の開発者に25万ドル(約2700万円)の賞金を与えるコンテストを行っています。今回の賞は「ムーンロックス(MoonROx)」と名付けられ、NASAが宇宙関連技術の発展を促進する目的で取り組む「センテニアル(100年)チャレンジ(Centennial Challenges)」プロジェクトの一つです。

NASAのコンテストのプレスリリースのサイトは下記です。
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2005/may/HQ_05128_Centennial_Challenge.html
Centennial Challengesの最初のページは下記です。
http://exploration.nasa.gov/centennialchallenge/cc_index.html

 この技術が確立すれば、月面基地での生活や宇宙船の燃料に酸素を利用できるようになります。具体的には、月の表面を模した物質から8時間以内に、呼吸できる酸素5キログラムを取り出すことが条件です。締め切りは2008年6月1日。月の土から少量の酸素を抽出する方法はすでにいくつか考案されているが、NASAが必要としているのは1度に大量の抽出を可能にする技術だそうです。

 過去200年以上にわたり、賞金付きコンテストは科学、技術、工学などの分野で、新たな発展を促す役割を果たしてきたとNASAの責任者は語っています。例えば、20世紀初頭、大西洋横断無着陸飛行に成功したリンドバーグも、コンテストの賞金を狙っていました。昨年10月には、民間宇宙飛行の一番乗りを競う「X(エックス)プライズ」では、「スペースシップワン」が栄冠を勝ち取っています。



2005/06/17 アリは触角で仲間を識別

 昆虫のアリの多くは別の巣のアリと出会うと攻撃する習性がある。尾崎らの研究グループは、アリは触角で相手の体の表面にある化学物質を認識し、仲間かどうかを確かめていることを明らかにした。

【文献】 Ozaki, M., et al.: Ant Nestmate and Non-nestmate Discrimination by a Chemosensory Sensillum. Science [DOI: 10.1126/science.1105244] (2005)



2005/06/14 土星の惑星タイタンに火山

 土星最大の衛星タイタンに、火山のようなドーム型の地形が発見された。タイタンの大気は主に窒素とメタンから成り、太古の地球によく似ているとされるが、この火山から凍ったメタンが噴き出した可能性があると英科学雑誌ネイチャー(文献下記)に報告された。

 土星を周回する無人探査機カッシーニが昨年10月、タイタンに接近した際に撮影した赤外線画像を分析した結果、火山ドームは直径が約30kmで、ここからメタンと氷の混合物が噴出したと考えられるとしている。現在は活動がみられないが、別の場所にある同様の火山から、メタンの噴出が続いている可能性もあるという。

 タイタンにはメタンの液体がたまった「海」があるとも考えられていたが、カッシーニの観測では今のところ見つかっていないため、火山がメタンの供給源である可能性が高い。

【文献】 Prockter, L., et al.: Shades of Titan. Nature, 435: 749-750. [doi: 10.1038/435749a]

タイタンの火山の写真はNASAのサイトで見られる。
http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/multimedia/pia07965.html

NASAのCassini-Huygensミッションのホームページは下記のサイト。
http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/main/index.html



2005/06/13 当選するには「有能そうな」顔

 顔が「有能そう」に見えることが、選挙で当選するためにかなり重要らしいと米プリンストン大のチームが米科学誌サイエンス(Science下記)に発表した。童顔は有能でないと評価されやすいので不利だという。

 チームは過去の米連邦議会選挙の当選者、落選者の顔写真を2枚一組にして計数百人の学生に1秒程度見せ、有能に見える方を選んでもらった。この方法で「より有能」と評価された方が実際に当選していた例が約70%もあり、チームは有権者が受けるこうした印象が、投票行動にかなり影響している可能性があるとみている。

【文献】 Todorov, A., et al.: Inferences of Competence from Faces Predict Election Outcomes. Science, 308:1623-1626. (2005) [DOI: 10.1126/science.1110589]

▽ ケネディー、カーター、クリントン各大統領など劣勢を押しのけて当選した大統領はやはり顔がよいからか。アメリカでの調査なので、世界共通かどうかは不明であるが、メディア選挙と言われているアメリカでは顔が大きく影響するのだろう。



2005/06/12 農業高校:最新の授業や取り組みを発表

 全国高等学校農場協会、財団法人全国学校農場協会の第54回全国大会が東京・永田町の星陵会館で開かれ、2農業高校の活動と、岡山県の「高等学校農業科ディジタルコンテンツ開発・活用授業研究会」の取り組みが報告されたと毎日新聞が伝えている(06/6/10)。

◇北海道立岩見沢農業高校
 フードシステム学科群では生産から加工、流通販売まで一連の活動を体系化し、環境保全学科群では資源循環型の農業を行なう技術者育成や環境・生態系を重視した造園空間の創造を目指している。

◇福井県立坂井農業高校
 「自ら考え主体的に取り組む生徒の育成を目差した」取り組みを紹介した。具体的には、農業祭で「わら細工」「フラワーアレンジメント」の体験コーナーや「ふれあいミニ動物園」を開いた。特産のらっきょうをつかったクッキーなどのお菓子づくり、そばづくりなどをする「小学生親子アグリ体験学習」には70組140人の親子が参加したという。

◇高等学校農業科ディジタルコンテンツ開発・活用授業研究会
 岡山県南の4農業高校の教員らは、ITを活用した効果的な指導方法の研究を報告した。「農業の実習では、間にほかの授業が入るので、播種から収穫までのような一連の作業を続けて学ぶことができない。だが、ITを活用すると授業の板書や画像などを蓄積できるので、前回の作業を振り返ったり、目的を確認でき、授業の流れを意識できる」「植物の育つ様子、病害虫の被害に遭った作物、溶接のような危険を伴う作業の様子など、普段は見られないものがデジタルコンテンツなら見られる」「手元の細かい作業などをスクリーンに映し出して、クラスの生徒全員が同時に同じ学習素材を共有できる」などIT機器、デジタルコンテンツのメリットを紹介した。

毎日新聞の記事サイトは下記
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20050610k0000e040091000c.html





2005/05/30 微小な穴で発光量が4~5倍増加

 野田(京都大)らのグループは、自然発生的な光の放射を抑制し、エネルギーの再配分に役立つ方法を開発したと米科学雑誌Scienceに報告した。

 屈折率が変えられる二次元(2D)のフォトニック結晶を使用し、自然発生的な光の放射を抑制するとともにエネルギーの再分配することに成功した。ガリウムなどでできた光半導体の表面に390-480nm間隔で直径250nm前後の微小な穴を開けると、内部での発光がなくなり、外部への発光量が穴を開けない場合の4~5倍になったとしている。

【文献】 Masayuki Fujita, Shigeki Takahashi, Yoshinori Tanaka, Takashi Asano, Susumu Noda: Simultaneous Inhibition and Redistribution of Spontaneous Light Emission in Photonic Crystals. Science, 308: 1296-1298. (2005) [DOI: 10.1126/science.1110417]

▽ 発光ダイオードは光半導体を組み合わせてつくるが、半導体内部に光がこもるため、蛍光灯と同じ強さの光を得るためには、約2倍の電気エネルギーが必要など効率が悪かった。研究グループは「半導体レーザーなど、他の発光素子にも応用できる。照明に加え、ディスプレーや光通信など発光素子が既に応用されている分野の効率改善にも貢献できる」としている。



2005/05/28 アフリカで新種のサル発見

 アフリカ・タンザニア南部の山岳地帯で昨年、新種のサルが発見された。サルは、体長が90cmほどで尾の長さも体長と同じ約90cmのオナガザルの仲間。標高約1800-2500mの森林に生息し、茶色の体毛と黒い顔面、警笛のような独特の鳴き声が特徴である。

【文献】 Trevor Jones, Carolyn L. Ehardt, Thomas M. Butynski, Tim R. B. Davenport, Noah E. Mpunga, Sophy J. Machaga, and Daniela W. De Luca: The Highland Mangabey Lophocebus kipunji: A New Species of African Monkey . Science, 308: 1161-1164. (2005) [DOI: 10.1126/science.1109191]

▽  アフリカでの新種のサルの発見は1984年以来20年ぶりとのことです。霊長類の新種が見つかったことで、まだまだ、未知の世界が地球上にはたくさんあることを再度認識しました。ただ、このサルの個体数は1000頭を下回っており、発見と同時に絶滅が心配されています。



2005/05/27 あのボイジャー1号が太陽系最後の辺境へ

 アメリカ航空宇宙局(NASA)が1977年に打ち上げた惑星探査機「ボイジャー1号」が、太陽系最後の辺境の地へ突入したと5月24日に発表した。 ボイジャー1号は現在、太陽から約139億2000万キロ離れた場所に位置している。

 太陽系の端には、太陽から放出される高エネルギー粒子の流れ「太陽風」と、太陽系外の恒星間ガスがぶつかる「末端衝撃波面」があるが、ボイジャー1号が検知した太陽風の速度から、末端衝撃波面に到達したことが判明したという。

 ボイジャー1号は打ち上げ後、1979年3月に木星、1980年11月に土星を観測した。1998年に、地球から最も離れた人工物体となった。

NASAのプレスリリースサイトは下記。
http://www.nasa.gov/home/hqnews/ 2005/may/HQ_05131_Voyager_agu.html

▽ ボイジャー1号は28才になったことになります。このニュースはわくわくするような想像力を刺激します。TVドラマ「スタートレック」では、宇宙で変身したボイジャーが地球に戻ってくるエピソードがありました。



2005/05/26 赤は勝利の秘策

 スポーツで勝利を目指す者は、赤いユニホームで試合の望むよいとする分析結果が英科学雑誌ネイチャーNatureに発表された(文献下記)。

 2004年にアテネで開催されたオリンピック競技のうち、ボクシング、テコンドー、レスリングのグレコローマンスタイル、フリースタイルの個人競技4種目について、選手が着ていたユニホームの色と勝敗の記録を比較した。これらの競技では、選手に赤または青のウエアが無作為に割り当てられるが、全試合の55%で赤の選手が勝っていたことが分かった。また実力がほぼ互角とされた試合だけをみると、赤グループは60%以上の試合で勝利を収めていたという。重量別にみると、29階級のうち19階級で、赤を着た選手の勝率が青を上回っていた。

 研究チームではさらに、サッカーの2004年の欧州選手権(ポルトガル大会)の結果も分析した。特に、赤と別の色のユニホームを使い分けていた5チームに注目して調べたところ、どのチームも赤を着て戦った時の方が得点や勝率が高かったという。

 研究者らは、赤が持つ効果の仕組みは不明だが、赤はさまざまな動物が攻撃性を示す時に現れる色であることが知られている。そのため、スポーツの試合でも、技術や力に大きな差がない時は、赤が相手を無意識のうちに威嚇し、勝ちやすい状況を作るのではないかと考えている。

【文献】 Hill R. A., Barton R. A..: Psychology: Red enhances human performance
in contests. Nature, 435:293. (2005) [doi: 10.1038/435293a]

▽ 文献を読んでみましたが、ちょっと信じられないくらい赤の勝利が一貫しています。この論文についてのNatureの解説記事で、「イギリスのサッカーの歴史の中でうまくいっているクラブチームは、マンチェスター・ユナイテエッドとリバプールであるが、そのどちらも赤いユニフォームがある」そうです。そして、 「赤のユニホームを着て試合の臨む時は、非常に嬉しい。」との選手のインタビューを載せています。でも、ブラジルサッカーチームのユニホームはカナリア色です。

 スポーツの勝敗はユニホームの色の違いが大きく関係するとする結果は、データを見たあとでも不思議です。ただ、わずかな精神状態の違いがスポーツでの勝敗を決するのではないかとの結論には納得しています。

解説記事のサイトは下記です。
http://www.nature.com/news/2005/050516/full/050516-4.html



2005/05/24 スマトラ沖地震は地球を揺らす

 昨年12月に破壊的な津波をもたらしたスマトラ島沖の地震は、遠いアラスカのランゲル山でも揺れを引き起こしたと米科学雑誌Scienseに報告された。

 インドネシアからおおよそ1万1000km離れたアラスカのランゲル山の周りで、14回の小さな地震が観察された。 火山の周りの地震計ネットワークは、地震による表面波を、スマトラ沖島からおよそ1時間後にとらえた。この揺れは20~30秒毎に系統的に起こった。このことは、スマトラ沖地震は地球規模で揺れを引き起こしたことを示している。

【文献】  West, M., et al., (2005) Periodically Triggered Seismicity at Mount Wrangell, Alaska, After the Sumatra Earthquake. Science, 308: 1144-1146. [DOI: 10.1126/science.1112462]



2005/05/23 新しい宇宙食「Nutraffin」

 アイオワ州立大学の「NASA Food Technology Commercial Space Center」で、農学部や食物科学を専攻する大学生を対象にした「宇宙食コンテスト」が開かれ、オクラホマ州立大学のチームが「Nutraffin」というマフィンの一種を提案し、優勝したとAP通信が報じた(05/5/17)。

 「Nutraffin」は一口サイズで、原料には小麦粉やにんじん、ピーナッツが使われている。繊維を多く含む高カロリー食品で、熱吸収が良く、エネルギーを多く必要とする宇宙飛行士には最適と評価された。今秋にNASAの研究所へ渡され、宇宙食としての利用を検討するという。



2005/05/19 体内時計の動きを試験管の中で成功

 生物学的サイクルの遺伝子発現を制御する3種類のたんぱく質(KaiC, KaiA, KaiB)とエネルギー源(アデノシン3リン酸)を混ぜるだけで、試験管の中で約1日周期で動く生物時計(体内時計)を作り出したと、名古屋大グループが科学雑誌Scienceに発表した。これまで時計遺伝子の精妙な働きとされてきた生物時計の本体が、化学物質を組み合わせた機械的な「発振器」であることを解明した画期的な成果である。

 生物時計は、ヒトなどほとんどの生物が持っている時間を計る体内の仕組みで、生物時計に従い、睡眠や血圧、体温など体全体のリズムがほぼ1日周期でコントロールされており、時差ぼけの原因でもある。

【文献】 Nakajima, M., et al., Reconstitution of Circadian Oscillation of Cyanobacterial KaiC Phosphorylation in Vitro. Science, 308: 414-415. (2005)[DOI: 10.1126/science.1108451]

下記のサイトで原文を読める。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/308/5720/414?ck=nck



2005/05/18 女子高校生・女子大学生を対象とした科学へチャレンジキャンペーン

 内閣府男女共同参画局は、女子高校生や女子大学生を対象に、科学技術分野への女性進出を促すため、「チャレンジ・キャンペーン」を始めた。科学技術分野の職業の魅力を訴えるため、ホームページを開設、全国で女子高校生向けの講演会も開くとのこと。

 政府の男女共同参画会議がまとめた最近の報告に、女性の参画が遅れている分野に科学技術が追加された。研究者に占める女性の割合は人文科学を含めても11.2%(03年)にすぎず、理工系は4%だった。

 家庭や学校に「女性は理工系に進むべきではない」との「偏見」が根強く、関心があっても文系の進路を選ぶ女子も多いと考えられるため、社会に出る前の女子生徒、女子学生に対して、科学技術や理工系の職業の魅力、活躍する先輩の素顔を紹介し、興味を持ち続けてもらう狙い。

下記のサイトに順次コンテンツを追加していくとのことである。
http://www.gender.go.jp/c-challenge/

▽ 「科学のおもしろさを知ろう」など男性が見ても有益だと思う。キャンペーンの共催は毎日新聞。



2005/05/16 日本の高校生が国際科学・工学フェアで入賞

 高校生の科学オリンピックと呼ばれる「国際科学・工学フェア」(the Intel International Science and Engineering Fair)が米アリゾナ州フェニックスで開かれ、日本からは下記の2団体と2個人がグランドアワードに入賞しました。1位に選ばれるとノーベル賞の受賞講演と記者発表に出席できます。子供たちにとって最高の副賞ではないでしょうか。この副賞はなかなかいいアイディアだと思います。

サイトは下記です。
http://www.sciserv.org/isef/results/grnd2005.asp

日本人の入賞者は下記の通りです。
EN335 Study of Safe and Comfortable Electric Wheelchair that Overcomes Road Conditions:-Development of a Wheel that Can Easily Climb Curbs
電動車いす:奈良県立王寺工業高のチーム(Kentaro Yoshifuji,Kentaro Yoshifuji,Tsuyoshi
Hino)

CH303 Hydrogen Fuel Cell with Use of Stainless Steel Cathode that Bears Palladium "Thorn"
燃料電池:千葉県立安房高チーム(Shigenori Imafuku,Yutaro Nagai,Atsushi Miyazaki,)

EV107 Establishment of a New Cultivation Method Using Deep Ocean Water
and Slightly Acidic Electrolyzed Water
海洋深層水などを使う栽培法:神奈川県立平塚農高初声分校出身(Tomoyuki Suzuki)

BO017 Mechanisms of Flower-Stalk Lay-Down After Fertilization and Re-Erection After Seed Naturation in Dandelion
たんぽぽの受精の研究:千葉県八千代松陰高校(Miho Ishikawa)



2005/05/15 スイスで氷河を布で覆う

 地球温暖化によるとみられる氷河の後退が進むスイス・アルプスのスキー場で、夏の間に氷が解けるのを防ぐため、約4000平方メートルの巨大な布が広げられたとCNN(05/5/14)が伝えている。アルプスの氷河は、このまま後退が続けば、今世紀中にほぼ消失すると予測されている。 そこで考案されたのが、白い布で夏の日差しを反射する「作戦」。

 布はポリエステルなどで作られ、遠目には雪のように見える。製作費は約10万スイスフラン(約880万円)。関係者らは「氷河を守るための手段として、今後普及するはず」と。

 一方、この作戦について「局地的には有効な手段かもしれないが、根本的な対策にはならない」と批判する専門家もいる。世界自然保護基金(WWF)のマーティン・ヒラー氏は「前向きだが一時しのぎの対策」と指摘。「問題解決への道は、二酸化炭素など原因物質の排出削減に尽きる」と強調した。



2005/05/14 農業生産者の遺伝子組み換え作物に対する意向調査

 農林水産先端技術産業振興センターによる全国の農業生産者5000人を対象にしたアンケートによる遺伝子組み換え(GM)作物に対する意向調査(05/3/15公表)が下記のサイトで読める。

http://web.staff.or.jp/data/ivent/200503/ 18-2005031810072619368.pdf

Q1:現在あなたはどのような栽培方法(農薬や肥料について)で、農業生産を行っていますか。下記の中から最も近いもの1つに印を付けてください。

 農業生産形態については、「有機栽培」及び「無農薬栽培」が併せて10%で、「低農薬栽培」は40%、「国等の定めた基準に従った栽培」は43%という回答43%であった。


Q18:あなたが感じる遺伝子組換え農作物の長所は何ですか。(複数回答可)

 遺伝子組換え農作物に関するメリット認知は、「病気に強い」(56%)「害虫に強い」(46%)など生産しやすくなるような要因にメリットを感じている。

Q19:あなたが感じる遺伝子組換え農作物の短所は何ですか。(複数回答可)

 遺伝子組換え農作物に関するデメリット認知は、「安全性に疑問が残る」「消費者に受け入れられない」が、それぞれ70%、54%と高い回答を示した。

▽ 上記結果を見て総合的に判断すると、農業生産者は、遺伝子組み換え(GM)作物にデメリットを多く感じているようです。



2005/05/10 ES細胞から心筋細胞を効率よく生成する技術の開発

 さまざまな細胞になる能力を持つマウスのES細胞(胚性幹細胞)を培養して、9割以上を心筋細胞に育てる方法を、慶応大のグループが開発し、Nature Biotechnologyに報告した。ヒトの心筋細胞の大量生産にもつながる技術で、心筋梗塞などで失われた細胞を補うことができる可能性を秘めた成果である。

 マウスの初期の胎児を詳しく観察し、将来心臓になる細胞では一時的にノギンというたんぱく質がたくさんできていることから、ES細胞を培養する際、特定の濃度のノギンを特定の時期に限って加えると、9割以上が心筋細胞になることを明らかにした。ノギンを使わない従来の培養法だと心筋細胞は1割未満しかできないという。

【文献】

Yuasa, S., et al.: Transient inhibition of BMP signaling by Noggin induces cardiomyocyte differentiation of mouse embryonic stem cells. Nature Biotechnology 23, 607 - 611 (2005) //doi:10.1038/nbt1093

【用語解説】

 ノギン(Noggin):BMP〔骨形成たんぱく質〕の阻害薬。ノギン添加によりに骨芽細胞から神経細胞への転換への分化効率が優れていることが知られている。ノギンはBMPの細胞表面のレセプターに結合する。

 ノギンの分子量や塩基配列などは下記のHuman Protein reference Databaseのサイトでみられる。
http://www.hprd.org/protein/04291





2005/04/28 ES細胞研究のガイドライン/アメリカ

 全米科学アカデミー(National Academy of Sciences)は、人間のES細胞(Embryonic Stem Cell )を使う研究について、米国の各研究機関に対し、厳しい倫理指針をつくるよう勧告する報告書(Guidelines
Released for Embryonic Stem Cell Research)を発表した。報告書は、法律や医療倫理の専門家、市民からなる監視委員会を各研究機関がつくる必要性を指摘するとともに、ES細胞やクローン胚などを使う研究について、監視委が事前に審査するよう求めている。

 また、「国の指針がない以上、科学界や研究機関が自主的に動くべきだ」として、ES細胞を新たにつくる際の承認手続きや、受精卵の提供を受ける方法なども勧告している。

上記ニュースは下記のサイトで読めます(英文)。
http://www4.nationalacademies.org/news.nsf/isbn/ 0309096537?OpenDocument

▽ 科学の進展には多くの人の支持が必要である。そのためには、上記勧告のように研究が倫理的に行われていることを示す必要があるだろう。



2005/04/25 生物時計に関係する調節たんぱく質RORα

 睡眠・覚せいや体温変化など周期的なリズムをつかさどる生物時計の遺伝子の働きを調節している受容体たんぱく質が見いだされた。大阪バイオサイエンス研究所のTakumiらは、受容体RORα(NR1F1)の発現を抑制したマウスを作成し、正常マウスと比較したところ、RORαの発現を抑制したマウスは睡眠・覚せいのリズムが正常なマウスより短く、生物時計の調節に重要な光への反応も不安定だった。

 さらに、この受容体を持たない細胞を作り、生物時計に関与する遺伝子Bmal1(MOP3)の働きを調べたところ、Bmal1は通常、24時間周期で働きが強くなったり弱くなったりするが、受容体がない細胞では、周期がほとんど見られなくなった。また、細胞に外部から受容体を加えると周期は正常に戻った。

 以上のことから、RORαは、生物時計の周期性を調節する働きがあるとしている。

▽ RORαはコレステロール代謝と関係することから、コレステロールの摂取量と生体リズムが関係している可能性が示唆されている。

【文献】 Akashi M, Takumi T., (2005) The orphan nuclear receptor RORalpha regulates circadian transcription of the mammalian core-clock Bmal1. Nat. Struct. Mol. Biol. doi:10.1038/nsmb925



2005/04/19 科学カフェ:研究者との語らいの場

 コーヒーやワインを片手に研究者と市民が語り合う「サイエンスカフェ」の取り組みが広がり始めたと報じられている。文部科学省が今年の科学技術週間(4月18~24日)に合わせて初めて開くほか、民間でも試みが始まった。「科学離れを防ぎ、研究者の意識改革にもつながる」と同省の期待は大きい。

 98年に英国で始まり、米国やシンガポールに広がった。科学を身近に感じてもらうため、30~40人の比較的少人数がバーやカフェ、書店に集まり、科学者と対話するとのことである。

▽ 科学の普及にはこうした人と人とのふれあいを通じた地道な取り組みが必要なのではないかと思う。対話するときの話題の進め方としては、イギリスの科学者ファラデーが1860年に書いた「ろうそくの科学」などが参考になるのではないか。



2005/04/15 二本足で歩くタコの動画サイト

 科学雑誌Scienceに載った二本足で歩くタコのきれいな動画サイトを紹介する。インドネシアとオーストラリアの海中にカメラを設置し撮影された。

メジロダコ:水中を2本足で歩くメジロダコの動画(QuckTime)は下記
http://www.sciencemag.org/content/vol307/issue5717/images/data/1927/DC1/1109616s1.mov
 2本足歩行は、筋肉が骨を支えている動物だけができると考えられているが、チームは「運動学的にみて歩行と呼んでもいい」としている。メジロダコは、8本のうち2本の足を規則的に交互に動かし、後ろ向きに移動している。はうように進む通常の移動よりわずかに速く、残る6本は胴体に巻きつけていた。このタコはサンゴ礁などの砂地に生息し、ココナツの殻を巣にすることから「ココナツタコ」とも呼ばれる。海底を転がるココナツの殻に見せかけることで、捕食者にさとられないよう速く移動できるためと推測している。

藻タコ:藻タコは、メジロダコと同様に2本の足で歩きながら、6本を藻のように頭上に広げていた。こうした行動は、環境に合わせて自在に体の色や形を変える擬態の一種と推定している。ただ、研究者も、タコは8本の足を、生殖や触角など目的別に使い分けているが、2本の足で歩く様子は見たことがないとのことである。

六本の足を上げて泳ぐ藻タコの動画(QuckTime)は下記
http://www.sciencemag.org/content/vol307/issue5717/images/data/1927/DC1/1109616S2.mov
[文献] Huffard, CL., et al. (2005) Underwater Bipedal Locomotion by Octopuses in Disguise. Science, 307: 1927. [DOI: 10.1126/science.1109616]

▽ すでに新聞やネットなどで見た人も多いと思うが、上記の画像は大きくてきれいです。私の知っている擬態とは、茶色ところでは茶色になり、緑色のところでは緑色になるなど本能的に身体を隠すあるいは目立たせるものと思っていた。一方、本物でないものを本物のように思わせる技術は、結構、高等な考えだと思っていた。「見せかける」が高等な技術としたらタコは考えていることになってしまう。どうなっているのだろう。自然界にはまだまだ不思議なことがいっぱいあるに違いない。

 ところで、なぜ、この画像が科学雑誌Scienceに掲載されたかを研究者は立ち止まって考える必要があるのではないだろうか。誰も知らなかった新しい発見であり、思考とは、擬態とは、など多くの謎があり、この先の研究を行ってみたいと思わせる事実を含んでいるからではないだろうか。科学はおもしろくて、楽しくて、驚きを含んでいるのだという原点を忘れないようにしなくてはいけないと思う。論文偏重の結果主義者には、このタコの論文の科学的なおもしろさを理解できないのではないかと推測しているがその理由については別に述べたい。



2005/04/15 天王寺動物園のゾウの春子のお祝い

 大阪市天王寺区の天王寺動物園は14日、雌のアジアゾウの春子(推定57歳)の来園55周年を祝って、春子に好物のスイカとパンで作った特製ケーキをプレゼントしたと共同通信が伝えている(05/4/14)。春子は長い鼻でケーキにトッピングされたミカンやリンゴを一つずつ、おいしそうに食べ、来園客から拍手と「おめでとう」の声が上がったとのことである。



2005/04/14 南極観測船「しらせ」帰港

 南極観測船「しらせ」(基準排水量1万1600トン)が13日午前、東京・晴海埠頭に到着したと朝日新聞が伝えている(04/5/13)。2月9日に日本を出発し2カ月余りの長旅を終えた。「しらせ」は世界でも屈指の大型砕氷艦で、今回が22回目の航海だそうだ。3年後に引退を迎えるが、後継船の建造にはあと4年かかる見通しのため、1年の空白を埋める対策が急務となる。

朝日新聞の南極プロジェクトの報告は下記のサイトで。
http://www.asahi.com/nankyoku/

▽ 子供の頃、南極は行ってみたいところの代表であった。西堀栄三郎著「南極越冬記」岩波新書のことを思い出す。 第一次南極越冬隊の1年間の記録で、水が貴重なので、テーブルは紙で拭くなど、今でもその内容の一部を記憶している。アムンゼンとスコットの南極点の争いを読んだときには、冒険だけでなく科学的探索をも目的としていたスコットが破れ、亡くなったことを残念に思った。

 イギリスの大英博物館を訪れたときには、スコット最後の日の日記を見落とさないようにとしっかり下調べをした。本物の日記を見たときは、じいんときたことを覚えている。その後も、ニュージーランドのオークランドにある博物館でスコットが南極で使った1911年当時の所持品もみてきた。今でも南極は行ってみたいところの一つである。





2005/03/30 イギリスの研究チームが大地震を予測

 スマトラ沖で28日(日本時間29日)起きた地震について、イギリスアルスター大の研究チームが英科学誌ネイチャーで「昨年12月の大地震の影響で、隣接地域でマグニチュード(M)7~7.5の大地震発生の危険が迫っている」と発表していたが、今回の震源域と重なっていた。

JOHN MCCLOSKEY, SULEYMAN S. NALBANT & SANDY STEACY , Indonesian earthquake: Earthquake risk from co-seismic stress. Nature 434: 291; doi:10.1038/434291a

上記論文についてのon line解説は下記。
Michael Hopkin, Quake threat rises after tsunami slip. Nature doi:10.1038/news050314-10

 科学雑誌ネイチャーで上記論文と今回の地震との関係について解説。
Helen Pearson, Second giant quake rocks Indonesia. Nature doi:10.1038/news050328-1.



2005/03/27 7000万年前の恐竜化石から血管採取

 約7000万年前の肉食恐竜の骨の化石から、血管や細胞などとみられる伸縮性のある組織を採取することに、米ノースカロライナ州立大などのチームが初めて成功した。3/25日付の米科学誌サイエンスに掲載された (Schweitzer, MH., et al., Soft-Tissue Vessels and Cellular Preservation in Tyrannosaurus rex. Science. 307: 1952-1955. DOI: 10.1126/science. 1108397)。

 採取した組織からたんぱく質を分離できれば、恐竜の生態についての解明が進むことが期待される。恐竜の化石は18歳前後のティラノサウルスのもので、米モンタナ州の砂岩層から最近発掘された。発掘の際、分解したという。伸縮性のある組織は大腿骨部分から採取された。



2005/03/17 国連総会でクローン人間の禁止宣言

 国連総会は3月8日に人間のクローンを禁止する宣言を加盟191カ国のうち、賛成84、反対34、棄権37の賛成多数で採択した。医療目的のヒトクローン胚(はい)から胚性幹細胞(ES細胞)作成も、認めない。

禁止宣言に賛成した国:
 クローン胚作成に反対するアメリカ・ブッシュ政権、ローマ・カトリック教会の勢力が強いイタリアや中南米各国。 中絶に反対する諸国は、いかなるヒトクローン胚の研究も、人間の命を奪う行為だとしている。

禁止宣言に反対した国:
 英国、ベルギー、シンガポール、中国、日本。医療目的のヒトクローン胚は認めるべきだとの立場。反対した国は、宣言に法的な拘束力はなく、今後の医療研究に影響はないとしている。

 宣言で禁止されたヒトクローン胚を用いた研究は、アルツハイマー病やがん、脊髄損傷などの治療に役立つとされ、ヒトクローン胚も含めた全面的に禁止する宣言の採択に反対。

▽ 争点はヒトクローン胚研究を禁止するかどうか。クローン人間に対しては禁止で一致している。



2005/03/04 最も小さな恒星

 欧州南天天文台(ESO)は、これまでで最も小さな恒星OGLE-TR-122 を見つけたと発表した。質量は太陽の10分の1を下回っており、自ら光らない木星とほぼ同じ程度の大きさしかないという。

 この星は、りゅうこつ座の方向にあって、太陽と似た星の周りを7.3日の周期で回っている。精密に観測した結果、質量は木星の96倍あるものの、大きさは16%ほど上回っているだけだと分かった。 星の中心部で起きている核反応は非常に弱く、明るく輝くことはできない。「褐色矮星(わいせい)」と呼ばれる珍しい星の一種。

 ESOのレポートは下記のサイトで。
 http://www.eso.org/outreach/press-rel/pr-2005/pr-05-05.html

 OGLE-TR-122 と太陽、木星との比較写真は下記のサイトで。
 http://www.eso.org/outreach/press-rel/pr-2005/images/phot-06c-05-preview.jpg






2005/02/27

 国産大型ロケット「H2A」7号機が26日、鹿児島県・種子島の宇宙航空研究開発機構種子島宇宙センターから打ち上げに成功したと各メディアが伝えている(05/2/26)。打ち上げは午後5時9分の予定だったが、地上との通信系統に異常が生じたため、午後4時すぎに作業が一時中断。午後6時25分に繰り下げられた。打ち上げ2分7秒後に大型固体補助ロケット(SRB)の切り離しに成功し、40分2秒後に衛星を分離した。

 03年11月の失敗から1年3カ月ぶりの打ち上げ成功で、揺らいでいた信頼をつなぎとめ、停滞していた日本の宇宙開発が再び動き出す。

▽ 背水の陣だった関係者は、今回の成功でほっとしていることだろう。おめでとうと言いたい。
このミッションに係わった人たちの努力と苦悩について、もっと、もっとマスメディアが取りあげ伝えてほしいと思う。



2005/02/25

 米テキサス州の米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターで24日、スペースシャトルの飛行再開1号機ディスカバリーに乗る野口聡一飛行士らの船外活動(宇宙遊泳)の訓練が公開されたと朝日新聞が伝えてる(05/2/25)。体を慣らすため、野口さんらは宇宙服で訓練用プール(幅30メートル、長さ60メートル、深さ12メートル)に5時間ほど潜り、ISSの実物大模型で訓練した。 野口さんは「準備は万端」と、5月15日の打ち上げ目標に向けて、笑顔で自信を見せた。
このニュースは下記のサイトに掲載されています。
http://www.nasa.gov/news/agency/thisweek_022105.html

野口さんと一緒に乗るクルーは7人です。その顔ぶれは下記のサイトで見ることが出来ます。
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/shuttle/sts-114/lores/sts114-s-002.jpg



2005/02/23

 名城大の高倍昭洋教授らの研究グループは、塩分の多い死海に生育するラン藻に含まれているN-メチルトランスフェラーゼ(N-methyltransferase)の遺伝子を淡水性のラン藻に組み込み、形質転換したラン藻が海水の中でも生育できることを見いだした(Proc Natl Acad Sci USA. 102: 1318-23.(2005))。

 N-メチルトランスフェラーゼはグリシン(アミノ酸の1つ)からベタイン(トリメチルグリシン)を合成する酵素である。ベタインは死海で生育するラン藻に多く含まれおり、細胞への塩分侵入を防ぐ働きがある。シロイズナズナに組み込むと高温や酸化などのストレスに強くなり、枯れる速度が遅くなった。



2005/02/15

 群馬県・草津温泉から希少金属(スカンジウム、バナジウム、ヒ素)を採取する日本原子力研究所高崎研究所と群馬県草津町の共同研究が4月から始まる。工業用触媒に使われるバナジウムや、1キロ200万円もするスカンジウムなど産出量が少なく高価な金属を、同研究所が開発した捕集用の布を使い、温泉から取り出すという試みである。

 同研究所環境機能材料研究グループは、ポリエチレンでできた不織布に放射線を当て、さまざまな金属と結びつきやすい性質を加える技術を開発した。この布をフィルターに使うと、液体中に含まれる微量の金属元素を集めることができる。

 この不織布の製造方法は放射線グラフト重合法で下記のサイトでその原理を知ることが出来る。
 http://www.dmd.taka.jaeri.go.jp/j637/graft_j.html





2005/01/24

 山之内製薬と理化学研究所のグループは、体内時計として働く16個の遺伝子のうち、九つの遺伝子上の朝になると活性化する塩基配列が、体内時計の心臓部を制御していることを突き止めたと発表した(プレスリリースは下記に掲載)。

 体内時計は体内の昼夜のリズム(体内リズム・概日リズム)を作り出す仕組みで、これまでに16個の遺伝子(時計遺伝子および時計関連遺伝子)が体内時計の部品となっていることが知られている。しかしながら、これらの16個の遺伝子がどのような仕組みで体内時計を構成しているのかは明らかになっていなかった。

 そこで、ラットの細胞を使って、試験管内で体内リズムを測定できる実験系を作成し、16遺伝子の役割を調べた。その結果、朝に活性化する塩基配列が16遺伝子のうちの9遺伝子上に、昼に活性化する配列が7遺伝子上に、夜に活性化する配列が6遺伝子上に分散していることを突き止めた。次に、朝配列を不活性化させると、すべての時計遺伝子の機能が弱くなったが、夜配列の不活性化では夜に働く遺伝子のみが弱くなり、昼配列ではほとんど影響がなかった。

 体内時計は、睡眠や覚醒、血圧や体温の変動、ホルモン分泌といった生理機能の24時間リズムを管理している。そのリズムが乱れることで惹き起こされる疾患や症状には、不眠症やうつ症状、時差ボケ、登校拒否症や痴呆症の周辺症状である夜間徘徊などが知られている。さらに最近では薬の効き目などへの関与も明らになっている。今回の成果は、リズムの変調によって惹き起こされる様々な疾患の治療や予防に大きく道を開くものであるとしている。

「体内時計の遺伝子ネットワークの心臓部を解明」については下記
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2005/050124/index.html



2005/01/23

 ルーマニアの首都ブカレストの病院で67歳の元大学教授の女性が体外受精で女の子を出産し、世界最高齢の出産記録を塗り替えたとCNNが伝えた(05/1/17)。アドリアナ・イリエスクさんは体外受精で双子の女の子を妊娠していたが、1人の死亡が確認されたため、予定日より6週間早く、残る1人を帝王切開で出産した。生まれた赤ちゃんは体重1450グラムで未熟児のため、保育器に入っているが、自発呼吸をしており健康だという。母イリエスクさんも健康で、9年間にわたる不妊治療の末に、若い男女の卵子と精子の提供を受けて母親になれたことについて、「新しく人生が始まったような気分」だと話しているという。

 これまでギネスブックに認定されていた最高齢出産の記録は63歳で、カリフォルニア州の女性が1996年に、イタリアの女性が1994年に出産しているという。

 このニュースでは、倫理についても考える必要がある。

 体外受精については下記のサイトが参考になる。
 http://www.synapse.ne.jp/aiiku_hp/IVF/taigai.htmlhttp://www.ladys-home.ne.jp/faqsite/ans-files/FAQ-K/FAQ-K5.html

 社団法人 日本産科婦人科学会のホームページは下記。
 http://www.jsog.or.jp/index.html

 日本産科婦人科学会の倫理審議会答申書は下記サイト。
 http://www.jsog.or.jp/kaiin/html/Rinri/rinri_shingikai.html



2005/01/22

T君へ

 欧州宇宙機関(ESA)は、土星最大の衛星タイタンに着陸したホイヘンスによってもたらされたデータの科学的解析結果の第1報を、パリのESA本部で発表しました。それによるとタイタンにはに液化したメタンが存在し、メタンの雨が降っている可能性が高いとしています。ホイヘンスの地表を写した写真には、河川や湖、島のように見える地形が鮮明に写っていました。ESAの主任研究者は「降雨や浸食、河川の活動により地球と同じような地形が形成された」と述べています。ただし、地球は水の作用によるものですが、タイタンではメタンの作用で出来上がった地形です。メタンは、融点が-182.6℃で沸点が-161.4℃のため、地球では気体ですが、タイタンは-170℃なので、メタンは液体の状態で存在します。

 また、観測データを解析した結果、ホイヘンスが着陸した時、地表から液体がにじみ出ていたことが分かりました。そのため、研究者たちは、ホイヘンスが着陸地点の地下数センチ以内に液体が存在しており、そう遠くない以前に雨が降ったと考えています。

 さらに、大気中からアルゴン40が見つけられたことから火山が活動していると推定しています。ただし、地球のように溶岩が噴出するのではなく、水やアンモニアが噴出するとしています。

 記者会見した科学者らは「私たちは今回の結果に非常に興奮しています」と述べています。今回の発表のために、科学者たちは疲れを忘れて働いたそうです。そして、「データの解析には何年もかかり、科学者を非常に忙しくするでしょう」と、この計画のジャンピエールレブレトン(Jean-Pierre Lebreton)マネージャーがまとめています。

 忙しくなることがうれしい-科学者たちの興奮が伝わってきます。新しい発見に接したときの科学者の気持ちを表しています。これが科学の醍醐味です。

 今回の記者発表の詳細は下記のサイトで見られます。
 http://www.esa.int/SPECIALS/Cassini-Huygens/SEMHB881Y3E_0.html



2005/01/20

T君へ

 小型探査機ホイヘンスの成果は、科学的トピックスとしてもっと報道されて良いと思っています。理科離れが心配されていますが、その一因として科学のおもしろさや不思議さを伝える努力も不足しているように思っていました。今回のホイヘンスは絶好の機会と感じていたのですが、テレビも新聞も報道量が少なすぎるように思います。

 欧州宇宙機関(ESA: European Space Agency)は、1月18日付で新しい情報を公表しました。ホイヘンスは、予想の2倍を超える1時間12分もデータを送信してきたとのことです。その量は474メガビットで、その中には画像データがおおよそ350枚含まれているとのことです。

 着陸前に撮影された新たな写真などが公表されました。ホイヘンスは、砂か軟らかい粘土のようなところに半ば埋まるような形で着地したとのことです。着陸地点の近くには黒っぽく平坦な部分があり、今のところ確かなことは言えないようですが、液化した炭化水素の湖か海の可能性が高いと指摘しています。そのほか、地表に近づくほど大気中のメタンの濃度が高まること、メタンの雲が上空20キロにあること、地表付近にはメタンかエタンの霧が検出されたことなどが報告されています。

 今までの成果を1月21日金曜日(Friday 21 January at 11:00 CET)に記者会見するそうです。楽しみです。

 今回公表された新しいデータは下記のサイトにあります。
 http://www.esa.int/SPECIALS/Cassini-Huygens/SEM15Y71Y3E_0.html



2005/01/19

 米航空宇宙局(NASA)は、土星探査機「カッシーニ」がとらえた土星の衛星レア(Rhea)の画像を公表した。月のように、表面には円形にくぼんだ地形であるクレーターが点在している様子が確認できる。レアは天文学者カッシーニが1672年に発見した衛星で、直径は1528kmである。

 レアの写真は、NASAのCassini-Huygens Missionのサイトで見ることが出来る。
 http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/main/index.html

 1672年(江戸時代:寛文12年) 松尾芭蕉の最初の俳句集『貝おほひ』ができる。

 1687年、ニュートン「万有引力の法則」を発見する。



2005/01/17

 温暖化対策推進法で地方自治体に策定が義務付けられた「実行計画」を実際に定めた全国の市区町村が35%にとどまっていると環境省の調査で明らかになった。

 同法は99年4月に施行され、国が定めた基本計画に則し、自治体に対して実行計画を定めるよう義務付けている。温室効果ガスの削減目標を定め、その目標達成のために、庁舎での電気や燃料の節約、自動車の使用抑制と自転車の使用、低公害車の導入、森林の保全、風力発電などの自然エネルギー利用などを進めると規定している。

 世界的に温室効果ガスの対策がとられれば、地球は温暖化しないと考えられている。にもかかわらず、各国の努力は結局失敗するとして、温暖化後の研究を最優先課題とするのは変でないかい。



2005/01/16

T君へ

 ホイヘンスから送られてきたデータが公表されつつあります。欧州宇宙機関(ESA: European Space Agency)から4枚の画像(このうち1枚はカラー)と2つのサウンド(マイクロフォンとレーダーエコー)が下記のサイトで公表されました。

 降下中に高度8千メートルから撮影したパノラマ画像には、海のような黒っぽい部分が広がっており、岸辺に似た地形の近くには、白く細長い霧のようなものがたなびいていて、地球をのどこかの地域の写真のように見えます。

 タイタンは、メタンのもやが漂うオレンジ色の世界で、地表は予想以上に暗く、炭化水素と氷で覆われているらしい。また、着陸地点は湿った砂か粘土質の土壌と考えられています。表面で反射している光の分析から、氷と炭化水素が存在していること、氷のような物体の大きさは4~15センチと報告されています。丸い物体の下は、液体によって浸食されているように見えます。地表からメタンが出ており、上空20キロほどの大気にもメタンが含まれていたとのことです。

 ESAのデビット・サウスウッド氏は「これらは後世のためのデータだ」とし、「科学者たちはこれらの画像を分析し、私たちは宇宙でどんな存在なのか、私たちはどのように誕生したのかについて議論を深めるだろう」と話しています。

画像データサイト
http://www.esa.int/esaCP/SEMTKR71Y3E_index_0.html

サウンドデータサイト(音を聞くためにはQuick Timeが必要です)
http://www.esa.int/esaCP/SEM85Q71Y3E_index_0.html



2005/01/15

T君へ

 ついにホイヘンス(Huygens)がタイタン(Titan)に、日本時間14日夜(アメリカ東部標準時7時45分)着陸しました。欧州宇宙機関(ESA)の小型探査機ホイヘンスは、アメリカNASAの土星探査機カッシーニ(Cassini)に載せられ、7年前(1997年)に地球(フロリダ)を出発しました。そして、昨年の12月24日にカッシーニから切り離され、時速2万2000キロで大気圏(高度1270キロ)に突入した後、3つのパラシュートで減速(24km/h)しながらタイタンの地表へ降下しました。大気圏に突入してから約2時間半後に人工物体として初めて凍える地表(-180℃)に着地しました。

 ホイヘンスをコントロールしている科学者たちは、タイタンに到着するまでスクリーンに心を奪われていましたが、無事着陸したとき、何人かは涙を流し、また、別の人たちは拍手喝采で喜びを表しました。

 ホイヘンスは、直径8.9フィート(2.7m)、重量703ポンド(317kg)で、マイクロホン、3個の回転するカメラ、風速、気圧、伝導率測定用センサー、メタン測定用ガスクロマトグラフなどを載せています。バッテリーは着陸から数分後にスイッチが入り、2時間以上働くように設計されています。現在、降下中に集めたデータや画像は地球へ届き始めています。38億年以上前、生命誕生前夜の地球に似た環境(窒素、メタン、アルゴンガスの大気など)と考えられているタイタンの素顔が、17世紀の発見以来350年にして明らかになるでしょう。
第1報の写真を見ると、気のせいか月や火星と異なり地球に似ているように思います。

 ホイヘンスから最初に送られてきた写真は下記で見られます。
 http://www.cnn.com/2005/TECH/space/01/14/huygens.titan/index.html

 欧州宇宙機関(ESA)のイギリスのサイトは下記です。
 http://www.esa.int/esaCP/UnitedKingdom.html



2005/01/14

T君へ

 いよいよ、今日の夕方6時半ごろ、小型探査機ホイヘンスが土星の惑星タイタンに到着します。どんな科学的成果が得られるでしょうか。タイタンは1655年、オランダの天文学者ホイヘンス(Christiaan Huygens)によって発見されました。半径2575キロで、33個確認されている土星の衛星の中で最大、太陽系全体でも木星の衛星ガニメデに次ぐ2番目の大きな衛星です。窒素を主成分とする厚い大気の中に、メタンが1%程度含まれています。メタンは高層で太陽の紫外線で分解され、絶えず失われてしまいますが、タイタンには今でも大気中にメタンがあるということは、地表か地下に供給源があるはずとして、液体メタンの海があるという説もあるとのことです。
 日本惑星協会のカッシーニ・ホイヘンス・ミッションのサイトは下記にあります。
 http://www.planetary.or.jp/know_cassini.html



2005/01/13

T君へ

 いよいよアメリカ時間で14日午前4時半頃、土星探査機カッシーニから投下された小型探査機ホイヘンスが土星の惑星タイタンに到着予定です。タイタンは太陽系の衛星では唯一、大気があると考えられています。大気の組成は原始の地球に似ているのでしょうか。地表には液体はあるのでしょうか。生命の痕跡は見つかるのでしょうか。楽しみです。昨年、むかしの火星にはかなりの確率で水が存在することが分かり興奮しました。今回はどうでしょう。ニュースに注目です。



2005/01/12

 バルセロナ大学トロ(Juan M. Toro)氏の研究グループが、実験用に飼育したラットが人間の言語のリズムを聞き分け、オランダ語と日本語の違いを認識できたと発表した(Toro, JM. et al. (2005) Effects of Backward Speech and Speaker Variability in Language Discrimination by Rats. J. Exp. Psychol.: Animal Behavior Processes 31: 95-100.)。

 成長した64匹のオスのラットを使い、エサを使ってオランダ語か日本語の短い文章を聞いたときにレバーを押すように訓練した後、ラットに、(1)それぞれの言語を母国語とする人の言葉を聞かせる (2)それぞれの言語をコンピューターの合成音で聞かせる (3)異なる人物が話すそれぞれの言語を聞かせる (4)それぞれの言語の逆回しを聞かせる 実験を行った。

 その結果、日本語を認識するよう訓練したラットはオランダ語に反応せず、オランダ語を認識するよう訓練したラットは日本語に反応しなかったため、聞き分けができていることが証明された。

 オランダ語と日本語を選んだ理由は、この二つの言語の単語やリズム、構造などが全く異なっていることのほか、以前に行われた同様の研究で用いられた前例があるからだとしている。

 この研究で得られた結果は、人間の大人や新生児、サルの仲間のマーモセット「ワタボウシタマリン」で行った結果と、よく似ているという。ただ、ラットは特定の人間による通常の会話は、言語を判別することができるが、知らない人間が話すと区別できない。大勢が話しても区別できないとしている。

 人間の言語発達において重要だと考えられている特定情報をラットも認識できると分かったのは興味深い。今後新しい展開が期待される。

 この独創的な論文の全文がウエッブサイトで見られるので興味のある方は下記にアクセスしてみて下さい。
 http://www.apa.org/journals/releases/xan31195.pdf



2005/01/09

 北海道立水産孵化場の調査結果から、生態系への影響が深刻とされ、飼育や運搬などが禁止される「特定外来生物」への指定が論議されている北米原産のオオクチバスについて、炭素と窒素の安定同位体の存在比を調べることで、その場所に長期に生息していたか、最近放流されていたかがわかると朝日新聞が伝えている(05/1/9)。


T君へ

 元素にはいくつかの同位体(質量数の異なる原子)が存在します。安定同位体比は、地域によって少しずつ異なっているので、食物連鎖系の解明に応用されています。特に、炭素・窒素安定同位体比の測定は広く応用されています。

 生物の体の構成成分は、食べたエサの安定同位体と一定の関係があることが経験的に知られています。従って、この関係を利用することで、どの生物がどんなエサを食べているかを解析することができます(食物連鎖)。

 この方法は、生物が食べているエサの季節変動や年変動などの調査や、肥料などの含まれている硝酸イオンの起源の解析などにも使われています。



2005/01/07

 光を反射する有機物の結晶が、特定の周波数のレーザー光を当てた途端に反射率が大きく下がり、光を通すようになる現象を腰原伸也東京工業大教授らのチームが発見し、米科学雑誌サイエンス(Chollet, M. et al. Gigantic Photoresponse in 1/4-Filled-Band Organic Salt(EDO-TTF)2PF6. Science. 307: 86-89 (2005))に発表した。この有機物は4℃を境に、高温側では電気を通す金属になり、低温側では電気を通さない絶縁体になる。このことから、電気信号の代わりに光を情報の担い手にする未来の「光コンピューター」や、高速インターネットのための光通信の発展に必要な高速の「光スイッチ」実現に道を開く成果として期待されている。


T君へ

 上記の報告は、新しく合成し有機化合物に光を当てると反射率が激変する新現象の発見です。光に関係した優れた論文が物理年のはじめに日本から発信されました。



2005/01/05

T君へ

 今年は世界物理年です。アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein: 1879-1955年)が特殊相対性理論など画期的な論文を3本、立て続けに発表した「奇跡の年」(1905年)からちょうど100年目にあたるためです。アインシュタインは、1900年にスイス連邦工科大を卒業後、ベルンの特許局に就職し、研究に没頭しました。

 発表された論文の一つは、液体中の微小な粒子の不規則な運動を説明するブラウン運動の理論です。二つ目は、時間や空間の概念を一変させた特殊相対性理論で、三つ目は、金属に光を当てると電子が飛び出してくる現象(光電効果)を説明する光量子仮説です。この三つの論文で一番有名なのは特殊相対性理論ですが、あまりに難しすぎたせいかアインシュタインにノーベル物理学賞が授与されたのは光量子仮説の発見に対してです。

 光量子仮説とは、光が波動性と量子性の両方(電磁波の性質と光子と呼ばれる粒子の性質)を示すことを明らかにした、量子力学の基礎理論です。

 ここで重要なのは、光は二つの性質を同時に持っているという点です。ある時は電磁波で、またあるときは粒子ではないのです。私たちは、というか、私はこの点がなかなか理解できません。頭はサルに、胴はタヌキに、尾はヘビに、手足はトラに似ている「ぬえ」と言う伝説の怪獣がいますが、この「ぬえ」は想像できます。しかし、頭や胴体などが、同時にサルでもあり、タヌキでもあり、ヘビでもあり、トラでもありとする怪獣を想像できるでしょうか。

 想像できない人は私の仲間です。しかし、光の波と粒子の性質を同時に持つことを理解する人たちがいます。その人たちは物理学の研究を行っています。でも、これからは、理解できる人たちが増えてくると思っています。それが、教育の力なのだと思います。コペルニクスの時代に地球が太陽の周りを回っていると理解出来た人はほとんどいなかったでしょう。今では私にも普通に理解できます。教育を受けてきたためだと思っています。

 アインシュタインが画期的な論文を発表して100年がたちました。光量子の概念が普通に理解できる人が増えているのではないかと思います。そして皆が理解し一般化(大衆化)するとアインシュタインを超える次の画期的な理論が生まれるのでしょう。

 「物理が嫌いだ」といっていましたがどう感じましたか。物理学とは発想の転換が重要なのではないかと考えています。そう考えると物理学もおもしろいと思えませんか。  編集長 敬白



2005/01/04

 ハエを餌にする自立型ロボットが西イングランド大学(University of the West of England)で開発中である。EcoBot IIと名付けられたロボットの最高速度は1時間に10cmとのろいが、8匹のハエを燃料として5日間動き続けた。

 このロボットは微生物燃料電池を動力源とするため、ハエが泥に取り込まれると土壌細菌がハエの外側のキチンを分解して糖を作る。この糖を代謝する菌が泥の中の硫酸塩を還元し、亜硫酸塩にする。亜硫酸塩は電極で水と反応して酸化されるので電気が得られる。

 今はハエを人の手で与えなければならないが、ハエを捕獲する装置が出来れば自立型ロボットになる。

 下記は研究者のサイトなのでEcoBot IIの写真とmovie(Real player version)が見られる。ゆっくりしか動かないのでじっくり見る必要がある。
http://www.ias.uwe.ac.uk/Energy-Autonomy-New/New%20Scientist%20-%20EcoBot%20II.htm#movie


T君へ

 この研究、なかなかユニークな発想ではありませんか。日本の高校生や大学生のロボット選手権での活躍やSonyの二足歩行ロボットQLIOなどをテレビで見ていました。でも、「肉食」の自立型ロボットなんて聞いたこともありませんでした。科学には、この独創性が大切です。こうした発想が出来る人はそう多くはいません。もしこのことがおもしろいと思われたのならT君は研究者に向いています。

 独創はかなり難しいですが、改良は意外と早くできます。この研究がより発展するかどうかは、お金の問題という面があります。

 では、また今度。  編集長敬白


下記のサイトでは研究室全体が見渡せます。
http://www.ias.uwe.ac.uk/